みちのく、きっと恋をする
海に行ってきました。
偶然ながら、山と海に行ったニホンコンさんの前日の投稿から流れを引き継げて、ちょっと嬉しくなっています。
もっとも、僕の方は海だからといって、変わり映えはありません。走ってきました。
岩手・盛岡から北東に車で2時間半ほどの距離にある沿岸部の普代村へ。トレイルレース「SEA ALPS TRAIL JOURNEY」(50km、累積標高2,000mくらい)への出場が目的です。
金沢を早朝に出発して新幹線でGO。岩手に入ってからは迎えに来てくれた先輩の車に乗り継ぎ。楽しく話が盛り上がったこともあり、あっという間に到着。スタート会場で前日受付を済ませます。
受付後に周囲を歩くと、見覚えのある景色が広がっていました。小さな直売所があって、あとはほぼ森と海。かつて通った「みちのく潮風トレイル」のルートの一部でした。
潮風トレイルは、青森から福島にまたがる1000kmのロングトレイル。4年前に北の出発点となる八戸から、200kmほど走って旅したことがあります。その当時たどったルートをコースに使ったのがこの大会です。
南下して50kmを走るのですが、以前の旅ではなかなか進めませんでした。その理由はキツいから、ではなく、風光明媚なスポットがありすぎるから。リアス式海岸だなあと感じさせてくれる断崖の連続、澄み渡った海の色、美しい森と見どころ満載です。
回想が長引いても仕方ないので、レーススタート。午前5時半、一斉に駆け出します。
まだ夜明け前で、東北の夜は寒く、気温は一桁台。凛とした空気が眠気を覚ましてくれます。太陽が昇る前、空に色が戻ってくる時間帯が好きです。早起きは苦手なので、あまり起きていることはないのですが。
木立の奥から差し込む一筋の光。海岸線に出ると、朱色に染まった空と海。早朝のハイライトは日の出でした。
景勝地・北山崎では、海のアルプスという名前にふさわしい高さ200mの断崖が続きます。海抜0mからそそり立つ岩壁は圧巻。標高が高くとも、周囲に山が連なっていると、景色としては意外とつまらないなんてこともありますが、ここはなにせ海。劇的なギャップにしびれます。
そして、なんといってもエメラルドグリーンの輝ける海。入浴剤を入れているのではないかと冗談にされるほどの鮮やかさです。レース中でも、写真を撮らざるをえません。はい。
さらには、手彫りのトンネルを通る区間も。中は真っ暗でヘッドライトは必須。朝から夜に逆戻りです。ハシゴを使って小さな崖を上り下りしたり、ちょっとしたアドベンチャーを楽しめます。
「心臓破りの階段」では、リアス式海岸の醍醐味を体感。できれば破られたくありません。エンタメ感満載のコースですが、全体的には走りやすく、ロードも多めです。
コース上で出会うスタッフが熱いエールを送ってくれるだけでなく、住宅地を通ると、ランナーを見かけた地元のおばあちゃんが拍手で応援してくれたり、車から声をかけてもらったり。嬉しくなります。
そういえば、4年前に旅していた時は、いろんなところで食べ物やお茶を差し入れにいただきました。人情深い地域です。
震災の記憶に触れる旅でもあります。少し坂を登ったところで、標識を見つけました。津波が来ていたことを知らせるものでした。ここまで走らないと助からないのか。沿岸部で緑のない場所は、ここも被害に遭っていたから木々がないのだろうか。取り止めもなくそんなことを考えさせられました。
ゴール手前で通過した「小本川水門」は高さ6m、長さ200mを超え、国内有数の規模を誇りますが、津波はそれすらも乗り越えてきたそうです。何気ない風景にも当時の記憶が刻まれています。
あれこれ考えつつ、遊びながらも、しっかり走れて1位でした。と、初代王者であることをアピールしつつ、ゴール会場もすごいんです。
ワンウェイの旅なので、ゴールはもちろん違う場所。ゴールゲート近くにある浜の駅「おもと愛土館」では、地元のお祭りが行われていました。フィニッシュすると、そのまま祭り会場で海産物が食べられます。売られている魚が驚きの安さ。そして、美味。ゴールできた喜びと同等にテンションが上がりました。
絶景あり、人情あり、美食あり。すてきな大会でした。参加すると、みちのくにきっと恋をします。