つばめ。
8月に「梅と星」で行うイベントのため、先週末に訪れた釜山の話を今週も少し。
なるべく行ったことのない場所を訪れたいと思いながら、気づいてみれば行き慣れた市場に二日続けて足を運んでいました。
釜山にある在来市場の中で、一番大きな釜田マーケットタウン。
釜山の中心地、西面(ソミョン)の北側にあり、地下鉄1号線釜田駅からも西面駅からも歩いて行くことができます。釜田商店街、西面総合市場など複数の市場が集まって釜田マーケットタウンと呼ばれているのですが、その敷地は東京ドーム2.4個分に相当する11万平方メートル。野菜、果物、水産物、加工品、パン、お惣菜、餅など。3300を超える商店がぎゅっとひしめき合っています。
行くたびに気になる店が変わる私と違って、旅の相棒キヨコのお気に入りは野菜の卸売を行うエリア。玉ねぎの専門店、大根の専門店、ニンニクとねぎの専門店、白菜の専門店など。特化した野菜を扱う店が立ち並ぶエリアに入ると、カメラを構える回数が圧倒的に増えます。
お客さんを待ちながら、横並びにベンチに座って談笑するオモニたち。ニンニクの皮を丁寧に剥き続けるアジョシ。そしてひとつ、多くても3種ほどの野菜に特化した商店だからこその、高く積み上げられたねぎや白菜がどんどん相棒のカメラにおさまっていく。
外はまだ明るい17時ごろ。卸のエリアは、片付け中の店とネットで店舗を囲ってすでに閉店をしているところもある。店じまいの仕方もそれぞれ特徴があって、パジョンにも使われる青ねぎの専門店はかなり独創的。束にした青ねぎを平台の上にびっしり並べてプラのケースで周りを囲い、ねぎが倒れないように支えている様子の青ねぎたちは、育ち盛りの芝生のよう。アルミの棚に猫草の鉢を並べるように、青ねぎの束をまっすぐ立てて、きちっと収納していたり。店によって、青ねぎの店じまいの仕方に個性がある。玉ねぎだけを扱う店舗では、数十キロの玉ねぎが入った大きなネットの袋を小型のクレーン車で外に運び出す様子も見られました。
ぐるぐる歩き回って場外に出ると、形のいいスイカがたくさん並んでいる店と出会いました。スイカが甘いことを伝えるため、熟れた中身がよく見えるよう、きれいにカットしたスイカを真ん中に置いている様子がとてもかわいく。二人でパシャっと写真を撮っていると、背もたれの曲がったパイプイスに座った店主のおじさんに声をかけられました。
「写真を撮るならスイカじゃなくて、頭の上を撮らないとだめだよ。」
頭上にスイカは並んでいないけれどと思いながら店の天井を見てみると、燕の夫婦がこどもたちにせっせと餌を運んでいました。韓国語で「제비(チェビ)」と呼ばれる燕。日本でも燕が巣を作ると店が繁盛するという言い伝えがあるようですが、제비(チェビ)は韓国で、お金持ちの女性を指す言葉でもあります。
「あぁ!燕がいたんですね!」
今度は二人で燕を撮っていると、店の横を通り過ぎた別のおじさんに
「부자 되세요(プジャ テセヨ)!」と声をかけられました。
부자 되세요(プジャ テセヨ)。お金持ちになりますように。お金持ちになってくださいね。
オーバーオールとデニムの短パンコンビは、どう見ても제비(チェビ)には見えなかったようです。
「부자가 되고 싶네요.(プジャガ テゴシンネヨ)」お金持ち、なりたいですね。
そう伝えると、ふふふと笑ってくれました。
今年の夏はスイカを見るたび、「부자(プジャ)」が頭をよぎりそうです。
皆様、今週もおつかれさまでした。どうぞ、よい週末をお過ごしくださいませ。