短い時間であっても。
年末年始、韓国関連の仕事が入ったので、リサーチをしなければいけないことがどっさりな1週間。冬の魚に関する原稿も書かねばならない。リサーチにしろ、原稿にしろ。事務所でも家でもどこかのカフェでも、どんな場所でも可能な仕事。ちょっと気分を変えてやりたくなりました。
1泊、東京でない場所に行くとしたら。今年は、自分にご褒美をあげたい年末年始だと少し前のSAKRAにも書いたのですが、東京でないその場所が国を跨ぐことのできる場所なら、なおさらいい。
作品撮りをしに釜山に行くという旅の相方・衛藤キヨコの予定に合わせてさくっと1泊、釜山に行ってきました。
移動をしながら、ふと思ったんです。これが京都だったら、旅費はどのくらいだったかなと。
今回の釜山への旅費。日暮里から成田のスカイライナー2,580円×2=5,160円、成田から釜山への往復飛行機代27,635円、ホテル1泊(バスタブ付きのツインルーム1人利用)7,278円の合計40,073円なり。
東京から京都に移動して、1泊しているとしたら。東京から京都往復の新幹線代14,050円×2=28,100円、釜山と同じくらいのグレードのホテル14,582円の合計42,682円。
旅費だけに限っていえば、釜山の方が安い。移動の時間だったり、食べ物だったり。どちらが良いかは、もちろん人によりけりだとは思うのですが。
チェックインをした後、フライトまでの待ち時間で仕事がどんどん片付いていく。同じ時間、事務所にいてパソコンに向かっていたら、こんなに仕事が捗っていたかな。きっとぐずぐずとコーヒーを入れたり、リサーチの合間に関係のないサイトを見てしまったり。時間はこんなに過ぎたのに、仕事は全然進んでいないじゃないかってことになりうる。
ソウルの大雪の影響で、成田から釜山に飛ぶはずの機体が遅延して、待ち時間が長くなったのだけれど、おかげで仕事時間が増えたとストレスも全くなし。どこでもできる仕事だけれど、移動した方が捗る仕事ってあるんですよね。釜山行きを決定した自分を頭をなでてあげたい気分。
釜山に到着して、ずっと訪れてみたかった「温泉場」という駅に移動。駅に先に到着していた相方から、線路沿いの街の雰囲気がすごくいい!と興奮したメッセージが届く。
電車に揺られながら、温泉場のお店を検索。セリとキノコがたっぷりはいったマンドゥチョンゴルがとってもおいしそう。ニラの餃子、カルグクス、スジェビと3種類の粉物を、唐辛子のたっぷり入ったスープでぐつぐつ煮た鍋。韓国では1年中食べられるセリが色もキレイでおいしそう。目的のお店の近くにはカルグクス通りがあって、他の店のカルグクスの写真にもお腹が鳴るのだけれど、깃발집(キッパルチッ)のマンドゥチョンゴルは特別においしそうに見える。
駅でキヨコと合流して、街の写真を撮りながら店に向かう。東京と同じくらいの気温を想像していた釜山は風が強く、だいぶ寒い。コートの首のところをぎゅっと右手で押さえながら「お腹すいたねぇ」と店までの道を急ぐ。
カルグクス屋さんが並ぶ通りで、打ち立ての麺の山にお腹を鳴らす。次はここでも食べたいねと、気になるお店のチェックもしながら、地図とにらめっこ。釜山には何度の足を運んでいるけれど、ここは初めて訪れる地域。カラオケ屋さんがどっさり並んでいるのは、すぐそばに温泉があるからなのか。否か。
お目当ての깃발집(キッパルチッ)に到着してメニューを眺める。カレイとわかめにミョルチ(煮干し)の出汁のカルグクスもおいしそうだけれど、初訪問はやはりお店の看板メニューであるせりとキノコのマンドゥチョンゴル(餃子鍋)に決定。ビールをぐっと口に流し込むとすぐに鍋のセットがやってきた。
「食べ方はご存知ですか?」
「いえ、初めてなので教えてください。」
唐辛子のたっぷり入った赤いスープには、セリとヒラタケのようなきのこがすでに入っている。スープが沸騰したら、大きなマンドゥ(餃子)と手打ち麺、薄いすいとんのようなスジェビの粉物を全て入れてぐつぐつ煮る。麺がほどけた少し後が食べごろ。麺を入れた途端にぶわっと広がるスープが食欲をそそる。鍋の円周率の1.2倍くらい、まぁるくもくもく天井に上っていく湯気からはニンニクのいい香り。お腹は最高潮に減っている。
「麺がほどけた!スジェビもモッチリしてる。よし、食べよう。」
「熱すぎて、味がちゃんとわからな…。ホフホフ、うまい!」
韓国にきて野菜を食べるといつも味が濃いなと感じるのだけれど、このセリの鍋もそう。存在感のあるセリと、噛むたびに旨味を感じるきのこ。そして3種類の粉物がどれもうまい。ニラがたっぷりの大きなマンドゥは、かじる度に口とお腹が同時に満たされていく。カルグクスも塩気がちょうどよくて、ツルツルと喉を通る。モチモチのスジェビはしっかり噛んで味わいたくなるいい茹で具合。小麦粉でとろみのついたスープを時々はさみながら、箸を休みなく動かす。スッカラもチョッカラも止まらない味でした。
「ミナリ(セリ)ときのこ追加してもいい?」
野菜を体にたっぷり取り込みたくて、追加。セリがうまい。
粉物3種類でたっぷり炭水化物を食べ終えると、待っているのはおじや。なんと幸せな炭水化物のリレー!
「スープをもう少し足すから、ちょっと待っててね」
お店のお母さんが、鍋の〆の準備をさくさくと進める。再度火をつけてぐつぐつしてきたスープに、ごはんと青唐辛子、卵の入ったお皿の中身を投入。お玉の背をぐるぐる鍋底で回しながら、具材をスープに合わせていく。
「はい、どうぞ〜!召し上がれ」
グルグル回った卵が、やわらかい調味料になったおじやは、ふんわり優しい味。お腹いっぱい!御馳走さまでした。
よく訪れていたはずの知らなかった場所で、初めて体験する韓国の人たちの好きな味。次はこの辺りに泊まって、まだどこかに潜んでいるおいしいお店にアタックしたいね。
短い滞在でも充実した1泊2日の釜山旅。次回の取材のリサーチがたっぷりできたいい仕事の時間にもなりました。写真楽しみにしてるねと、旅の相方に手を振って東京に戻る。
いよいよ12月。もう〇〇月と、なんどもSAKRAに書いてきたのですが、思い返すと長く感じる1年だった2024年。皆様にとっては、どんな1年でしたでしょうか。たのしい時間の多かった1年であることを心から祈りつつ。
今週も1週間おつかれさまでした。温かい週末をお過ごしください。