スタンプ一期一会
Tシャツなどにスタンプを押して、能登半島地震の復興支援につなげる「knot」プロジェクトを始めて2カ月が経ちました。北は北海道から南は沖縄まで、各地で押しています。
その勢いたるや破竹の押し相撲で電車道をゆくがごとし。と、威勢よくいきたいところですが、いまだに緊張します。
小心者
手渡されたTシャツが使い込まれていると、それはきっとお気に入り。思い入れある1枚で失敗は許されません。真新しいものであれば、汚していいのだろうかと自問自答。自分でも呆れそうになりますが、根っからの小心者です。
当然のことながら、スタンプは1回勝負。押し損ねてもやり直しはできません。
覆水盆に返らず。インクも返らず。毎回が大勝負です。
勝負所で手が震えていたり、動作がぎこちなかったりすると「こいつ、大丈夫?」と不安を与えてしまいます。
こちらの緊張が周囲に伝わると、周りも緊張してしまい、それで自分がさらに緊張するという地獄のようなループが生まれます。そうならないように、内心では動揺しつつも、表面上は平静を装います。
落ち着いてみえたとしても、たぶん目が泳いでいます。そんな時は何も言わずに温かい目で見守ってください。
一期一会
ドキドキするのをひた隠し、押す位置を確認したら、両手でスタンプを構えます。すると、静けさが訪れ、唐突にイメージが浮かびました。
茶席のような静寂。そういえば、茶道の精神といえば、一期一会。そう、この1回は一生に1度なのだと連想してしまいます。
スタンプを押す直前は、緊張感が最高潮を迎えるのに、自分自身にプレッシャーをかけてどうするのだ。茶道をイメージしたのがよくありませんでした。
得意なことを想像しようと、ランニングで考えました。
静寂に包まれた競技場。その瞬間が訪れるのを息を殺して見守っています。思い描いたのは100m走のスタート直前でした。
長距離走であれば、多少の失敗があっても修正できますが、短距離走ではスタートからフィニッシュまで1度たりとも失敗が許されません。選手も、観客も、号砲がなる瞬間に向けて、すべての集中力を傾けます。
結局のところ、ランニングを想像したとて、緊張を強いられるイメージでした。
緊張に耐えるのもしんどくなり、覚悟を決めたら、息を止めてスタンプをえいやっと押し込みます。あとは祈るのみ。
仕上がりは、きれいにプリントされていたり、いい具合にかすれていたりとさまざまです。
Tシャツが乾くのを待ちながら、毎回違った風合いになり、どれもいいなあと自画自賛。同じスタンプを使っているのに、まったく同じプリントにはなりませんし、再現することもできません。シャツの生地による違いもあれば、インクの乗りや濃淡が異なり、表情が変わることもあります。その小さな差異が1回きりの面白み。スタンプの一期一会です。
引き続き
4月以降も引き続き、knotプロジェクトを続けていきます。スタンプを押せる台と1畳ほどの空間があれば、どこでもできます。各種イベントで狭小スペースがございましたら、出店させてください。
また、3月からは一般社団法人TLAGの活動に加わり、被災地ボランティアとして現地を訪れて、家屋から家財道具を搬出、屋内の清掃などに取り組んでいます。興味を持たれた方は、SNSなどで若岡までお気軽に連絡ください。