外苑前、そぞろ歩き。
ゲラを届けに三千里。
そもそも三千里ってどのくらいの距離?
三千里=11781km。大体12000kmってどこからどのあたりの距離をイメージすればいいんだろう。
幼少時、日曜日の19時30分に合わせるチャンネルは、「8」。
フジテレビの世界名作劇場を見るのが、毎週の楽しみでした。「フランダースの犬」に続いて放送された「母を訪ねて三千里」は世界名作劇場の2作目だったんですねぇ。放映されたのは1976年の1月4日〜その年の年末まで。ってことは、放送開始時、私、生まれてないじゃん。
放送1ヶ月で誕生。放映時、0歳。なぜ、マルコの記憶があるのか。
はるか〜草原を〜。ギター?ウクレレ?オープニング曲、「草原のマルコ」が頭の中で鳴っております。
幼き自分の確かじゃない記憶、あれは再放送を見ていたんだったのか。
年代を少しスライドさせて記憶してる番組、まだまだたくさんありそうだな。
えっと、三千里はどのくらいの距離?っていうテーマからだいぶ話がそれましたが、話を戻します。
「母を訪ねて三千里」は、イタリアからアルゼンチンに母を訪ねていくお話だから、12000kmっていうとそのスケールっていうことか。旅、したいなぁ。旅が解禁になったら、南米は最も行きたい場所のひとつ。
「ゲラを届けに三千里」ってフレーズを思いついてしまったものだから、イタリアジェノバのマルコさんからスタートしてしまいましたが、今日の気になるものは三千里とは一切関係ございません。
そうそう、ゲラを届けに外苑前に行く用事がありまして。
外苑前と言えば、近くを通れば必ず寄りたくなる雑貨屋さんとおやつの店があるんですねぇ。
決めてました。しとしと雨が降っているから、ゲラが濡れないようにとビニール袋に入れてパッキングしている時から。久しくブラブラしていなかった、あの界隈を散歩することを。
さすがにもう通常営業をしていると思っていたけれど、気になっていたんです。
いくつかのお気に入りのお店が、今どうなっているかなって。
ということで本日は、ゲラを届けに三千里のついでに、外苑前〜原宿をはな散歩です。(じゅん散歩に敬意を込めて)
神宮球場の近くにゲラを届けて、キラー通りへ向かいます。
傘をさすかささないか少し迷うくらいの雨が、散歩道をしっとりと濡らしている。道の左右に時折見える秋の花が、弱めの柔らかい雨を浴びていきいきして見える。散歩道の空気も気持ちがいい。
5分ほど歩くと本日のお目当て1軒めが見えてきました。
西洋民芸の店グランピエ。インドのスプーンやパキスタンのバット、イランのぽってりしたグラスなど。行くたびに掘り出し物が見つかる宝箱のようなお店。
ここにくるのは何ヶ月ぶりだろう。今年の初め以来じゃないかな。
入り口に置かれたインドの織物。微妙に色が違ってかわいい。少し厚めでしっかりしているから、バッグにしても良さそう。これは買い。
お店の中に入ると目移りする雑貨たちが並んでいる。家を引っ越したばかりなので、キッチン道具から目が離せなくなります。
パキスタンのバット。こんな小さいサイズあったっけ。ブルーグレーと紺のバットがかわいい。同じ素材の黄色いカップも調味料を入れるのに買おう。
タイのレンゲ。平べったくて使いやすいんだよなぁ。柄が長いものは初めて見たかも!2種類とも新居のキッチンに迎えよう。わりと即決派なので、買い物の時間は短いんです。グランピエ、滞在時間10分ほど。レジに商品を持っていくと、店員さんが「いらしてくださるのは、お久しぶりですか?」と話しかけてくれる。「はい、年明けくらいぶりだと思います。」と答えると「もうすぐお店が近くに移転になるんですよ」とのこと。現状の青山店から7分くらい歩いた場所に雑貨部分の店舗が移転(グランピエにはお洋服を扱うお店もあります)。年内はこの場所も営業しながら、10月に新しい店舗が並行してオープンするのだそう。「横浜の根岸にもラインナップの違ったお店ができるので、お近くにいらっしゃる際には覗いてみてくださいね」。
今日ここに来て、移転のお話を聴けていなかったら。次に外苑前にふらりときた時に、お店がなくなってしまったのかとあたふた落ち込むところだった。ぶらり外苑散歩に来たのは、これだけでも正解だった。キラー通り沿いにあるグランピエ、たくさんお世話になりました。
小さな宝物たちを手に、また歩き出して次はおやつ。道すがら、向かい側のワタリウム美術館から誰かに見られている気配を感じて、店内を遠巻きに見るとでっかいネズミさんのオブジェが。わたしを見ている気配は君だったのか。それにしても、でかすぎないかい?(わたくし、ネズミが大の苦手です。道路を挟んでいるのに、ビクビクしながら歩きました)
ミナペルフォネンのpieceもチラッと覗いていこうと思ったら、3月末にクローズしていたということをガランとした店舗を見て知る。ここでパッチワークのバッグを買ったり、バッチを買ったり。目的なく覗いても、いつも気になるものがあるお店だった。
先ほどのグランピエもそうですが。自分がその時、気になっていなければ、どんなにネットに情報があふれていてもアクセスすることってないんですよね。もはやネットがないと生きていけない体ではあるけれど、ブラブラ歩いて得られる情報や気づきを、ネットの情報はあくまで補助する役割にしておきたいなぁ、とミナの気配が消えた店舗を見ながらふと思いました。直に見たり、直に聞いたり、直に味わったり。その時の心の動きは後々まで、その場所の記憶や匂いと一緒に強く自分の中に残っているものだから。
あったものの場所がこれから変わることや、あったものがなくなったりすることを実際に耳や目にして、2020年という年のことをぐるぐる考えながら(そういえば2020年は、ねずみ年だったんだ!)、おやつの店に向かいます。真面目に考えるふりをして、おやつかい!ですが、今日は絶対に香咲のホットケーキを食べると決めて、事務所を出たのです。本日1番のお楽しみなのです。
カウンターは1席ずつ区切られていて、キッチンとの間にもガラスが。お店の雰囲気と店員さんの明るい声は変わらない、ホットケーキの美味しい大好きな喫茶店。
目の前に、たまたま時計があって。時間を見てみるとジャスト3時。
はかったわけではないんですよ。ほんとにたまたま。でも、ぴったり3時の時計をみると嬉しくなってしまう。3時のおやつにホットケーキ。100点じゃないですか。
店内はほぼ満席で。若い女性の友人同士や男性一人で来ていらっしゃる方も。
ここは、おやつだけではなくカレーやハンバーグも抜群においしいのです。ホットケーキの甘いにおいとごはんのおいしいにおいが混在しています。幸せなかおりのミックスです。
席に着くと、迷うことなくホットケーキと香咲ブレンドを注文。ホットケーキが到着するまで、おいしい匂いをかぎながら、待ちます。
「お待たせしました」
あ、右のお隣さんの注文したものが運ばれてきた。ついたて越しに食べ物の気配を感じます。女性のお客さんは、どうやらトマトチーズ煮込みハンバーグを注文された模様。ホットケーキを食べると心に決めてきたけれど、ハンバーグとチーズのにおい。たまらんなぁ。
「すみません、ホットケーキを追加でお願いします」
左のお隣さんは、カレーの後にホットケーキを追加。最高じゃないか!クー、腹ぺこでここに来て、カレーとホットケーキっていう手もあったなぁ。
そうこうしているうちに、やってきました。愛しのホットケーキが、わが元に。
メープルシロップはもちろんですが、ホットケーキの肝はバターだと思っているんです。わたくし。ちょっと塩気を感じるところにシロップの甘さを同時に口の中で感じられる時が、ホットケーキの最高においしい瞬間。コーヒーフロートのアイスクリーム・アイスコーヒー・氷の接触面のカリッとしたところぐらい、重要なおいしい部分。(これ、伝わるかなぁ。)
香咲のホットケーキは潔く少し厚めのものが1枚。
ナイフを入れるとさっくりとした生地を感じて、あぁ、会いたかったよこの感触にとだきしめたくなる。ベイキングパウダーと小麦粉の配合なのだと想像するのですが、自宅で作るとこんなに軽くならないんですよね。しっとりが強くなる。
バターをしっかり塗って、メープルシロップもたっぷりかけます。
あぁ、しみじみとおいしい。塩気も甘みもベスト!優勝!
少し苦めの香咲ブレンドが、口の中を香ばしくしてくれて、コーヒーを飲んだ後に食べるホットケーキの次の一切れは、少し味が変わる。それもまたおいしいのです。
ひとくちずつに口福を感じながら、気がつくとあっという間に平らげているのが香咲のホットケーキ。きれいになったお皿から顔を上げて、目の前の時計をみると、お店に到着してからまだ20分ちょっとしかたっていませんでした。
あぁ、食べおわっちゃった。(ふくれたおなかを撫でつつ)おなかいっぱい。幸せいっぱい。久しぶりに0カロリー目指して、原宿まで歩こう。
はな散歩〜外苑編〜これにて終了。
来週は原宿・数年ぶりの古着屋さん巡り編をお届けします。