勝手に物書きトモダチ宣言、桑田さーん
「あーあ、寒いのすっとばして常夏になんないかな・・」
ずんの飯尾さんみたいに寝っ転がって現実逃避。ニホンコンです。
こんな本というかエッセイを読んでました。

80になろうとする私の母から11歳のうちの3号まで老若男女問わず知っている
「桑田佳祐さん」。20代後半、音楽業界に身を置いていた経験のある私は、
当時の社内でふんわり統一されていた呼称「桑田さん」で進めてまいります。
桑田さん、地元が茅ケ崎ということで、お隣に住まう私はオラが村の観光名所、
江の島の写真と共にこの本の感想だったり思ひ出話だったりをしてみようかと。

サザンオールスターズ
母が若かりし頃、ラジオで流れてきた「勝手にシンドバッド」を聴いて「この人ら、
絶対一発屋で終わる!」と強く予想したらしいが、その予想は見事に外れ、サザンは
国民的大スターとなりました(笑)。
小さい頃聞こえてきた「いとしのエリー」はふぞろいの林檎たちの主題歌。けど、
当時の自分は幼すぎてドラマの内容も人気のほどもよく分からずじまい。
青春時代ではバンバンでるサザンのヒット曲。「真夏の果実」なんて誰かのカラオケで聞いた
数のほうが多かったし、「涙のキッス」を聞くと「冬彦さん」のドラマを思い出すほど。
それ以外にも私たち日本人の日常に溢れすぎているサザンの楽曲。どの曲が好きか論争をしたら
その場にいた人全員違う曲を挙げ、満場一致になんて一生ならないと思われる名曲だらけ。

球場で歌ったり、文春で書いたり
サザンといえば野球場コンサート。昨年夏に茅ケ崎球場で行われたものは、私みたいに
「生活の中にふんわりサザンが居ました」程度の輩がチケットを取っちゃあいかんだろ、
と思って遠慮し、往年のファンにどうぞどうぞと譲ったつもり。
取れなかった住民は海岸でビール飲みながら球場から聞こえ漏れる音で歌ったり、
屋根の上で踊ったりする住民がいたりと、めいめいに楽しんでいたようです。
桑田さんのエッセイは文春に一年半ほど寄稿していたものがまとまったもので、
これがとても人間臭くて面白かった。
歌詞とは違う、日常の中から絞り出した言葉の数々。また大スターの日常というか、
頭の中そのまんま見せてもらえた感じ。
自分のことを「アタシ」と書くところも可愛らしく、通常運転のエロはもちろん、普通に
小心者よろしく、聖子ちゃんから楽曲の依頼が来ないことにクヨクヨしたりしている。
ま、キラッキラの権化みたいな聖子ちゃんから、いやらしい歌詞ばかり書く本人に
オファーがある訳もないのも自己分析できている模様。

茅ケ崎バナシ
文中には地元、茅ケ崎の話も出てきます。
今でこそ茅ケ崎=サザンとなってオシャレなビーチタウン、というイメージで有名では
あるものの、本を読む限り昔はただの田舎の漁師の町で、退屈な中、お姉さんの影響で
音楽に陶酔していった様子がよく分かる。
ちなみに、桑田さんの母校である海沿いの中学校では歴代の卒業アルバムが保管されている
中、桑田さんの代だけは「校長室で鍵がかかった状態」で保管されてるんだそうな。
ただ、本の中に「同じ中学の先輩で尾崎紀世彦さんが居る」とあったけれど、
彼の代の保管状況はどうなんだろうと、ちょっと思ったり。

文章って面白い。歌では完全に「サザンオールスターズ」色になっているのに、
桑田さんが書く文章となると、彼そのものがダダ漏れる。
たちまち近所の音楽好きな、エロいおじさんのボヤキになるんだから不思議なもんだ。

かつての思い出
私が音楽業界に身を置いている時、広告営業部で夜な夜な遅くまで残業しておりました。
よく覚えているのは、桑田さんのお父様がお亡くなりになった時のこと。
あの時、朝から晩まで働きづくめだった業界全体がオール停止しました。
当時私のいた会社も、編成部の偉い方が揃ってお通夜や告別式に参列したたため、
編成と調整が必要な営業部は、数日間1ミリも仕事が動かなかったのをよく覚えています。
関係各所に「すいません、あの案件、調整がつかずにお返事がだいぶ遅れます」
とお詫びの電話を入れまくる中、普段なら「何だとー!許さん!」と、普段は上から
目線のいばりん坊クライアントも「いやあ、実は桑田さんの・・」の事情を話すと
「あぁ!そういうことならぁ!もう全然待ってますぅ!」と電話の向こうで小さくなる。
水戸黄門の印籠が実在する瞬間を目の当たりにした気がしたっけ。
ズルい私はそこから10日間くらいは喪中と勝手に判断し、調整が難航する案件は
「実は桑田さんの・・」の印籠で取引先を黙らせ続けていました。(だって、音楽という
アーティスティックな世界に広告なんていう商売を掛け合わせるのって、ほんっと
上手く行かないんですもの)

悩ましいグラデーションの描き方
桑田さんが文中でよく書いていた「グレー」や「悩ましい」。コンプライアンス全盛期の現在、
全てがホワイトでキレイなもので表現されることに思うことがあるそうです。
行き過ぎた黒に近いグレーや艶めかしすぎる悩ましさを、どうオブラートに包むか、
そんなことを考えているようです。
ニホンコンは逆で、奥底に潜む自分の弱さといくじなしさと、クヨクヨしいが透けて
見えないようにバンソウコウを貼りながら自分の日常を笑い飛ばそうとしています。
かさぶたになってからは見せられるけれど、途中の悩ましくグレーでジュクジュクしてる
過程をお見せできない。身も心もすっぽんぽん、桑田さんで言うところの「頭もアソコも
元気なうちに」とは真逆。⇚いや私が言ったんじゃなくてご本人はもちろん、巻末で
奥様原由子さんもしっかりおっしゃっていました。
勝手にご本人と同じ土俵で比較している図々しさこの上ないのですが、めちゃ刺激を
受けたので、勝手にご近所物書きトモダチ気分。
バカなシンドバッドだと笑ってくださいまし。
3月4日 ニホンコン
追記:もし隣に座って一曲歌ってくれるというなら、私は迷わず「慕情」をリクエスト。