つなかんの一代さん。

「お風呂いっぱい入れすぎちゃったから、
最初にお湯をかけてから、湯船に入ってね。
ピピっていう音が全然聞こえなくってっさ。
お湯にも申し訳ないよね」

「お湯にも申し訳ないよね」
久しぶりの一代さん節。これこれ、唐桑に帰ってきた。

出張で東北に来ています。
何ヶ月ぶりの三陸の海のにおいだろう。
秋にオープン予定の「陸前高田発酵パークCAMOCY」の上棟式があって、
昨日から陸前高田、気仙沼にやってきました。
陸前高田発酵パークCAMOCYのロゴは、SAKRAJP「山口フォト」ことぐっさんに、デザインをしてもらっているんです。ぷくぷく発酵するロゴ。カッコよくて、愛らしくもある。

陸前高田に出張がメインなんだけれど、気仙沼に会いたい人たちがたくさんいる。宿泊先をどうしようかと思っていたら、ほぼ日で気仙沼のさゆみちゃんが一代さんのことを書いていました。

一代さんは、100年以上続いていた気仙沼唐桑の牡蠣の養殖事業者だった盛屋水産の女将さんで、震災後の2013年に「つなかん」という民宿を始めました。
(現在は、民宿のお仕事をメインにされています)

盛屋水産の牡蠣小屋だった場所。現在は、東北ツリーハウス観光協会の事務所になっています。

前職のほぼ日で気仙沼に事務所をひらくことになってから、気仙沼の太陽のように明るい女将さんたちに、どれだけお世話になったかわかりません。
一代さんは、そんなスーパー女将さん陣の中のお一人でした。

さゆみちゃんの漫画の中で、一代さんが話します。
「震災から今まで、三歩進んで五歩下がるような感じ。」
「でも地球は丸いでしょう?下がり続けたら同じところに戻ってくる!」
一代さんの言葉、やっぱりいいなぁ。

久しぶりの三陸。一代さんに会えたら、一緒にがははと笑って、いっぱいおしゃべりをして、パワーを充電してもらえそう。そうだ、「つなかん」に泊まろう。
予約サイトにメッセージを送ると、「楽しみにお待ちしています」とすぐにお返事が帰ってきました。

じぇじぇじぇの岩手県久慈から、ばばばの宮城県気仙沼にお嫁さんにきた一代さん。(気仙沼が舞台になる朝ドラ「おかえりモネ」で、「ばばば」がメジャーになりますように)

はじめて唐桑にお邪魔した時、「いらっしゃいー!」とすしざんまいの社長さんのように大きく両手を広げて待っていてくれた一代さん。御座敷にみんなで座ると瞬く間におしゃべりが始まって、まるで親戚の集まりのよう。いや、親戚という表現は正しくないかもしれません。だって親戚のおばちゃんは、会ってすぐハグはしないもんな。

誰でも分け隔てなく、両手を大きく開いて訪れる人たちを迎えてくれる。ここにきた人たちはきっとみんな、つなかんが「帰ってきたい場所」になる。

牡蠣と帆立の養殖を生業としていた一代さんご家族の住む唐桑の鮪立(しびたち)という場所は、その名の通りマグロ漁で栄た漁港だったそうです。この地域に住む船主さんや船頭さんたちは、マグロ漁で財をなし、得た財を誇示するように、競って大きな自宅を建築したのだとか。
「唐桑御殿」と呼ばれるその大きな御殿が、小高い丘に転々と建ち並んでいます。

つなかんもその「唐桑御殿」と呼ばれる立派で大きな建物。3階建てのお屋敷は、久しぶりに来てみると1階がリニューアルされて、宿泊できる場所が増えていました。

つなかんの名前の由来。「鮪立」という地名の「マグロ=ツナ」と、一代さんの苗字「菅野」の「かん」を合わせて「つなかん」。

宿のHPには、
「人が来て、町がよみがえる。えがおで人も明るくなる。
故郷に戻ってきたような、ゆったりとした時間が流れますように。」
と、一代さんの思いがつづられています。

つなかんには、サウナもあるんです。

夕飯のあと、気仙沼のクラフトビールを飲みながら一代さんとおしゃべり。

孫のしんばが最近、ワイルドスピードのDVDを見すぎて困ってるの。
わたしは「ばあやん」て呼ばせてるんだけどね。
5歳になるんだけど、きれいな人が好きでね。
私は娘3人だったから、男の子の成長ってこんな感じなのかってはじめてのことだらけでさ。

一代さんのお孫さん「しんば」の話を聞いて、みんなで笑う。

ホテルに泊まったら、この「帰ってきた感」は味わえないんだよなぁ。
やっぱりつなかんに泊まってよかったと、しんばの「きれいなお姉さん好き」の話を聞いて思う。

最後に、「お風呂いっぱい入れすぎちゃった」のひとことを残して、
一代さんは別の宿泊客の皆さんのところに。

少し時間がたったあと。今回一緒に宿泊をしたさゆみちゃんの旦那さん、つなかんにあるツリーハウスも作った道有くんに、一代さんから電話がかかってきた。

「小池さんたち、陸前高田のCAMOCYの仕事で、またこっちにたくさん来ることになるんだよね。うちの1階、素泊まりの人たち用に改装したから、どんどん使ってって伝えて」

弊社、and recipe。陸前高田、CAMOCYの中に2坪の小さなお店を持つことになりました。これから、東北と東京を行ったり来たりすることが増えます。ホテルに宿泊をするのか、場所を借りて宿泊と商品の倉庫を兼ねるのがいいのか、頭を悩ませていたところだったのです。

そんな時に、一代さんの嬉しいひとこと。

つなかんを拠点に、陸前高田や気仙沼を行き来する。地理的にもちょうど2カ所の間。唐桑に「ただいまー!」と言える場所ができる。「おかえりー」とハグをしてもらって、広い座敷でビール。夜空を見上げれば、こぼれ落ちてきそうな満天の星。静かな波の音。

最高オブ最高じゃないか。

唐桑の朝。港沿いをゆっくり歩く。
目の前には船のドッドッドッドッと進む音。後ろには、ジジジジと鳴く虫の声。もうコスモスが咲いていて、少しだけ湿った草のにおいがする。静かな海上を、ウミネコがすべる。2匹の芝犬にちょっと強めに引っ張られながら歩く、赤い帽子のおじさんが向こうに見える。

そろそろみんなで、朝ごはんだ。お座敷に戻ろう。

気仙沼に、陸前高田。
「気になるもの」の中にも、三陸の風景がこれからたくさん登場することになりそうです。