手を動かす。
高校生になった子どもの初めての学園祭。2日間の一大イベントのために、夏休みも返上で準備をしていた子どもたち。
軽音楽部と吹奏楽部に入っている息子に出番時間をリサーチ。
軽音楽部は部員も多いため、出演にあたってはオーディションがあって、今回息子のバンドは前年ながら出演が叶わなかったようで、吹奏楽部の演奏のほうに力をいれるよう。
クラスの出し物の方は?ゲームやクイズを行うクラスもあれば、2年生以上になると食べ物を提供するクラスもある。息子のクラスはお芝居をやることになったと聞いていたのだけれど、何かと恥ずかしさもあるお年頃。何の役をやるのかまでは、教えてくれなかった。1日目は午後の部、2日目は午前も午後も出演をするということまでは、聞きだすことができた。パンフレットで時間をチェック。別の学校に通う、中学校の友だちたちも遊びにきてくれるようで、わくわく張り切っている様子が微笑ましい。
母は広報係の写真を撮るという役割のおかげで、前日の準備の様子もちょこっと覗くことができた。写真を撮って校舎をまわりながら、違う学年のお子さんのお母さんと自分たちの学生時代の話になる。
あれ、高校の学園祭ってあったっけ。母校には学園祭という名のイベントがなかった気がして、検索をしてみることにした。中等科、高等科の行事のページには第53回学園祭の文字。今年4月にあった学園祭が53回目ということは、自分が在校生だった時にも、存在はしていたのだということを示している。どういうわけか、中高6年間の学園祭の記憶がすっぽり抜けている。自分の在籍していたバスケ部のところを見てみると、今年は試合を行っていたようだ。きっと以前も同じように試合を見てもらうというイベントがあったのだろう。なぜこんなにも、記憶にございませんなのだろう。
我が母校はカトリック系のミッションスクールのため、「カトリック大会」なるスポーツのイベントがあった。都内近郊のカトリック系の学校が対戦する大会には、聖書にお目見えする名前のついた学校の名前がずらりと並んでいた。こんな学校もあるんだと暑い体育館で名前を眺めていた記憶は鮮明なのに、学園祭の記憶がないのはなんでだろう。そう思いながら、初等科のページも見てみると、11月のイベントに「親睦会」という項目があった。学内ではバザーと呼ばれるこちらのイベントは初等科から高等科まで通しての全校イベントで、祭りの感じが多い強く、お客さんがたくさん来ていた記憶もある。だから学園祭の記憶が全然なくなってしまったのかなとも思う。
「親睦会」で思い出すのはとにかく食べ物。販売していた焼き菓子がとにかくおいしかった。スペインイエズス会のシスターが作った母校には、スペイン語の授業の時にだけ食べることのできるポルボロンというお菓子が存在する。「親睦会」にも購入することのできたそのお菓子は、一見するとクッキーと変わりない見た目なのだがとても繊細で、持ち上げる時にほろほろ崩れることもある。アーモンドの味がしたそのお菓子のレシピを検索してみると、あの「ほろほろ」の答えが出た。
小麦粉とアーモンドパウダーは配合は1:1。最初に小麦粉をオーブンで狐色になるまで焼くという工程のために、あのほろほろの食感になるようだ。焼き上がった粉にバターと粉糖とアーモンドプードルを混ぜ合わせる。グルテンもなく、卵も入れないので、混ぜ合わせた際の生地もぽろぽろ。ひとつにまとめ、冷蔵庫で寝かせてから焼く。食べたことのない食感のほんのり甘い異国のお菓子に魅了された初等科の自分にはすぐにカムバックできるのに、なんで学園祭の記憶がないんだろう。おいしい食べ物の記憶とつながっていないからなのか。同級生に会う機会があったら、どんなことをやったか訊いてみよう。
だいぶ話が逸れてしまいましたが、子どもの学校。ペンキをたっぷりつけたハケを手に、ベタ塗りしている男の子やダンボールに描いた文字を切り抜く男の子。細い筆を持って、丁寧に絵を仕上げる女の子など。みんなが忙しく、とにかく手を動かしていた。ほぼ完成している教室もあれば、これからまだまだ作業の残っている教室もあるけれど、PCでちゃちゃっとデザインをして、プリントしたものを貼り付けるのではない、手作りな様子がいい。ペンキの匂いも、洗ってもなかなかとれなそうなインクの色も、全部いい。そんな写真におさめながら、みんながんばれーと心の中でエールを送る。
校舎の2階にあがると、お芝居のセットを準備している息子が見えた。廊下に座って、友だちと楽しそうに話をしながら、白い紙になにやら貼り付けている。シャッターを押していると「おっ」と子どもがこちらに気づいてくれた。がんばって〜と手をあげて、教室をあとにする。
本日と明日の2日間。子どもたちにとって、長く記憶に残る2024年の9月になりますように。
今週も一週間おつかれさまでした。まだまだ暑い日が続いておりますが、どうぞよい週末をお過ごしください。