10周年。

おはこんばんちは。飯塚です。

バレンタインデーでしたね。

アイルランドでは(ヨーロッパ?)男性が女性にプレゼントをあげる日です。

スーパーもピンクにバレンタインのディスプレイがされて。

花束も店頭にズラリと並び、男性陣は花束を買い求める姿をよく見ます。

スーパーのバレンタイン用ディスプレイ。チョコレートもありますが男性から女性に、です。

ちなみに私は今まで夫に一度も花束はもらった事ないのですが。

2014年2月12日に結婚式を挙げました。

そんな私達ですが、本当は結婚式の予約をバレンタインデーにするつもりでした。

単純に「結婚記念日を忘れないだろうから」という理由で。

ですが、もうバレンタインデーは予約が埋まっており、仕方なく若干ずらして10年前の2月12日に式を挙げました。

今年、結婚10周年を迎えました。

せっかくだから、と夫が義理の両親に子守をお願いしてくれて、週末に近場に旅行に行ってきました。

日本でこういうのは非難されがちかもしれません。

アイルランドだと子供達を家族に預けたりシッターさんにお願いして夫婦だけで飲んだり出掛けたりするのは、ごく普通の事。

行き先は車で2時間の小さな町、二泊三日の滞在。

子供達連れて外食はあまりしない我が家。外食費は高くつのに子供達がいるとワチャワチャ落ち着かなくて味も分からない。

美味しい外食は夫婦二人で食べられてこそ。

と言うわけでとりあえず二日とも町の中で良さげなレストランを見つけて入り大正解。

1日目は疲れていて早い夕飯、そのあと飲んで8時過ぎには宿に戻ったけれど、二日目は夜中まで飲み過ぎて。

ビールを飲み過ぎた夫は二日酔いになっていた。

1日目は私は早々とジンジャーエールに切り替え。

日本だと旅行に行くと「何食べたの?」と聞くけれど、こちらでは基本的にはその質問はない。

朝ごはん。夫は必ず「アイリッシュブレックファースト」を頼むけれど私はスモークサーモンとアボカド、ポーチドエッッグトースト。付け合わせの「自家製ピーナッツ辣油」が美味。

代わりに聞くのは「天気」

今回はまあまあ。多少の雨は降ったけれど、ドライブした先の遊歩道は普通に歩けた。

夫が16歳の頃にカヤックのインストラクターをしていた場所だそう。天気雨が多いアイルランドでは虹を割とよく見ます。

久しぶりに助手席に座れたおかげで車窓も堪能できたけれど、西のダイナミックな景色にはいつも魅了される。

とにかくどこも岩だらけ。

こんな岩ばかりのところじゃ何にも育たない。

その中で草がポツポツ生えていて。

農作物は育たないし家ももちろん建てられない。

今でこそ世界のGDP、アイルランドは上位だけれどかつては貧しい国だった。アイルランド映画のテーマは「貧しい祖国を離れて他国での成功や幸せを願う話」ばかり。

寒い不毛の地、漁業と酪農が支えだったのも納得。

この岩場の中で羊たちが草を喰みながら車を横見する。

この冬は誰の服も買わないと思っていたけれど。

観光地にはアランニット土産屋が必ずあり、観光客はだいたいここでお金を落とす。

夫もお気に入りの厚手のニット、着過ぎてずいぶんくたびれできたのでここで新調することに。

夫はお洒落には無頓着どころか服を買うのが大嫌い。流石にパンツや靴は試着しないと買えないので自分で買うけれど、それ以外は私が買うものを何の不満もなく着る人。

そんな彼が自分で厚手のニットを買って喜ぶどころか「あー、自分で服買っちゃったよ…」

って落ち込むのはなぜだ⁈

町が結構可愛くて雰囲気よかったのに写真撮り忘れた。こんな楽器屋もあります。アイルランドといえば「音楽」

私は今シーズンは冬服は購入せず。昨年は靴もコートもニットもずいぶん買った。今年は代わりに日本で買っだ毛玉取りでニットをきれいにトリミングできて満足。

ちなみにお下がりをいただいているおかげで子供達のも殆ど買わずだ。

長い一人旅をしてから私は洋服を本当に買わなくなった、いい傾向。

誰かが見ている。

「誰かに会った?」

これも旅の後に義理両親にされた質問。

というのもアイルランドで旅をしたり、食事に行くと必ず、と言っていいほど知り合いや近所の人に会うから。

夫と昨年西の海沿いのホテルに滞在した際にはご近所さんに、夏にセーリングをした際には親戚のおじさんに。

その度に夫と話す。

「不倫や浮気なんかしてもすぐに見つかる。人間CCTVがそこら中にありすぎる」

と。

今回は初日の夕飯を食べたレストランで起きた。

レストランの夜ごはん。私はビーフの肩バラ肉煮込み、夫はビーフウェリントンを。アイルランドのお肉は美味しいのです。

厨房から出てきたシェフが客席を歩きながら

「こんにちは!」

と店内のお客様に挨拶しながら通り過ぎた。

しばらくするとそのシェフ、また出てきて今度は私の横に座り、

「去年春にBaltimore に泊まらなかった?パブで隣に座って話したの、覚えてる?」

え〜!泊まった。あ、この人、確かに話した。え〜、あの時の!

と、驚いた。

「やっぱり!あれ、ちょうど一年前じゃない?今日はこっちまで足伸ばしたんだね。俺らはあの時職場のスタッフで行ったんだよ。ほら、あのウェイトレスの人もその時一緒にいたし」

ブロンドのきれいなボブカットの女性、確かにそこにいた記憶がある。

シェフの男性とはその時料理談義で盛り上がった。シェフをしてる、と話していた。「日本にはいつか必ず行ってみたい」とも言ってたな。

「この店を選んでくれてありがとう。楽しい夜を!」

と席を立つ。

「前菜の鯖の刺身、とっても美味しかったですよ」

と声をかけると、ニコリと微笑み厨房に戻った。

シメサバの前菜。最近どこでも見かける「日本料理っぽいもの」ここのはとても繊細で日本人も大満足のクオリティ。

夫は苦笑いしながら

「ほら、やっぱり誰かに会うんだよ。にしても、すごい確率だな。二人で出掛けて新天地で飲んでた時に会った人と普通会わないよなー。それにあの人、記憶力よすぎるだろ」

世の中は本当に狭い。

誰かが常に見張っている国アイルランド。

浮気なんかしたらすぐに目撃されて家庭が危機に晒されるのは火を見るより明らかだ。

更に危機感が増した結婚記念旅行。

というわけで、このまま更に10年頑張ります。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。