シロともクロとも言い切れない世界。

おはこんばんちは。飯塚です。

日本はちょっと涼しくなってきた、なんて聞きますが、こちらは一気に冬の気配。

先週末は最高気温12℃まで下がり人々はウールのコートやらダウンを羽織っていました。

ちなみに真夏の7月8月も特にスペイン辺りから来る観光客が軽いダウンを着ていたりします。

暑くなかったこの夏、アイルランドの観光地では冬物のカーディガンやフリースがよく売れたそうです(涙)。

我が家の庭で採れたアーモンド。確か3年前は2粒しか取れなかったのに今年はこんなにたくさん。

水俣病の頃からあまり変わってない世界。

最近、ある映画を観ました。

ジョニー・デップ主演「MINAMATA」

熊本県水俣市でチッソ(株)による水銀入りの排水により地元民が障がいになったにも関わらず、会社も国も日本の報道機関も隠蔽していた。

外国人報道写真家ユージン・スミスが現地に住み込み被害者を撮影しLIFE誌に掲載された事で世界中に明るみになり裁判で敗訴し会社も謝罪に追い込まれる。

学校の教科書に掲載されていたユージン・スミスさんの写真は今でも記憶に残っている。

この映画、主演のジョニー・デップも日本人俳優陣の美波、真田広之、浅野忠信、加瀬亮、國村隼、イギリス人俳優のビル・ナイもとても良かった。

で。この映画観ながら、「あれ、この構造ってジャニーズ問題と同じじゃないか!」と一人で合点がついてしまい。

すみません、あの記者会見から随分経ちましたが、これはとある6月の続編です。

BBCよ、本人生存中にこれをやってくれたらよかったのに。

昔からあったジャニー喜多川の噂。

また度々告発本や週刊誌のスクープやそれに伴った裁判があっても、日本のメディアは力を持つジャニーズに忖度しマイナスな報道は一切しなかった。

ジャニーズの報道などしたら、局に人気タレントを出せなくなる。

業界を牛耳っていたジャニーズ帝国。

三月にBBCでドキュメンタリーが放映されても日本の報道機関はこの件の隠蔽に協力した。

とはいえ、確実に風向きが変わり。

社長が記者会見したり、被害者が実名で告発したのに追い討ちをかけて、国連から正式に報告書まであがり、さすがに逃げられなくなったようだ。

主犯が逝去したのは事務所には好都合かもしれない。

本当は組織ぐるみだとしても全て故人に責任転嫁できる。

記者会見は「噂は聞いた事がある」「私は知らなかった」「故人のした事は許されるべきではない」「ジャニーズの名前は変えない」や被害者救済の具体的な話もなく、長い記者会見で露呈したのは「加害者意識のなさ」や「知らぬ存ぜぬ」体質。

唯一、井ノ原さんだけが真摯に質問に答えていた印象。

これをきっかけに当該事務所のタレントをCM起用していた会社が「契約解除」を発表。

「ジャニーズ」の代名詞は「イケメン」から「キモい小児性愛者」に。

タレントに罪はない。

ただ、人権犯罪を犯した会社の「商品」は使えない。

という意向を、ジャニーズ事務所は理解してなかったのかもしれない。

今や帝国は崩壊寸前。タレントさん達、移籍した方がいいのでは?それに会社名を変えないのは致命的、とも思う。

これまでは顔が整った男の子への褒め言葉として

「ジャニーズ顔だね」

だったのが、これからは小児性愛者に

「あの人まるでジャニーズだね。キモいー」

と侮蔑的に使われるのではというくらい、ジャニーズという名は地に落ちてしまった。

自分も「忖度」する側かもしれないから暗い気持ちになるのかも。

今までは巨大な力を持つ人が加害者だと被害者は泣き寝入りするしかなかった。

告発するのはリスクが大きすぎる。

周囲はその話を信じたとしても、被害者を応援しようものなら火の粉をかぶる。
水俣問題の写真家ユージン・スミスが暴行されスタジオに火がつけられたように。

見てみぬふりが賢明。

大きな組織に盾突けば、

仕事を干される。ヘタすれば自分や家族の存在すら危うい。

だからこそ日本の殆どのメディアも企業も忖度する。
水俣病を撮影できたのも外国人写真家と「LIFE」誌。
ジャニーズ問題を大々的に報じられたのもBBC。

それでも忖度した側を加害者、と言い切れない世の中。

私も家族が危険に晒されたり、仕事を干されるならば忖度を選ばざるを得ないだろうな、と暗澹とした気分になる。

「報道されないこと」は隠さなければいけないから公にでないだけ。

アメリカで少女買春斡旋パーティーを主催していた富豪のジェフリー・エプスタイン。
彼も独房で自殺したとされながら他殺説が濃厚と言われている。
エプスタインが口を割り真実を明かせばアメリカの元大統領をはじめとした著名な政治家、セレブや実業家の性癖や悪義が暴露され世界中が混乱に陥るから、だとか。

メディアが追求しないのは理由がある。

私達はグレーのモヤモヤした中の黒いものを推察してみるだけ。

中国がウイグル民族に何をしようと、コロナのウィルスを撒き散らそうと、世界は目を瞑る。

2007年に中国チベット自治区に行きました。ガイドさんは話してくれなかったけど(話しちゃいけないから)歴史上ではなく現在も中国からの圧力の激しさを目の当たりにして複雑な気持ちになった旅。

サウジアラビアがどんなに悪行を働こうと、真実を暴いてはいけない。

資源のある国、経済を回す国は敵にはまわしてはいけない。

忖度、そんなのがない世界はどこにもない。

学校では教わらなかった事だけれど社会に出て知る暗黙の了解事項。

この世には「大人の事情」や「忖度」が幅を利かせている。

自分は被害者にも「忖度する側」になる可能性もある。

巨大な組織に刃向かうと自分の存在が危うくなる事がある。

新聞やニュースを鵜呑みにせずに社会の仕組みを考える必要がある。

今はそれでもネットやSNSでほんの少し抗えるようになってきたのかもしれない。

昔よりは声を上げやすくなってきているはず。

被害者の方、誹謗中傷や圧力に負けないでどうか報われてほしい。

今、被害者がやっと日の目を見ているという変化だけをただ一つの希望としながらニュースを見ています。

ルーマニアのブカレスト朝6時出発のバスの車窓から見た朝焼け。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。