Fly to アメリカ。
イベント、ワークショップとどたばたしておりまして、更新がすっかり遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
先週の気になるものに書いた、写真家幡野広志さんの書籍『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』。今週水曜日に発売となったのですが、発売から2日後「重版が決まりました!」とポプラ社の辻さんから連絡をいただきました。手にとってくださったみなさま、ありがとうございます。私自身もこのワークショップを通して、写真を撮る枚数が増えました。自分の好きなこと、自分の好きだった瞬間を記録しておくことで、写真には直接写っていないことやものも、一緒に思い出すことができる。毎日のたのしみが増えました。
本日もワークショップの開催日だったのですが、購入してくださった本を持っておいでくださる参加者さんもいて、なんともありがたいかぎり。
重版のお祝いを盛大に!したいところだったのですが、明日もワークショップで参加者の皆さんをお迎えする日。ビールで小さく乾杯。今日はさっと解散をして、明日のワークショップのごはんの仕込み。やっと落ち着いて、パソコンに向かっています。
11月も後半戦に突入。やらねばならぬこと、やりたいことも山積みなのに2023年が終わってしまう。「こどもの頃は1年が長く感じたのに、大人になるとなんでこんなに毎日が早くすぎていくんですかね」今日のワークショップ前にそんなことを幡野さんと話していたのですが、年を重ねれば重ねるほど、同じ24時間のはずなのに1日が1時間くらいずつ短くなっているような、そんな気さえしてしまいます。
今週もどたばたと日々を過ごしていたのですが、父から電話が鳴りました。
「けいこおばちゃんが日本に帰ってきているから、ちょっと顔を見せる時間を作れそうかな」
けいこおばちゃんは、母の母の妹。けいこおばちゃんがまだ20代の頃。船旅をしていた際に出会ったのが、当時日本の広告代理店で仕事をしていたアメリカ人のジャックおじちゃん。結婚をして数年日本で生活をしてからボストンへ。日本にいた時間よりも、アメリカで過ごした時間の方が長い人生となったけいこおばちゃん。
わたしの人生初の海外旅行は大学生の時でした。おじさんファミリーがブルックリンに住む友達と一緒にアメリカへ。それぞれの親戚がいるニューヨークとボストンへの旅。行きは別々の飛行機で入国。途中でトランジットもあり、当時はまだ海外で携帯を使える状態ではなかったから、到着まで緊張の連続でした。待ち合わせ場所だったグランドセントラルターミナルの時計の下から見えたガラスの窓。その大きさと駅の美しさに足が動かなくなってしまった瞬間は、1枚の写真のように今でも思い出します。
ニューヨークに数日滞在。そのあとはけいこおばちゃんの住むボストンへ。アメリカ全土を走る旅客鉄道アムトラックに乗車。ボストンまで約350kmの距離を4時間ほどで移動する。日本で女性の車掌さんを見かけることがなかった当時。トイレに行こうと席を立つと、連結部分の手前でアムトラックの番人のように立っていた車掌さんが、ものすごく背の高い女性だったことに驚いた。もう20年くらいアメリカには行けていないから、移動のチケットがどのくらいの金額だったかも、全く覚えていない。調べてみると一番安い席で31ドル。今日のレートで4635円。飛行機の移動ならニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港からジェネラル・エドワード・ローレンス・ローガン国際空港まで約1時間半。片道は約8500円。また旅をするとしたら、当時の記憶を辿れるアムトラックを選択する。
けいこおばちゃんの予定と自分の予定が合う時間は、木曜日のお昼30分ほどしかなかったのだけれど、父、母と一緒に代々木上原まで会いに来てくれました。80代のけいこおばちゃん。おばちゃんの家に遊びにいかせてもらってから、もう20数年。当時60代だったけいこおばちゃんが、車で駅までお迎えに来てくれたこと。韓国人のオーナーさんが経営する「東京」という名のレストランに行ったこと。時差で眠くて眠くて、「東京」までの車の移動でなんども寝落ちしたこと。街自体が公園のような設計で、紅葉がとてもきれいだったこと。旅をした時期はハロウィンで、大きなおばけかぼちゃと生トリックオアトリートを見て興奮したこと。もうすぐ11月になる時期だったのに、インディアンサマーで数日間とても暑かったこと。けいこおばちゃんの家で初めてアーティチョークという食べ物を食べたこと。溶かしバターにつけて食べるロブスターがとても甘くておいしかったこと。当時の気温や匂いを、今でも時々思い出す。
「ボストン交響楽団の公演も行ったよね」
「けいこおばちゃんがチケットを取ってくれて、友達と二人で公演を見て。小沢征爾さんが指揮をしていたんだよね。演奏が終わった時、思わず立ち上がって拍手をしていて。気付いたら友達と二人で大泣きだった。アメリカ、また行きたいなぁ」
「早く来てくれないと。おばちゃんもいつまで待っていられるかわからないからね。ふふふ」
あっという間に30分の時間が過ぎて、父、母、けいこおばちゃんはお昼ご飯へ移動。車に乗り込む前にぎゅっとハグ。「また行きます」という言葉が口から飛び出していた。
「約束ね。」
左折していく車を見送りながら手を振る間、やくそくの4文字が頭をぐるぐるしていた。元気でいてくれている間にもう一度。ボストン、行けるかな。行かなきゃな。約束、したからな。気付いたらまたひとつ歳を重ねて、きっともっと1年が早くなる。いつかなんて思っていると、そのいつかがないままになってしまう。約束を果たせないで終わってしまうかもしれない。
最近、繰り返し見ている「FLY TO THE DANCE」というプログラムのYouTubeの再生ボタンをぽちっと押す。韓国の音楽系番組の専門チャンネルMnetで、2021年8月24日から10月26日まで、毎週火曜日全9話放送された、8組の女性ダンサーチームによるサバイバル番組「ストリートウーマンファイター」で大人気になったアイキーとリジョンが出演しているダンスバスキングのドキュメンタリー番組。「ストリートウーマンファイター」を先々週一気見をしてから、スウパのメンバーにあっという間に입덕(イプドク)。ダンサーたちのファンになってYouTubeを追いかける中で出会った「FLY TO THE DANCE」。バスキングというと音楽の路上ライブの印象が強かったけれど、ダンスバスキングに道で出会えるなんて最高だ。ニューヨークとロサンゼルスで道ゆく人を魅了しながら、緊張しつつも心からダンスを楽しむメンバー。踊りはもちろん、メンバーが旅の間に話す会話に、それぞれのダンサー人生の月日が見え隠れして、見ているこちらも泣いたり笑ったり。次、次とYouTubeの再生ボタンを押し続けてしまう。アメリカという国が与える刺激の大きさが、メンバーから溢れ出ている。アメリカというキーワードが、小池X(旧ツイッター)のトレンドに急上昇してきてしまいました。
今度ボストンに行く時は必ずカメラを持って。あの時と同じようにニューヨークからアムトラックでボストンまで。車掌さんの後ろ姿も、溶かしバターで食べるロブスターももちろんだけれど。この歳で新たに見るものたちを写しておけたらいいな。気温や匂いも一緒に。
ふー。まずは子どもが無事に高校受験を終えられるようにおいしいごはんを作ること、目の前にある仕事をがんばらねば。
すっかり更新の遅れてしまった気になるもの。今週も読んでいただいて、ありがとうございました。どうぞ皆様、たのしい週末をお過ごしくださいませ。