自分を甘やかしてあげたい日のおやつ。

クレープが好きです。
小さな頃からホットケーキやパウンドケーキも好きでしたが、圧倒的にクレープが好きでした。

生クリーム、チョコレート。ジャムやアイスクリームが入ったものも、もちろん美味しい。のですが小学生の時、母がオレンジを使ってクレープシュゼットなる食べ物を作ってくれた時には、こんな素晴らしいおやつがあるのかと驚きました。柑橘の甘酸っぱさと滑らかな生地のほんのりした甘さの調和。今でも初めてクレープシュゼットを食べた時の感動を超えるおやつには、なかなか出会ったことがありません。

「近所に新しいクレープ屋さんができたよ。」ママ友のあやちゃんが教えてくれました。打ち合わせと打ち合わせの合間の1時間。ワークショップ用の食材の買い出しに行く予定を入れてはいたものの、ちょっと小腹が空いている。朝から動きっぱなし。買い物は後にして、クレープを食べに行くことにしました。

朝、散歩をするコースに新しくできたオーシートーキョー(ØC tokyo)。目黒の「Kabi(カビ)」を経て、コペンハーゲンでも活動をされていたシェフ田井將貴さんが考案したレシピによるクレープ。コペンハーゲンにあるカフェ・Prolog Coffeeのコーヒーやグラスワインやビールも楽しむことのできるお店です。

大山緑道の緑を眺めることのできるテラス席が空いていたので、まだ少し暑い時間でしたが外に座ることにしました。シュガーバターのクレープとアイスコーヒーを注文して待っていると、いい風が吹いてきた。最近、ぼーっとする時間を持てていなかったなぁ。目の前を通り過ぎる自転車のシャーっという車輪の音を聞きながら、緑や木漏れ日を眺めてクレープを待つ。

少しすると、長方形に切られたバターが名札のように置かれたグレーのお皿がやってきた。むっちりした生地はキャラメル色。冷えた状態のニュージーランド産グラスフェッドバターもおいしそう。1/5をナイフで切って生地に乗せ、バターは伸ばさず、生地と一緒にフォークでさして口に運ぶ。クレープの間にはさまれているのは喜界島のブラウンシュガー。つぶつぶの食感とバターの塩気が、しっかりした生地のアクセントになっている。生地に使用しているのは福岡の中強力粉ミナミノカオリという粉なのだそう。シンプルなのだけれど、自分に小さなご褒美をあげたい時に食べたいクレープ。大満足の味でした。

お皿がきれいになって、そういえばクレープの起源ていつ、どこで始まったものなのだろうと検索をしてみるとフランスのブルターニュが出てきました。もともと、土地が痩せていて雨と霧の多かったフランスの北西部では、日照時間が少なく、小麦の生産が困難だったそうです。荒地や天候の優れない場所でも作りやすいそばが栽培され、そば粉を使ったガレットが作られた。そんなガレットが宮廷料理に取り入れられ、そば粉に替り小麦粉が使用され、生地に卵や牛乳、バターや砂糖などが加えられ変化をしていったそうです。薄く焼いた生地がちりめんという布に似ていたことから「クレープ(ちりめん)」と呼ばれるようになった。

調べていくうちに、なんとも嬉しい偶然がありました。フランスには「クレープの日」があるそうなのですが、その日はクリスマスから数えて20日目。ラ・シャンドールと呼ばれるキリスト教の祝日。聖燭節と呼ばれるこの日は、キリストの母である聖母マリアが出産後にお清めの儀式を受けた日で蝋燭を灯してその日をお祝いしたのだそう。

冬が終わり、春に向けての農作業を開始する時期でもあり、農業に従事する人々が季節のはじめの種まきの後に、前の年に余った穀物を粉にし、新しい年の豊作を願いクレープを焼くという風習もあったのだとか。丸くて黄金の色をしたクレープは、太陽を想像させる食べ物として、春の到来と豊穣を意味し、世界の光として存在するイエス・キリストに、太陽と同じ色と形をしたクレープを捧げた。

地域の風習とキリスト教の儀式が相まって、今日の「クレープの日」となった。クリスマスから数えて20日目にあたる日は2月2日。自分の生まれた日がクレープの日だったことを、美味しいクレープを食べた日に知ることとなりました。今までも特別に好きなおやつだったけれど、この先クレープを食べる時には、親近感とちょっとしたありがたさを感じることになりそうです。

オーシートーキョーのクレープ。自分にご褒美をあげたい時、ほっとしたい時にぜひ、オススメです。

今週も1週間おつかれさまでした。まだまだ暑い日が続いておりますが、3連休楽しくお過ごしください。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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