6年目の一掃。

おはこんばんちは。飯塚です。

11月中旬近いというのにこちらはだいぶ暖かいです。しみったれた夏だったのに秋は天候もそこそこ良くて。

アイリッシュは家が好き。

先週、引っ越して6年目で庭の一掃を決意するまでを書きました。

食事や自分自身の見た目には割と無頓着なアイリッシュ、彼らの意識はほぼ「家」だけに向いている、と言っても過言ではない。

賃貸で家やアパートに住む事を極端に嫌がる。

お金持ちはタワマンではなく広い敷地の邸宅に住む。

アイルランドのお金持ちの邸宅。

素敵な家ならお友達を招待したりもしますが、そんなに手の込んだ物は作らない。

オーブン料理を好み、立派なキッチンのコンロ周りも炒め物などは「汚れるのが嫌」なのでほぼしません。

庭にはテーブルや椅子、ガーデン家具を用意。

ビザ釜がある庭も珍しくない。

家や庭を持つ=メインテナンスを怠らず、見栄えよくし、さりげなく自慢したい。

のがアイリッシュの信条なのだろうというのは日々感じる。

この住宅地でみすぼらしい家は我が家だけ。

ご近所さん達は天気がよければ家や庭の掃除やペンキ塗りなどを四六時中やっている。

そんな隣人宅の中で一軒だけ薄汚れている我が家。

一応、芝生を刈り、植木は切るものの、家の外壁塗装が「お取り替えサイン」なのは誰の目にも明らか。

夏の間に「家のクリーニング屋」の訪問販売に二回も来られ、もう「どげんとせんといかん」ところまで追い込まれた。

高圧洗浄とペンキ塗りしますよ、というチラシ。

軍手も買った。作業着と長靴を履き、いざ開始。

まず、始めは生い茂る植木切り。我が家と隣家の間の植木を切る。

木は生え放題、なぜかカヌー置き場になっているどうしようもない庭。

枝切り鋏を握りしめてバサリ、バサリ。

なかなか良い鋏。太い枝も案外しっかりと切ってくれる。とりあえず、180cmくらいな全ての植木を自分の腰高さまで切ってみる。

腕と指がくたびれる。

きゅうに太陽が出たような錯覚を覚える。

枝や葉がなくなると我が家の庭には太陽光がこんなに入るのか。いつも話すお隣さんが愛犬ベンジーを連れて外に出た。

今まては壁越しに見えなかった隣人と初めてここで会話できる。

「あら!切り始めたの。大変ね。でも明るくなるんじゃない」

「そうですね。もうこの植木ずっと好きじゃなかったので片付けたくて」

「確かにね。そんなにきれいな植木でもなかったかもね。」

そうなんだよ。きれいな花が咲くわけでもない。邪魔なだけ。

実は隣人も長年そう感じていたという事がわかった。

前のオーナーがたくさん遺した植木は無駄に育ちすぎて迷惑だしやっつけて正解。

がんばれ、私。

切った植木の枝が山のように庭に積まれていく。

実は枝切りは一番簡単な作業。

切った枝や葉を片付け処分する方が時間も手間もかかる。

幸い、家の前の広い共有の広場の裏は住民の木の捨て場になっている。私達住民は庭掃除や芝刈りをしたゴミをここに捨てられるのだ。

ラッキー。

枝を集めて捨てる往復を何度もする。太い幹は枝切り鋏で切って暖炉で燃やす薪にすればいいか。

家の横の木を切り片付けるのに一週間。二週目は家の前の植木を切る。

家の横の植木がなくなり既に庭が明るく日差しが眩しい。

植木を切りながら色々な物が出てきた。

ボールは四つ。

鳥の巣は三つ。

春に見つけたスズメの赤ちゃん、この巣から落ちたのかなぁ、などと亡くなったかわいそうなスズメに今更想いを馳せてみる。

170cmくらいあった家の目の前の植木も全て私の腰の高さになった。

今まで家やキッチンから見えなかった外がやっと見える。

さて。枝は全部切った。

実は根までは自分でできる自信はなかった。

隣人が聞く。

「根はどうするの?機械でも雇って取るんでしょ?」

「そうですねー。たぶんそうなると思います。」

などと答えながら、いや、たぶんこれは自分でやってみるかな、と内心呟く。

ちょっと大変そうだけどやってみよう。

一番細い木の根を掘る。斧を振り、シャベルでかき分け、根を見つけたら枝切り鋏で根も切る。反対側も切り木に体重をかけてグラグラ揺らし、幹ごと倒す。

安住の地を突然襲撃された虫達が大慌てで土の中を這い回る。

住みなれた〜、我が家を〜

という歌詞だけが頭の中をこだまする。

更に土に残った根を掘り起こす。

なんだ!できるじゃん!

毛細血管みたいに広がる根っこが憎たらしい。

一度コツを覚えたら倍速で作業が進む。

土の中の大黒柱的な根を探して切る。木に体重をかけてみて揺らす。微動すらしなければ更に太い根を探して断つ。

一度グラグラすればもうこっちのものだ。どんどん根を切りシャベルを木の下にかまして体重をかける。

ミシミシと木を倒すのは意外と満足感がある作業だ。

臨時で学校が休校に。働け!働けー!!倒れない木を協力して倒す。

斧を振り下ろし、シャベルで掻き分け、更に土をほる。

繰り返し、繰り返し。

この力作業で滝のように滴る汗。

ジョギングよりもワークアウトよりも効くな。

毎日作業着に着替え、長靴を履き、作業手袋をし半袖で庭仕事に勤しむ約2時間。

幼稚園のお迎え時間に遅れないように時計をチェック。

お隣さんの旦那様がまた声をかける。

「あれ。根も自分で掘ってるの?でも無理は禁物だよ。僕も最近すぐ腰を痛めるからね。庭仕事して機材は壊さなかったけど身体壊したから。身体壊したら元も子もないよ」

確かにそうだ。ぎっくり腰になったら大変。身体が資本だから出来る限りでやらなきゃいけない。

「植木を根から掘るなんて無理かも」などと思っていたのに気付けば20本全てほぼ一人でやっつけた。

コンポストから収穫できたじゃがいも。

毎日様子を見ていた隣人さんが半ば呆れたように庭を覗きこむ。庭にはゴロゴロと植木の根っこが散乱。

「あなたこれ全部やったの?凄いわね、男性の仕事なのに」

「ですよねー、出来ないと思ってましたけど意外と片付きました。本当に嫌いな植木だったから自分で処理できて嬉しいです!」

学校から帰宅した子供達は毎日進捗状況をチェックする。

「ママ、また今日もこれやったの?」

「庭が広くなって明るくなったね」

田舎の家の必需品、高圧洗浄機を購入。

植木切りが佳境に入ったタイミングで夫が高圧洗浄機を購入。実は元々持っていた洗浄機、壊れたので新調の必要があり。田舎の家はいろんな機具が必要なのだ。

まず、家を洗う。

黒いカビ生えまくりな「お取り替えサイン」の外壁はこちらです。

塗料の上に生えた黒ずんだカビの壁、苔が生えた通路をブオーンという爆音と水量で流し落とす。

ビフォア
アフター

子供達は少し離れたところで水しぶきを浴びながら嬉しそうに家を眺め、夫自身は全身ずぶ濡れに。

飛び散った壁の塗料まみれな地面。

外壁ボロボロ

よし、塗るぞ。

塗料とハケ、脚立と古いシーツも用意して家を塗る。

なんということでしょう!!黒カビお取り替えサインの外壁が!!

高すぎる場所だけ夫にお願いし、あとは自分で塗る。

隣人さんチェックが入る。

「いい色じゃない。家が見違えるわね!」

「今までほったらかしで酷すぎたのでやっと人並みな家になれます」

「あら、あなた達は子供達もいるし忙しいから仕方ないのよ」

そうか。幼い子供達がいる、という免罪符があるから若干大目に見てもらえていたのね。

子供もいなくて仕事してなかったらこんな家は許されないんだろう。

「男の仕事」だけどおばさんにもできます。

5週間かけて庭の植木を切り、根を掘り、家を塗った。学校関係の行事があったり、天候の都合もあり毎日はできない。

校外試合で遠征には車を出して子供達の送り迎え&応援。こちらチームは男女混合で4年生から6年生編成。対して対戦チームは6年生の男児のみ。ヘビー級とライト級が戦っているようで気の毒すぎ。必死に戦い試合後に悔し涙を流す子たちに親たちももらい泣き。

フルタイムでやれば二週間くらいでできる作業か。

毎日の庭仕事のワークアウトの効果は大きい。夏休みに増えたお腹周りの贅肉が消え、埋もれていた鎖骨がうっすらと浮き上がる。ダイエット&家の向上と一石二鳥。

9月はジョギングほぼやらずにこの成績。庭仕事はfitbit的には「運動」扱い

実は現段階も壁塗りは終わっておらず、今は家の反対側の壁をやっている。

天気や私の予定次第だけれどあと二週間くらいかかりそう。

でもこれさえやれば、あと二、三年は壁塗りはしなくてもいいのだ。

植木を抜いた場所には何かを植えたい。

息抜きにガーデンセンターを見に行く。

確かに家の世話は面倒だ。

でも自分の家は「好きな家」にしないと。見るたびに「邪魔な植木だな」と思うなんて健康的ではなかった。

木がすっかりとなくなり、新しい外壁塗装も眩しい。

ビフォア
アフター。さて何を植えようかな。

今は外に出るたびに「よくやった!」と晴れ晴れしている。

植木を掘るなんて「男の仕事」「力仕事」と決めつけてたけれど一度やり始めたら無理ではなかった。

我が家も私の未来の仕事場もまだまだやらなきゃいけない事が山積みだけれどこれを機に更に「出来ること」を増やしてダイエットに励みます。

ビフォー。
アフター。植木がないと全然違う。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。