スルトコ。

今週の気になるもの。更新がだいぶ遅い時間となってしまい、申し訳ないです。
イベント続きでこんな時間となってしまいました。まずは深くお詫びをお伝えしつつ。

以前は品川にあった「SURUTOCO」。
JAMという孔版印刷に特化した大阪の印刷会社が運営する、シルクスクリーンの作業場。
「バックやTシャツに自分の好きなデザインをシルクで印刷できて楽しいよ!」と、SAKRA.JPのリーダーぐっさんから、だいぶ前に聞いていました。

食べ物の名前をハングルで印刷したらかわいいな。
何に印刷するのが楽しいかな。Tシャツもいいし、靴下もいいかも。
そう思いながら、なかなか体験しにいかずじまいで、だいぶ時が過ぎていました。

シルクスクリーンを使って、新しい商品を作ろうとデザイナーの友人と話をしていた時に、ふとぐっさんから聞いた「SURUTOCO」のことを思い出しました。

特に気にかけていない時には、SNSで情報が流れてきても、指を下から上にスライドを続けて、ただ通り過ぎてしまうのに。ここ最近ずっと「シルクスクリーン」という言葉が頭のすみっこに鎮座していたからか、SURUTOCOの主催する「ラメインクを作ろう」という期間限定のワークショップとばっちり目が合って、右手の人差し指がスライドせずにピタッと止まりました。

自分の好きなカラーインクとラメのインクを混ぜて、オリジナルの色を作る。そのインクは持ち帰ることができる。白い紙と黒い紙の2種類のカラーチャートが印刷できて、オプションでくるみボタンも作ることもできるとのこと。

時間貸しのシルクスクリーンの作業場も見てみたいし、オリジナルのインクというキーワードになんとも惹かれる。その場でぽちっとワークショップを申し込み、今週お邪魔してきました。

駅は都電荒川線の西早稲田、東西線の西早稲田が最寄り。なのだけれど、グーグルマップを開いてみると高田馬場から歩けなくもない距離。神田川沿いをしばらく歩いて左に行けば到着する様子。当日は天気もよく、散歩日和。正午前の太陽の光が直角に近い角度でキラキラと川を照らしています。川沿いには蔦の美しいカフェや白いカレーというなんとも気になるキーワードのお店もある。ゆっくりコーヒーを飲んだり、カレーを口に運んでいる時間はないからまた次回用に位置を覚えておこう。5分ほど早足で川沿いを歩いて、左折。都電荒川線の走る道路を横断したらもうすぐ。1911年に開業した都電荒川線。都内にあった都電の路線は、一番のピーク時には40路線もあったのだそう。大半の路線が廃止され、軌道路線と呼ばれる路面電車は現在、都電荒川線と東急世田谷線のみになった。電車が発車するさいに流れる「チンチン」というベルの音は都電が運行を始めた時と現在も変わらないのだそうです。

都電もおおいに「気になるもの」だけれど、このテーマはまた改めて。ウィーン、カタンコトンと背中のほうに耳を傾けながら、SURUTOCOに急ぎます。「オリジナルグッズ作れます」の看板に迎えられ、ドアを開けるとTシャツや巾着。トートバックや靴下がずらりと並んでいる。

「予約した小池です。」
「お待ちしておりました。作業場が2階になります。こちらにどうぞ。」
ショートカットに黒縁メガネ。姉妹のようにそっくりな親切な店員さんたちが、にこにこ丁寧に案内をしてくださる。トタンから抜ける光が、勾配の少し急な階段をやわらかく照らしている。トントンを階段を上がる度、初めての体験に心がふわふわと踊る。

「こちらにどうぞ。」
動眼のついた印刷機と目が合う。動眼の中にある黒目が、「いらっしゃい」と話しかけてくれているようにも見える。

時間貸しの作業場を利用している人たちが3人ほど。大きなトートバックの左端に、色を何度か変えてキャラクターを印刷している人。楽しそう。版の上にインクを置いてシュッと一息にヘラを動かすの、やってみたかったんだよねぇ。

左側に大きな窓のあるテーブル。荷物を置いて、早速ワークショップ開始。
「こちらの色見本の中から、好きなカラーインクを三つ選んでください。そこにラメのインクを3種類混ぜることができます。ゆっくり選んでくださいね。」
32色の色が並ぶ布から、ぱっと3色を選択。
「選びました!」
ゆっくりと声をかけてくださったのにすみません。こういう時、あまり迷わずすぐに決めてしまう方なんです。
「蛍光のイエロー、ピンク。あとはグリーンですか。こちらのグレーも実はラメと混ぜるととってもかわいい色になるんですよ」
わ、確かに。グレーのラメっていうのも魅力的。シルバーとは少し違う、グレーのラメ。グリーンを変更して、おすすめのグレーにします。

さくさくと色を決定すると、次は実際にカラーインクとラメのインクをミックスして、新しい色を作る作業。それぞれのインクの比率をメモすることのできるパウチっこされたシートに、ゴールド、シルバー、クーパー(銅色)の3色のラメのインクがのせられていきます。その次は
イエロー、ピンク、グレーのインクがのっかりました。

「この竹串でインクを混ぜていきます。お好きな比率で色を作って、なん対なにで色を混ぜたか忘れないようにこちらにメモしていきます。では、自由に作ってみてください」

シルバーのラメと通常のカラーの組み合わせが、ラメだけれどシックで、きれいな色が出来上がるのではないかと想像をしていたのだけれど。どっこい美しい色に変身をさせてくれたのは圧倒的にゴールドでした。蛍光イエローとシルバーの組み合わせも面白く。混ぜるときらりとひかる黄緑色ができあがって、こちらも捨てがたい。ピンクとゴールドも思った以上に変身率の高い組み合わせ。お祭りでお目にかかるウメジャムのようなピンク。このまま口紅にしてもとってもかわいい。あぁ、化粧品てこうやって色を作ったりするのでしょうか。そんな妄想も膨らんで少しずつ色を乗せて、混ぜていく工程の小さな変化が楽しくて、ニコニコしてしまう。

お試しできる色は9つ。その中から一つを選んで、そのインクを持ち帰ることができる。シルバー1に蛍光イエローが予想ではナンバー1のはずだったのだけれど、ゴールドがやっぱりいい仕事をしてくれている。ゴールドと蛍光ピンクを1:1で混ぜたウメジャム色と、ゴールド1に蛍光イエロー2の銀杏の絨毯に朝の日差しがさしているような、この季節にぴったりのイチョウイエロー(と名付けました)の2択で悩む。
ドゥルルルルルルル、ジャン。イチョウイエローに決定!

紙、布。どちらに印刷してもきっとかわいい。

インクをボトルに入れて、混ぜる具合も自分しだい。途中の段階のマーブルもお菓子のようで可愛いけれど、よく混ぜたイチョウイエローがやっぱりいい。インクの詰まった瓶を窓辺で見てみると、とても細かくゴールドが光る。でも、派手派手ではなく、思っていたより上品。

白と黒の紙にカラーチャートの版を乗っけて、いよいよ印刷。シリコンでできたヘラでインクを伸ばす。

「ちょっと力を入れて、一気に下までインクを下ろしてください。はい!」

シュー。カラーチャートなんだから、失敗してもへっちゃらのはずなのに、なんだか緊張して最後の最後で力がふっと抜けてしまいました。

「もう1回、今度は少しスピードを上げて、一気に下までいきましょう。はい!」

シュッ。今度はうまくいったでしょうか。ぱかっとスクリーンを上げると、くっきりイチョウイエローのカラーチャートが出来上がっている。紙の角度を15度倒したり、戻したり。薄くきらりと光るラメたち。

ヘラに対する力の入れ方に、ちょっとだけ自信がついたところで今度は布に丸く印刷。さっきのスピードを思い出して一気にシュッ。

ふたつの丸を印刷。やっぱり2個目の丸の20%ぐらい、力が抜けている。同じ強さで印刷ができる職人さんたちの凄さ。身を持って感じることのできる体験。もっと何度も「シュッ」の修行を繰り返して、均一に印刷できるようになりたい。ラケットの素振りのように、へらの素振りがもっと必要だな。

印刷したコットンの布。インクをたっぷり吸った状態。ドライヤーの温風で一気に乾かして定着させていきます。左手の人差し指で遠慮がちにちょんちょんと布を触ってみると、案外早く乾いてくれて、指にはインクがついてこない状態に。

今度はくるみボタンマシーンに合わせて、印刷ができているぎりぎりのところでカット。くるみボタンマシーンに布を設置していきます。ボタンの上部を布の上に置いて、筒状のマシーンにペンでぐっと押し込む。そこにボタンの下部を合わせて、ぐっとプッシュ。あっという間にイチョウイエローのくるみボタンが二つできあがりました。他で見たことのない色のボタン。何につけようかな。楽しい妄想が続きます。

ボトルに詰めてもらったイチョウイエローのキラッとインク。どんな版を作って、何に印刷しようかな。このインクに似合うバックをミシンで縫って。来月、作業場を借りて、印刷をしてみよう。バックの色は真っ白がいいかな。ブルーと白のチェックにイチョウイエローもいいかもしれない。楽しい悩みが止まらない。

やったことのないことを体験すると、別の頭も同時に動く。どうしようかなと思っている間に動いてしまったほうが、新たにアイディアが湧いてくる。ウメジャム色、やっぱり捨て難かったしなぁ。

気温があがったり下がったり。風邪をひいてしまったという人も周囲に増えてきました。今年もあと2ヶ月と少し。体調に気をつけて、よい2023年をお過ごしいただけますように。

遅い更新になってしまい、大変申し訳なかったのですが、読んでくださった皆様ありがとうございました。明日もたのしい日曜日をお過ごしくださいませ。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

HPはこちら