スル、マシ、オットニャ?(酒の味はどうだい?)

父「酒の味はどうだ?」
セロイ「甘いです。」
父「それは、今日の1日が印象的だったってことだ。おれの酒も甘い」

韓国ドラマ「梨泰院クラス」の第1話。主人公パク・セロイがお父さんと初めて焼酎を酌み交わすシーン。「スル マシ オットニャ?(酒の味はどうだ?)」「タルコメヨ(甘いです)」。重要な、忘れられない台詞でした。

映画「パラサイト」の冒頭のシーン。パク・ソジュン演じるミニョクが、チェ・ウシク演じるギウに家庭教師のアルバイトを紹介する場面でも、小さなスーパーの横で焼酎が登場します。

今年の初め、旧正月のソウル。聖地巡礼っていうやつをやってみた。このスーパーの横で、ミニョクとギウが焼酎を酌み交わしていました。
ロケ地になった「テジスーパー」のやさしいお母さん。たくさんの映画ファンがお店にやってくるそう。息子さんが日本で働いているんだよと話してくれました。

韓国で飲み屋さんに行って注文するのは、きまってマッコリ、カス・ハイトなどのビールばかりなのですが。旅に行けないこの期間、ロスを埋めるために韓国映画やドラマをずーっと見続けていたら、ソジュ=焼酎がやけに美味しそうに見えてきました。

泣きながら上司の愚痴を言う場面でも、好きな人ができたと幼馴染たちに告白するシーンでも。屋台で沢庵をかじりながら焼酎のグラスをカーンとあけたり、コンビニ前のパラソルの下で紙コップに焼酎を注いで飲んだり。感情を包み隠さず、あらわに交わらせる場面の横に、いつも焼酎がある。
日本だとその役割はジョッキのビールになるのかな。
人を慰める力や、嬉しいニュースをもっと嬉しくさせる力が、韓国のソジュ=焼酎にはあるように見えます。

よく一緒に韓国を旅する友達が飲みに来る前日。いつもならビールを用意するところですが。無性にソジュが飲みたくなって、ずっと気になっていた錦糸町のお店に買い出しに行くことにしました。
韓国の食材を買うなら、新大久保や東新宿の方が家からも近いのだけれど。
東京の中で韓国を感じられる場所を自分の中に増やしておきたくて、半蔵門線にゆられて東京の東側へ。

4、5年前にタイ料理を習いに来て以来、とってもお久しぶりの錦糸町。
駅直結のパルコを歩いていると、ココハニホンデスカ?ワタシハイマドコニイル?と耳元で幻聴が聞こえてくるほど、多国籍の人々に会えた街。2019年のデータでは、東京にすむ外国人の数は56万人強。そのほとんどは23区内在住で、新宿区、江戸川区、足立区、豊島区についで、錦糸町のある江東区は海外からの居住者が多いようです。日本語学校がたくさんあることもあって、留学生が多く住んでいたこの街でしたが。コロナウィルスの影響で、帰国した人たちも多いのかもしれません。以前この町を訪れた時よりも、外国語が聞こえてくる回数は格段に減っていました。

錦糸町を脳内でアジアの様々な街に変換しながら歩こうと思って、半蔵門線の中であれこれ妄想をしていたのに。聞こえてくるのは日本語、また日本語で。日帰り擬似アジアトリップは、早々に失敗に終わりました。

ビルの合間に一駅先の押上にあるスカイツリーが見える。ためしに薄目で見てみても。…残念ながら南山タワーには見えてこないし、台北101にも変身はしてくれない。紛れもなくここはジャパンなんだよなぁ。

次は、いつ旅に出られるのか。またいつもの少しさみしい気持ちを抱えながらも、気を取り直して韓国食材を多数扱っているお店「BIG5」に向かって歩きます。
道すがら、いい雰囲気の喫茶店にはつい目がいってしまう。

少し歩くと左手に韓国のコンビニ「GS25」の雰囲気に似た「BIG 5」看板が見えてきました。錦糸町の駅から5分くらい歩いたところにあります。

ガラスに貼られた広告たち。日本でも有名な焼酎「チャミスル」のポスターには、2019年からイメージモデルに起用されているRed Velvetのアイリーンが写っている。あぁ、この雰囲気。自己暗示タイム。「ワタシハイマソウルニイル、ワタシハイマ、イテウォンニイル」一時だけでも、旅をしているワタシになあれ。

お店はこじんまりと周りやすい大きさ。「オソオセヨ(いらっしゃいませ)」と韓国語で迎えてくれる店員さん。
店内を右回りにゆっくりと見て行く。キムチがおいしそう。ナムルなどのおかず類は300円台。やすい。徐々に気分が上がってくる。明日、キムチと卵のナムルは作る予定だから、キムチは買って帰ろう。うん、これはおいしそう。1kg、5kgと大きな袋に入っているキムチもあるけれど、今日は我慢。

コチュジャン、ごま油、ダシダなど。おなじみの調味料も棚に整列している。ポッサム用にコチュジャンをカゴにいれる。インスタント麺がとても充実していて、あれもこれも欲しくなって困る。大邱のホームプラス(大型スーパー)でお土産を選んでいる時の気分に近いな。「ワタシハイマ、テグニイル」

トッポキ用のトック(お餅)。ちょうど「ビュティーインサイド」というドラマで、おいしそうな辛いトッポキを見たばかり。おやつのイメージが強いトッポキだけれど、焼酎にも合うはず。おっきな鍋で辛いチーズトッポキも作ろう。トックも買い物カゴにイン。トッポキといえば、ソウルの新堂洞にあるトッポキタウン。ラーメンに揚げ餃子も入ったトッポキの鍋が美味しかったんだよなぁ。「ワタシハイマ、シンダンノトッポキタウンニイル」

トッポキタウンの中でも一番人気の「マボンニム・ハルモニ・トッポキ・チッ」で食べたトッポキ鍋。常に満員のお店。エプロンをつけて、真っ赤なスープをすするのです。

食材ごとに自己暗示の旅が続いておりますが。今日1番のお目当ては、主演のパク・ソジュンじゃなかった、主役のソジュ(焼酎)。並んでる並んでる。チャミスル(真露)、チョウンデイ(いい日)、チョウムチョロム(はじめてのように)。「梨泰院クラス」に登場するソジュはチャミスルだったけれど、今回は韓国で飲んでおいしかったチョウムチョロムにします。生マッコリも美味しそうだから買って帰ろう。

「愛の不時着」第5話。ヒョンビン演じるリ・ジョンヒョク大尉に婚約者がいることを知った舎宅村のマダム軍団が、ソン・イェジン演じるユン・セリを慰めにくるシーン。「こういう時はタルメクでしょう!」とマダムたちが口々に言いながら家に入ってくるのですが、「タルメク」とは。干し鱈=タルピミョンテの「タル」とビール=メクチュの「メク」で「タルメク」なのだそう。チキンとメクチュで「チメク」はよく知っていましたが、「タルメク」という言葉は「愛の不時着」で初めて聞きました。
そんな「タルメク」の干し鱈も売っていたのでこちらも購入。

青唐辛子もたっぷり入って一袋360円。コチュジャンをつけてバリバリ食べるのはソジュに合うでしょう。マチガイナイ、カゴニイン。

束の間の韓国ノウナイトリップ食材編、これにて終了!あぁ、楽しかった。

この食材を使って、翌日の食卓はこんな風になりました。

テレッレッテテテテ、テレッレッテテテテ、テレッレッテテテテテテテ。
ここで突然ですが、サクラジェーピー3分クッキング。

<ポッサムレシピをご紹介>
鍋に豚バラブロック(お好みの量)と、肉がひたひたになる分量の水を入れます。
ネギの青い部分、生姜ひとかけ、ニンニクひとかけ、玉ねぎ1/4を入れて火にかけ、40分ほど煮る。(アクが出たらすくう)
茹で汁につけたまま冷まして、食べるときに5mmくらいの厚さにカット。
(茹で汁につけたまま冷ますと肉がパサパサにならず、しっとりした状態でカットができます)
レタスやエゴマの葉などのお好みの野菜、コチュジャンと味噌を1:1で混ぜたサムジャンと一緒に食卓へ。

チーズメウントッポキ、ポッサム、キムチと卵のナムル。そしてソジュ!
コンベー!(乾杯!)

スル、マシ、オットニャ?「酒の味はどうだい?」

タルコメヨ。「甘いです」

韓国エンタメ好き全開でお届けしました、ちょっと暑苦しい本日の「気になるもの」。ここまでお付き合いいただきコマッスンミダ(ありがとうございました)。シルバーウィークは、お好きな映画やドラマとともに。そしておいしいごはんとお酒もご一緒に、よい時間をお過ごしくださいね。
オヌルン、ヨギカジ。(映画・ドラマ「ビューティーインサイド」に出てくる台詞「今日はここまで」でさようなら)