自分の人生。

8月も後半戦に突入ですね。我が家の高校生、本当に夏休みかなと思うほど毎日いそがしく学校に通っています。そして今週は、東京都高等学校吹奏楽コンクールがありました。

あんまりご飯を食べる時間がないから、お弁当は簡単なおにぎりでとのリクエスト。一度学校に登校し、楽器を積んで小平駅近くにあるホールまで行くんだそうです。

「あのさぁ、黒い細いパンツどこいったっけ」

出発直前に、どたばたものを探す。白いシャツとネクタイは用意をしていたのだけれど、パンツ問題もあったのね。足元は黒のローファー。こんなことの連続なのだけれど、「明日ローファーがいるんだよ」と前日の夕方に告げられて、探しまわった戦利品が靴箱に鎮座している。最近また背が伸びた子どもの足のサイズは28.5cm。どのこ靴屋さんでも、28cmまでしかご用意がありませんと店員さんに申し訳なさそうに告げられることの連続。こりゃまいったとトボトボ渋谷のセンター街を歩いていたら、頭の中で想定をしていなかった場所で靴屋さんに遭遇。そういえば、昔からここに靴屋さんがあったなと店に入って気付く。黒い革靴には、どれもサイズは28cmまでというメモが一緒にくっついている。一縷の望みをたくし、靴がずらりと並ぶ棚ひとつずつを指をさしながら上から順番に追っていく。中段でHARUTAのローファーが目にとまった。私が通っていた高校には指定の靴があったから、HARUTAのローファーを履いている他校の学生がうらやましい時もあったなぁ。オーソドックスな形がかわいくて、普段に履く用に買ったものがもしかしたら実家に残っているかもしれない。しばし、感傷に浸ってしまうけれど、閉店の時間が迫っている。

「すみません、このローファー28.5cmありますか?」

今回もダメかなという思いと、HARUTAさんお願いしますの気持ちを込めて店員さんに聞いてみる。

「これだけは大きいサイズがあるんですよ」と、奥から28.5cmの靴を持ってきてくださった。やったー!やっと出会えた大きな靴。子どもの学校は普段は私服なので、これからどのくらいローファーの出番があるかわからないけれど、登場する回数が多いように願いながら靴を買う。

西武新宿線に乗るのは何年ぶりだろう。実家が西武池袋沿線なので、西武線はとても馴染みの深い電車。打ち合わせ先の浅草から電車を乗り継ぎ、高田馬場で地上に出るとさっきまで強い日差しが照りつけていた空から、大量の雨が降っていた。ぱりっと乾くことを期待して干した洗濯物、洗い直しだけれどまぁいいか。野方、上石神井、子どもの頃に見慣れた駅名を通り過ぎて、20分ほどで小平駅に到着しました。駅から3分の場所にあるルネ小平の大ホール。すでに演奏を終えた子どもたちが駅に向かって歩いてくる。今頃、少し緊張をしながら準備をしているのかな。

会場は一番大きなホール。中学の時と違って、部員の子どもたちの数も多い。都大会だからなのか、大きなカメラも入っている。少しすると息子の学校の演奏の準備がはじまった。ティンパニーを運んでいる二人のうちの一人が息子のようだ。夕飯時、今回は何の楽器を担当するのかと聞いてみた。「小物をいろいろ」という短い答えに笑ってしまったのだけれど、実際演奏を見てみると、これはいろいろとしか言いようのない担当楽器の多さでした。打楽器担当の子どもたちは4人。全員が一曲の演奏の間にいくつも楽器を担当するから、打楽器のブース(という表現は違うかもしれないけれど)は忙しい。そんな姿を見ているのも楽しかった。

中学で3年間鍛えられた高校生の演奏は一味も二味も違っていて、こんなに聞き応えがあるのかと驚いた。中学の時はちょっとの間違いはご愛敬で「上手だったね」という感想が親たちから聞こえる感じだったけれど、高校生の演奏は、上手とか良いというより、しっかり音楽に集中して聞くことのできる、ちょっとびっくりなレベルアップ具合だった。

コンクール前日、小中を共に過ごした子どもの友達とママ友と久しぶりにごはんを食べました。バラバラになった高校生活。みんなの夏休みの近況を聞いて、ぐんと大人びたなぁと思う。ピザの宅配のバイトを始めたんだよ、お蕎麦屋さんのまかないが美味しくて。ピアスは自分で開けたなど。小さい頃、お泊まりに来ていた頃には川の字で寝ていた3人が、ほんとに大きくなった。

行きたい高校を自分で選び、自分の意志で自分のやりたいことをやって、親に言われて何かをするのではない、自分の人生を歩み始めている子どもたちをとても頼もしく思う時間となりました。

「宿題、全然やってない」
「夏休みの最終日にがんばるっていう、お楽しみもあるじゃん」

そんな発言からはまだまだ子どもの匂いがぷんぷんするけれど、楽しそうだからまぁいいか。

台風一過、肌がどんどん焼けていく暑さですが、空の雲は美しい週末ですね。みなさま、今週も一週間おつかれさまでした。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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