小腹を満たしてくれるもの。

長いこと空きになっていた事務所近くの物件に、新しいお店が入るようで工事が始まった。
真っ白の空間。何ができるんだろうと行き帰りに様子をのぞいていたら、肉まんの専門店がオープンしました。

近所にあるおしゃれな中華料理屋さん「REI」の姉妹店。ふかふか熱々の肉まん。冬だったら開店と同時に、迷わずお店に飛び込んでいたところ。蒸し暑い日が続いていたので、気になったまま、月日が過ぎて行きました。

先週のイベントの片付けの日に、ハコギャラリーのオーナーさんが「あそこの肉まん食べた?6分くらい待つと蒸したてを出してくれるんだよ。皆おつかれだから、よかったらごちそうするよ」と言って、さっとお店に向かう。

ごちそうしていただくなんて、申し訳ないと気になっていたので、わくわく待機。2分ぐらいして、オーナーさんがとんぼ返りで戻ってきた。「ごめん、今日定休日だった。」いやいや、いいんです。近いのでまたの機会に寄ってみます。

そこから数日後。その機会はすぐにやってきました。週末のワークショップの準備を終えて、事務所の階段を降りる。今日の夕飯は中華のリクエストがあったので、肉団子とエビチリの材料を買って帰らないと。夕飯のことを考え出したら、グーとおなかが鳴った。そういえば今日、お昼ご飯食べてなかったなぁ。肉まん屋さんの前を通って、何気なく店内をのぞくと、ちょうど店員さんが生地に肉の餡をのっけて、肉まんの口を閉じる作業をしている様子が見える。頭よりも先に手が動いて、気がつくとドアを開けて店内に入っていた。

蒸したてをひとつと、持ち帰り用にもいくつか買って帰ろう。メニューを見てみると、なんとも魅力的なラインナップ。富士桜ポーク肉まん。ただ肉まんと書かれているよりも、どんなお肉なのかが名前に入っているとちょっとだけ美味しそうに感じてしまうのは、私だけでしょうか。パクチーも捨てがたいし、キーマカレーまんは子どもが飛びつきそう。あんまんもただ「あんまん」ではなく、塩が入っているところがまたにくい。

「肉まん、パクチーまん、キーマカレーまん、あんまんをひとつずつお願いします。あと香港ミルクティもひとつ。」

「申し訳ありません。キーマカレーまんが先ほど売り切れてしまいまして。」

「そうしたら、肉まんをもうひとつ増やしていただいて、ひとつふかして頂けますか?」

「お時間6分〜7分ほどいただきますが、大丈夫でしょうか。」

「もちろんです!」

先に出てきたミルクティーを飲みながら、ほかほかの肉まんが出てくるのを待つ。しっかり甘さを感じるけれど、甘すぎないミルクティー。ごくごく飲んでいたら、灼熱の台北で喉を潤してくれたミルクティーを思い出して、香港ミルクティーなのに台湾に行きたくなった。

四角く大きな蒸し器で、どんどんふかされていくマントウたち。頭の部分がきゅうっと綺麗な螺旋を描いている。中国には点心師という国家資格があるそうなのだけれど、旅先でも点心を作る職人さんの手元を見るのは抜群におもしろい。

もわっと湯気がたって、お待ちかねの肉まんがやってきた。バーガー袋におさまった熱々の肉まん。袋の外側からも、あつあつの熱気が伝わってくる。真っ白なマントウの生地。親指にぐっと力を入れて割ると、湯気と共に上品な香りがただよってきた。たまらず、足をとめてパクリ。やさしい味の餡。なによりびっくりしたのは、餡のやわらかさ。水分の量がしっかりコントロールされている。ぎゅっと硬くなってしまっている餡もたまにあるけれど、ふんわりほぐれていく餡。そして、影の主役。ふかしたてのマントウの生地は、甘さがばっちり。持ち帰り用に買った肉まんは酢醤油をちょんちょんとつけて食べるのも良さそうだ。

夕暮れ時の暑さが少し引いた時間帯。あつあつの肉まんで代謝の上がった体。額と鼻の頭にじんわり汗がにじむ。やさしい味の肉まんにお腹と心がしっかり満たされて、坂の上にあるスーパーまで、駆け上がる元気をもらいました。

小腹がすいた時にさっと立ち寄れるお店が近所に増えるのは嬉しい。

梅雨が明けて、日差しがまた一段と強くなりましたね。今週も一週間おつかれさまでした。来週からは子どもたちが夏休みの皆様も、どうぞ楽しい週末をお過ごしくださいませ。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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