勉強with餃子。

and recipe山田の連載企画「週末の酒がうまい、BRUTUSの聞くレシピ 」の収録時、水餃子が美味しいよと聞いた新丸子の瓦奉店。

水餃子を一緒に食べるなら、やっぱりこの人。わたくしの中国語の先生でもあり、SAKRAJP火曜日の担当でもあるニホンコンに、餃子情報をゲットしたその日にLINE。 次のレッスンは新丸子でどうでしょう。ランチに餃子付きで。

フットワークがふわりと軽いニホンコン老師からは、「もちろんOK」と返事がすぐにやってきて、今週二人で新丸子に行って参りました。

ニホンコンに最初に会った時も、「初めまして」で餃子を食べた。堀切菖蒲園にある「哈爾濱餃子(ハルビンぎょうざ)」がおいしいよと教えてくれたのもBRUTUS2020年12月号「餃子♡愛」の特集でライターを担当していた友人。同じ号に新丸子の瓦奉店も掲載されていました。

朝は韓国語のレッスンをして、12時前にお店に到着。ビルの赤茶色の煉瓦に、瓦奉店のミントグリーンの壁が映えるたたずまいの美しいお店。黒板に書かれた「水餃子」の流れるような文字にお腹が鳴る。今年の干支である辰。龍の絵と「昇竜」の文字が描かれた黒板が横に並ぶ。

中国の人々にとって龍は好運、財産、幸福をもたらしてくれるもの。十二支の中でも最も縁起の良い干支とされている。中国語の再勉強のために、毎日開くアプリHello Chaineseにも、龍を意味する「龙(lóng)」を使った名前の龙大(ロンダ)という名前の男の子が出てくる。ベトナムでも出会ったフルーツ、龙眼(lóng yǎn)にも龙=龍の文字が入っている。茶色い皮を剥き、白い実を食べる、ライチのサイズが少し小さくなったような果物。乾燥させたものは生薬としても使う。普段の生活の中でも、血のめぐりが悪いなと思ったり、体調が悪いと感じたら龙眼をお粥に入れたりお茶に入れたり。龍の目のような形をした果物の効能には、文字の持つパワーも一緒に入っているのかもしれません。

おもしろいのは蛇口を意味する中国語=水龙头(shuǐ lóng tóu)にも龍が入っていること。头は頭を意味しているから、蛇口は「水の龍の頭」。お風呂場、台所、洗面所。家を守ってくれる龍が、部屋のあちこちにいるってことになるんですね。

龙头=龍の頭といえば。その業界をリードする会社・リーディングカンパニーのことを中国では龙头企业(lóng tóu qǐyè)という。企业は企業の意味。天高く、景気良く昇っていく会社という意味の言葉にも龍が存在している。

縁起のよい「龙=龍」の入った単語の語彙。辰年であるこの一年に、もっと増やしていこう。

龍の看板でだいぶ脱線をしてしまいましたが、今日の気になるものは瓦奉店。瓦奉店の餃子でございます。

以前ニホンコンと哈爾濱餃子に行った時にも聞いた中国のリアルな餃子の話。日本だと餃子といえば焼き餃子が一番に頭に浮かんでしまうのですが、中国で餃子といえば水餃子。トマトや青菜など、野菜だけが入った水餃子もあるとニホンコンに教えてもらいました。中国東北地方、満洲方面がルーツだという瓦奉店のおすすめはもちろん水餃子。なのだけれど、メニューには焼き餃子も揚げ餃子もあるではないですか。ランチセットもあるけれど、ここは迷わず単品注文。お腹の具合はどう?せっかくだから全部味見してみたいよね。

「すみません!水、焼き、揚げ一皿ずつ。あと青島ビールをください」

餃子談義をしていると、一番乗りでやって来たのは焼き餃子。ふっくらプリンとした焼き餃子が6つ、お皿に乗ってやってきた。皮の味をしっかり楽しめる瓦奉店の焼き餃子は、一度茹でたものを焼くという手の込んだ一品。ニンニクの入っていない、野菜の甘みがしっかり感じられる餃子でした。

その後にやってきた本日メインの水餃子は海老入りを頼む。もっちりした皮がまずうまい。皮の甘味を噛み締めていると、餡の香ばしさがその次にやってくる。「海老入り」のえびの答えは干しエビでした。噛めば噛む程、干しエビの香ばしい風味が口の中に広がる。その合間合間に白菜の甘みと豚肉の旨味。とってもきれいな味の水餃子。

ビールをぐびっと飲んだら、3皿目が登場。レタスの上に乗った揚げ餃子。もっちりの皮のはしっこが、油でカリッと変化して、また違った食感が楽しい。こちらの具には椎茸が入っている。椎茸好きです。そんな餃子さんへの告白が、思わず口からこぼれる餃子。醤油、酢、ラー油を自分なりの配合にしたタレと、赤ワインを使ったソースの両方で揚げ餃子を味わう。赤ワインのソースをつけて食べると、ビジュアルは間違いなく餃子なのに、洋食を食べている気分になる。餃子でこういう楽しい味変ができる選択肢は、今まで思いつかなかった。

「もうお腹いっぱい?せっかくだからもう少し何か頼む?」

イケイケのニホンコンの発言に大きくうなづく。箸休めのザーサイと薬膳豆豉炒飯を追加で注文。先にやってきたザーサイをコリコリ食べながらチャーハンを待つ。白い花のような縁どりのお皿に乗ってやってきた炒飯には、枸杞の実が乗っていた。薄い茶色のごはんに赤い枸杞の実。そして木耳の黒がところどころに見える。ザ・中華のチャーハンを想像していた頭の中を軌道修正しながら、シンプルで美しい豆豉炒飯を口に運ぶ。レンゲで豪快にかっこむというよりは、お茶碗からお箸で少しずつ口に運んで味わうのが似合うチャーハン。ごはんはしっとり。味わいはなんとも優しいのにパンチがないわけではない。塩と豆豉の優しい旨味。一口ずつ丁寧に食べたい炒飯。無理のない速度で、ゆっくり体を元気にしてくれるような味。

お腹いっぱい、心もいっぱい。午後の中国語レッスンのための力をたっぷりもらって、お店を後にしました。

ここ数日またぐっと風が冷たくなりましたね。体調を崩さないように、ご飯をしっかり食べてあたたかくお過ごしくださいませ。

今週も1週間、おつかれさまでした。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

HPはこちら