しょっぱさが大事。
朝からエクセルとにらめっこをしながら、PCのキーボードをパチパチ。頭から糖分がすっかり抜けてしまった午後、買い出しついでに甘いものが食べたくなりました。
買い物の行き先は経堂。クレープ、ケーキ、アイスクリーム。選択肢がある中、検索ワードの手が止まったのはホットケーキでした。パンケーキじゃなくてホットケーキ。バターをたっぷり塗って、メープルシロップをかけたシンプルなやつ。これだ、ホットケーキでパワーを補給して、買い出しにでかけよう。
駅の北口から徒歩3分ほど。白と緑の壁が印象的なライオンズマンションの向かい側に建つ、レンガ色の建物の1階。丸みのある文字で書かれた「HOTCAKE つるばみ舎」の看板を見つけて、ターンレフト。すぐにお店が見えました。店内には2組のお客さん。レジで注文とお会計を先に済ませるシステム。メニューを見てみると、ホットケーキは1枚から選べるようになっている。バター多め、メープルシロップ多めと試しながら味わいたい。そうなるとホットケーキの枚数は2枚必要。ホットコーヒーもお願いして、注文が完了と思いきや、生クリーム、アイスクリーム、つぶあんにバナナ生クリームなどのトッピングにも目がいく。バナナ生クリームに心惹かれながら、季節のアイスクリームも気になる。「フルーツのアイス、今日はとちおとめです。」ハイ、来た。とちおとめに完敗。季節のアイスクリーム、トッピングでお願いします。
会計を済ませ、カウンターの右端の席に向かうと、左端のお客さんのところにホットケーキが運ばれてきた。決して見ていませんというふりをして、ホットケーキの存在を横目に感じながら席につく。おとなりに届いたホットケーキにわくわく。左手にフォーク、右手にナイフを持ちながら、両手を肩幅に開き、こぶしをカウンターにトントンしたくなる気分。ホットケーキはタイムマシーンのような食べ物だ。到着を待つ間の時間で童心にかえる。
新たに入ってきた3人連れのお客さんがレジで注文をしている。トッピングする?わたしはホットケーキ2枚。飲みものはアイスがいいかなぁ。注文をしながらおしゃべりが止まらなくなる感じ、おおいにわかる。
「お待たせしました〜。」
アルファベットで「TSURUBAMISHA」と書かれた、大きな真っ白なお皿。ホットケーキの上にはどんぐりの焼印。つるばみ舎のつるばみとはなんぞや。漢字で書くと「橡」。クヌギ、またはその果実のことを指すのだそうだ。つるばみ色という色もあって、どんぐりのかさで染めた色の全般をさす。ベージュ色のどんぐりのかさで染めることのできる色は、暗い灰色から青茶色まで幅広い色が出るのだそうだ。
ホットケーキに欠かせないバター。ホットケーキの上に乗って運ばれてくるのもいい。小皿に分けてくれるのものいい。つるばみ舎のバターは別皿スタイル。大きめにカットされているのが嬉しい。まずはナイフでバターを半分に切って、ホットケーキの上に乗せ、フォークで全体に広げる。残り半分のバターをどうしようか2秒だけ迷ったけれど、2枚のホットケーキの間に挟み、溶けていくスピードはホットケーキにお任せすることにした。まずはバターだけでホットケーキを楽しもうと、4等分。切ったところで、やっぱりシロップもかけたくなった。
褐色の濃い目のメープルシロップ。ピッチャーを傾けると、予想よりもゆっくりとホットケーキに落ちていく。粘度が濃い目のシロップをぐるっと1周させ、4等分したホットケーキのひとつをさらに半分に切ってフォークを刺す。円すいの中心はメープルシロップが染みていて、外側はバターの照り。メープルの部分をまず一口。シロップの甘味が口の中で開いていく。生地の密度も最高だ。円錐の周りのほうを口に入れると、バターの旨味とほんのり感じる塩気。ホットケーキを食べる時、メープルシロップの甘みや生クリームのコクに舌が向きがちだけれど、このしょっぱさがないと甘みがぼやっとしてしまうんだよね。ホットケーキにはバター。バターのしょっぱさが必須だ。それにしても、このバターおいしい。追いバターをしたくなる旨さでした。
バターの役割の偉大さに気を取られて、しばしアイスクリームの存在を忘れていた。トッピングを注文した時には、いちごのアイスをホットケーキにのっけて食べる、楽しい想像をしていたのだけれど、これは別々がいい。アイスはアイス、ホットケーキはホットケーキで食べることにしよう。とちおとめのアイスクリームに甘酸っぱいソースがかかっている。トッピングにしてしまうのはもったいない、1品で完成のアイスクリーム。ホットケーキの食する間の箸休めのようにアイスクリームをはさみながら、あっというまにどちらも完食。コーヒーを飲むことを忘れるくらい、夢中になってしまうホットケーキでした。
2012年ビルの老朽化で閉店をした、神田須田町のフルーツパーラー万惣。苺のパフェやフルーツのポンチもおいしかったけれど、やっぱり注文していたのはホットケーキ。若い頃、万惣の近くで勤務をしていた母が好きだった店で、母に連れられて足を運び、前職でも仕事やプライベートでホットケーキを食べに行った思い出のあるお店。
惜しまれつつなくなった万惣の流れをくむ店が、現在都内に4つ存在するそうで、ここ経堂のつるばみ舎もその中の1店舗なのだとか。蒲田のシビタス、日本橋の花時計、赤坂のFru-Fullにもいつか行ってみなければ。
自分ご褒美のつるばみ舎のホットケーキ。しょっぱ甘い、心と頭に元気をくれる一品でした。
バラの花のピンクや黄色であふれていた街の色は、いつの間にか紫陽花のスカイブルーや紫色に変わってきました。今日も暑くなってきましたね。みなさま、どうぞたのしい週末をお過ごしくださいませ。