草原からこんにちは
モンゴルの250kmレースで優勝しました。草原を走っていて、つくづく感じたのは食べることでしか走り続けられないということです。
大会中は自分で背負っている食料しか取れないというルールです。重さと食事量のせめぎ合いから何をもっていくのかを選択。限られた食料を最大限に使って走ります。
食べてないと、足が重くなったり、いきなり動けなくなったり。その唐突さは夕立ちよりも突然にやって来ます。
なので、走りながらカロリーメイトをもぐもぐ。一気に崩してしまうと、むせてしまう恐れがあります。リスのように頬にためて少しずつ溶かしていくのがコツです。
筋肉の修復には材料ありき。やはり食べるしかありません。
毎日ゴールしてからは翌日のステージに備えて食べます。食事は朝にチキンラーメン、夜がカレー飯。毎日同じメニューですが、食べられるだけで嬉しくて飽きませんでした。
レース前後は楽しみとしての食を満喫。好きか嫌いかに関わらず、食事は誰にとっても欠かせません。普遍的なものだから、いろんな気づきに満ちています。
首都ウランバートルの街中で、ふと見慣れた看板を発見。冷やかしでメニューを眺めていたら、がぜんやる気スイッチがオンになって入店しました。
足を踏み入れたのは、みんな大好き吉野家。そういえば10年前にもサンパウロで同じように入店していたことを思い出しました。変わらぬ好奇心であります。
吉野家といえば、定番メニューばかりでしょと思うなかれ。
メニュー表に「MUTTON」と刻まれているではないですか。そう、羊丼です。これぞ、モンゴル。
サイドメニューのサラダと一緒に注文して待つことしばし。運ばれてきた丼のルックスに驚かされます。えっ、サラダ乗ってるやん。しかもまったく一緒やん。
これなら、ほかのサイドメニューを頼んでおけばよかったと、わずかに動揺しつつも心を安らかにして合掌。羊肉を存分に味わいます。BBQソースのようなタレと羊の風味がよく合います。
濃厚なタレに負けない羊肉のどっしりとした味わい。ふと食べながらレース中に出会った羊たちを思い出します。草原を自由に駆け回り、気ままに草をはんでいました。広大な大地に育まれた味なのだと妙に納得させられました。
写真ではサラダに隠れがちですが、実は肉もたっぷり。なかなかのボリュームでした。
デパートの食品売り場では羊肉のインスタントスープも。写真を撮ったところで満足して買い忘れたのが悔やまれます。
そういえば、大会前には中華料理店で羊肉のチャーハンも食べてました。
首都では中華、韓国料理の店が多く、それから日本食の料理店が次に来ます。ロシア、イタリア、インドなど料理店は変化に富んでいます。食べることが大好きというモンゴル人。美味しいものに関心が高いようです。ウランバートルなら好き嫌いの多い人でも食べる場所には困りません。
レース後には、モンゴル人の友人・ツェギさんがたまたま帰省していたので、郊外でハイキングした後に中心部に戻り、大学時代に通った定食屋的なスポットに連れていってもらいました。
学生価格でボリューム満点の一皿です。
牛挽肉のハンバーグに目玉焼きをトッピング。マッシュポテトとにんじんのクリーム和え。メインの白米はソースでひたひたです。個別に食べてもよし、混ぜてもよしで、味に変化がつけられます。
それはさながら「技のデパートモンゴル支店」と称されたモンゴル力士の先駆者・旭鷲山も顔負けの組み合わせの多さでした。
食前のハイキングで、モンゴルの食材を見つけたのでした。森を歩いて、ウランバートルの南にそびえるTsetsee gunに登ってきました。
ルート上に自生しているのはもっぱらシベリアマツでした。日本に来て植生の豊かさに驚いたとツェギさん。冬には−40℃を記録することもある寒冷な地域であり、過酷な環境で耐えられる植物は限られるようです。
唯一の木であるシベリアマツから取れる松の実は貴重品。食品売り場で見かけた時にはお値段の高さに驚かされました。試しに買おうという価格ではなく、手に取らなかったため、正確には覚えていませんが、1パックで4,000〜5,000円のものもあったと思います。
食という側面から、ざっと振り返ってみても、楽しくて実りの多いモンゴル遠征でした。レースでなくとも、草原を旅しながら近くの山を走るという旅のスタイルにぴったりです。次はそんな旅をしたいなあ。