降り続く雨、こぼれる涙

僕は能登に向かっていた。

イベントの集合時間にはまだ余裕があった。ちょうど見つけたコンビニに立ち寄る。

買い物を済ませるまでのわずかな時間で、雨は勢いを増していた。

車までの数メートルを駆け足で戻る。運転席に座り、雨で濡れた顔を手でぬぐう。

コーヒーに口をつけながら、スマホで雨雲の動きを確認。目的地の北側は真っ赤に染まっていた。

もっとも激しい雨を示す色だ。それが断続的に連続していた。線状降水帯だ。

車を運転するにしても、強雨が続いてしまうと視界が利かない。少し時間を遅らせて、雨足が弱まりそうな時間帯に到着することにした。

ワイパーが絶え間なく右に左に動き続けている。空模様が落ち着くのを見計らって再び動き出したはずが、雨は激しさを増し、絶えずフロントガラスを打ち付ける。

道路が川に

目的地まであと10分弱になったところで、異変が起きていた。

信号機が暗い。そして、路肩に続く車の列。なにかの渋滞かとも思ったが、無人のまま置かれた車もあった。その横を抜けて列の先頭まで徐行する。

車が途切れている地点が見えてきた。何人もが周辺に立っている。そして知る。

道路が消えて、川が横たわっていた。突如として現れた濁流に、呆然と立ち尽くしていたのだ。

車で渡ろうにも、見るからに激流だ。木や漁具が時折流れてくる。泥水のせいで水深がわからない。

右に左に車を走らせ、迂回路を探してみるが、どこも同じような状況だった。

水が引くのを待とうと車を止め、また雨雲の様子を見る。数十分前に見た時よりも、真っ赤なエリアが広がり、南側にも伸びていた。

僕がいる地点もしばらくすると赤色に包まれる予報だった。来た道のどこかで川が氾濫するか、土砂崩れが起きると身動きが取れなくなる。イベントを主催する友人に連絡を入れ、すぐに引き返すことに決めた。

ワイパーがまったく意味をなさない。フロントガラスは間断なく豪雨に見舞われた。棚田の斜面は滝になり、排水溝からは水が噴出している。土が露出した崖地のそばでは、赤土が道路に流れてきて不気味に広がっていた。

すべてが異常だ。そして、2018年の西日本豪雨の記憶がよみがえってきた。あの時もこんな雨だった。

視界は悪いまま。前方はほとんど見えない。ワイパーは動き続ける。それでも拭えない。

僕の目からは涙がこぼれる。鼻水が垂れ、嗚咽が漏れる。

この地で起きていること、これから奥能登で起こることを思うと、やりきれない気持ちが込み上げていた。

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能登半島の豪雨に打ちのめされ、しょんぼりとふさぎ込んでいました。書くことで立ち込めていた暗雲が少しばかり晴れたように思います。書くこと、大事。

告知

当日に行こうとしていたランニングイベントは中止になりましたが、友人がふたたび開催するとのこと。走ることに興味がある方も、ない方もご覧ください。

すずぐるっとマラニックリターンズ

開催日 10/20(土)
集合場所 野々江総合公園
距離 37kmくらい

前日の19日は、希望者は現地でボランティア活動、懇親会にも参加できます。
宿泊先、持ち物などの詳細はイベントタイトルをクリックしてご確認ください。

わかおかの山日記

(隔週水曜日更新)
山を走ったり、歩いたりするのが好きです。よく忘れ物をします。そんな日々を記すライターでランナーです。

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