アイルランドで職業体験。

おはこんばんちは。飯塚です。

娘が幼稚園に行き始めて以来在宅ワークをしています。

あ、紛らわしいですね。

就職したわけではなく、家の手入れを始めました。とりあえず家の前の庭の木を二週間かけて伐採し処分しました。

今までほったらかしだったのに毎日作業手袋と長靴を履き庭仕事に勤しむ私に家族もご近所さんも呆然としています。

子供の世話が落ち着いたら家の世話。

ダイエットになるし、一石二鳥(基本的にダイエットの事しか考えてない)。

落ち着いたらまた報告します。

庭に落ちているリンゴ。皮が嫌いな蜂たちは中身だけ擦って食べる、ということを知る田舎暮らし。

2016年、アイルランドで会社勤めをしてました。

アメリカのIT企業、アイルランド支社に契約期間のみで就職が決まった。

勤務地は市内の中心地のビル。

入社して半年はここに通うことに。

アイルランドで第二の市、とはいえコンパクトな作りの市内。

オフィスはどこに行くにも便利で買い物やランチもいつでもできて本当に便利だった。

ところが、途中から勤務地が本社に変わった。

市の中心地から車で5分ほど、だけれどかなり治安が悪く、同僚は本社近くのスーパーマーケットに行こうとしたけれど駐車場からして異様な雰囲気で結局怖くて車を降りられず、何も買わずに帰ったそう。

この近辺の家々は荒れていて道ゆく人やバスに乗車する人の歯が溶けてたりした(原因はドラッグ)。住宅地なので大抵の人は普通だし幼稚園や公園もあるけれど「怖くて住みたくない」と毎日思いながら行き来していた。

おそらくこの会社に勤めなければ二度と行かないエリア。

仮に我が子達があのエリアに家を買う、または賃貸で住む、などと言えば全力で止める、というか普通の感覚があれば住もうと思わない。そんな場所。

ダイバーシティ、そのもの。

年齢層は若く、20代、30代が大半。とはいえもちろん40代50代の人もいる。さまざまな国籍の人がいて会社の公用語は英語だけれど、イタリア語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、中国語そして我々チーム日本語が飛び交うオフィス。

天才や優秀な人、モデルのような美男美女や雑誌から出てきたようなオシャレ番長もいる一方、耳を疑うような変態話や、いわゆるThe オタクも多い。

会社の雰囲気は明るくてとても良かった。

派閥や面倒な人間関係はない、風通しの良さ。もちろん個々に好き嫌いはあるのだろうけれど、いわゆるパワハラなどはない。

一方で一緒に仕事をするシンガポールのマネージャーや上司(日本人)はこちらのマネージャーより陰険だなぁと思い、日本人っぽいとも感じた。

11カ月でマネージャー(上司)も確か4人変わったけれどみなさん優秀で人柄もいい人ばかり。

特に最後に数ヶ月マネージャーだったドイツ人の男性は前評判がとても良く、実際に素晴らしい人で。

初日と最終日に自分で焼いたケーキを部署員に持ってきていた。仕事は厳しいけれど嫌な物言いはしない。

私含めた同期の契約終了時には職探しの相談もかなり親身になっていた。

彼も実は退職し、ドイツに戻った。5年前くらいに休暇でこちらに遊びに来た際に同僚宛に連絡があり皆でご飯を食べに行った。

久しぶりに会い仕事抜きで皆でお酒を飲みながら食べるご飯は美味しかった。真面目で面倒見がよく家族思いで仕事もできる人でした。

優秀な人と出会える職場は刺激になる、と今思い返しても改めて思う。

ファシリティ

オフィスにはトイレの他になぜかシャワーまであった。私はシャワーは使った事はないけれど使う人はいるようだった。ヨーロッパの人、飲みに行く前にシャワー浴びるのが一般的。

給湯室には冷蔵庫とコーヒーメーカーがあり牛乳含めて無料。

本社にはスポーツジムが併設。同期は使っていたけれど、家で家族が待つ私にはジムを使う時間の余裕などなかった。

食堂の料理はレストランレベルで美味しく、しかも値段は市場の半額。

本社のオフィスの食堂はいくつかあり、イタリアン、ヨーロピアン、中華、と別れていた。イタリアンにはピザ窯があり本格的。

また寿司やオイスターバーがあり、実は私の夫はここの寿司コーナーにリクルートされて働いていた。

夫氏、ファーマーズマーケットでお寿司売っていたらA社の食堂の会社でリクルートされて働くことに。(今は寿司屋は廃業)

パンやサンドイッチ、サラダやケーキも揃い格安なため、社員は持ち帰り用に買って帰る人もよくいた。

とはいえ、多くの社員はランチは家から持ってきて電子レンジで温めて食べていた。

雇用は社員だけではない。

セキュリティは厳しい。

社員証をかざして出入り口のゲートを通る。どのフロアに行くのも社員証がいり、本社は駐車場のゲートもそれが必要。

セキュリティガードの人も多数。社員6000人、その他に食堂や清掃、セキュリティの雇用も1000人近いと言われていた。

24時間365日働く人がいるオフィス、セキュリティや清掃員も交代で勤務している。

食堂も土曜日は開いていた。

会社も社内恋愛推進派、だけど。

何かで聞いた事があるのが「社内恋愛や社内結婚があるのは日本だけ」

そんな訳あるかー!

社内恋愛も社内不倫も世界中であるに決まっている。「ラブ・アクチュアリー」観ました?

1日の大半の時間を費やすオフィスでラブが生まれるのはごく当たり前の事です。

会社ではハロウィンやクリスマス、セントパトリックスデーに大々的に金曜日や土曜日にどこかの会場を借りてパーティーなど開催されたり。

既婚者で子供もいる私は参加しなかったけれど、独身者(既婚者も?)にとってはこのイベントで普段接する事がない他部署の人達と出会えるチャンス。

社内で知り合い結婚した人やお付き合いしている人、かなり多いと感じた。

ただし脈がない人を執拗に追うと痛い目に。

実は私の真後ろに座っていた男性、ある日突然解雇されたのだ。

マネージャーに呼び出され数分後に席に戻り、10分ほどで私物を整理して同僚に挨拶も出来ないままセキュリティガードに連行されて追い出される。

社員証はもちろんその場で没収。

解雇理由はセクハラ。事前に勧告は何度かあったものの、改善が見られず最終手段に。

彼が連れ出された瞬間にセクハラ対象にされていた女性陣複数が歓喜の表情で「ざまあー」と言わんばかりだったのも忘れがたい。

セクハラ=執拗なお誘いだったのか。

対象の女性は確かに女優のような美女。私も入社日から彼女の美貌にハッとさせられた。

仕事も出来て優しい。私も男性ならば彼女に惚れたかもしれない、とパソコン越しのキリリと美しい真剣な眼差しに見惚れつつ解雇された男性を思った。

セクハラやパワハラは日本よりはるかに厳しく罰せられ、取り返しがつかないことになる。

ちなみに解雇されたのは中国人男性だけれど「自国の感覚」が欧米だと「レッドカード対象の可能性あり」、という現実も知る必要がある。

カスタマーサポートとは。

カスタマーサポート=コールセンターではない。

会社の日本人向けコールセンターは日本国内にある。

私のいた部署は製品に関するお問い合わせや不満を聞くのではなく、配送に関するサポート。

それゆえに製品に関する知識はゼロでも問題はない。

当時はシンガポールとアイルランド、アメリカで24時間体制でカスタマーサポートをしていた。

時差がある中で週に一度はシンガポールチームとテレビ電話でミーティングしたり、チャットでお話したり。会ったことはなくてもちゃんとチーム感はあり。

アイルランドの日本人組は仲もよかったかな、と思う。だいたい家族がいる人が多いので深入りしなくてちょうどよかった。

二週間の研修期間、かなり覚える事が多く、数多くのデータベースを使いこなすので最初は難しいと感じた。

コールセンターではない、ので基本的に電話はかかってこないけれどたまに顧客に電話をかける必要もあり。

面倒くさい人や横柄な人、なかなか切らせてくれない人と当たる事もあるので基本的には誰もが電話はしたくなかったけれど。

だいたいアイルランドから電話かかるとビビられる。スマホなどは着信に「アイルランド」と表示されたらしく、「え?アイルランドなんですか?」などと驚かれた。

また、ある時は運悪くいかにもハラスメント系に当たってしまい

「上司をだせ」

などとゴネまくるので

「日本語対応可能な上司はおりません」と説明すると

「あ、なに?お前もしかして日本で落ちぶれて中国とかタイのコールセンターしか働き口がない系の人?そうだろ、お前タイなんだろ?中国?言えよ、どこの安い国で落ちぶれちゃってんの?どこか言っちゃいけないのかよ!なんだよ!言ってみろよ!!」

としつこく絡まれたので

「アイルランドでございます」

と告げるも相手は無言になってしまった事もあった。

ま、あの感じだと

「ア、アイルランドってどこ⁇」

だったのかなぁ、と。

いや、本当コールセンターの人は偉いな、と思う。病んでて話し相手がいない曲者相手の電話、まともに聞いてられないよな、と思うことしきり。

ちなみに、私の部署には一人だけアイリッシュの女性もいた。

日本の大学に留学経験ある彼女、生粋のアイリッシュなのに日本語の読み書き堪能、メールも打ち、お客様に日本語でしっかり敬語で電話もしていたのは今思い返しても「天才だ」と断言できる。

今思えばあれは職業体験

11カ月の契約社員、契約が切れる時と同じくアイルランドからの「日本人向けカスタマーサポート部署」がなくなる、という動きになり契約更新はなく。

同時に入った二人と共に会社を去る事に。

ドイツ人の上司は私の同期たちにかなり親身に就職先の相談、社内の他部署の空き状況なども調べたりしていたようだった。

けれど私は週に5日間フルタイムで家を空けるのは無理だな、という限界でもあり。

しかも途中から夫も同じ勤務地(彼は食堂の寿司コーナー)で働く事になり、当時2歳だった長男の子育てはほとんどできず義理の母にかなり負担を強いていた。

義理の母からは「正直このままの状況は無理」とも言われていたため、私は就職先は探さず家にいる事にした。

仕事内容も会社も別に嫌ではなかったけれど、生まれて初めてのフルタイムのデスクワークは物凄く苦痛だった。日本の会社員生活は営業や宣伝部門、デスクワークと外周りが半分づつっていうのが自分には凄く合っていたのだ。

ずっと座ったまま、また車通勤で運動不足で体重も8㎏増えてしまった。

というわけでわりと未練なく契約期間を終了。

まさかアイルランドでIT企業で働けるなんて思わなかったし、知らない世界が見られて楽しかった。日本人の友人もできた。

ただ、当時、夫婦二人で働いて子供の成長などまともに見られず、生活にも余裕がなく、義理の母に大迷惑と負担をかけて、申し訳なかったなぁ、という記憶。

今の生活の方が何倍もいいのだ。

本当は笑えるネガティブな話もなくはない。それは友人とのお酒の席でネタとして使っている。

シリコンバレー系企業で働きたいけど日本ではなかなか狭き門の方、実はアイルランドに来るという選択肢もありますよ、参考まで。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。