この話題、まだタブーなの?

おはこんばんちは。飯塚です。

夏至。が過ぎてしまいました。

日没が夜10時。これが夏のいいところ。これからは日が短くなるんだなぁ、などと微かに憂う自分がいます。

本当は3月に書こうと思っていたこと。

三月に、BBCであるドキュメンタリーが放映された際に在英邦人が一斉に騒ぎ出し、一時的にその話題でもちきりになった。

BBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」ジャニーズ事務所、ジャニー喜多川の話です。

これ、今YouTubeで見られるようになっているのでこちらをどうぞ。

その余波で日本のBSのBBC、更にNHKでもそれは放映され、私の感覚では日本でもそれなりに話題になっているのかな。と思っていた。

なぜなら、TwitterではBBCやNHKが観られる在外邦人全員観てるんじゃない?くらいに盛り上がっていたから。

しかし、驚く事に最近チャットした日本に住む友人はこのドキュメンタリーの事を知らなくて。

日本のマスコミ、全然報道しないんですね。

怖いなぁ。力のある芸能事務所って本当にどんな犯罪でも犯せるという事か、と改めて背筋がぞぞっとしたほど。

弱小事務所の有名人が不倫したら鬼の首捕まえたように大々的に、執念深く記事にするのにね。

成人同士の道ならね恋は犯罪ではない。

なぜ日本人は不倫に激昂し、未成年者への性犯罪に寛容というか無関心なんだろう。

私自身はこの報道に物凄く驚いた、という訳でもなく。

何かジャニー喜多川はそういう人だ、という噂は昔からうっすらあった気がする。

それは日本の師弟制度の世界では暴力がまかり通っている、的都市伝説として。

BBCのドキュメンタリーの中身も日本人にはそれほど衝撃的ではない。あえて言うなら、レポーターの反応。

被害者の告発を聞き、街ゆく人々にインタビューをしても誰も加害者を責めないどころか

「あの人は日本のエンタメ界の神様だから仕方がない」

「でもあの事務所からはスターがたくさん輩出されてるし」

と擁護派ばかり。

マスコミのコントロールに成功、イコール世論も味方につけられる、という事を思い知る。

この日本全体が巨大芸能事務所に飼い慣らされてる現象にレポーターは動揺を隠せない。彼のリアクションは欧米人の素直な反応だよな、と思う。

更に一番驚愕していたのは、

「でもジャニーさんは優しいし僕は彼に感謝しています」

「僕はそれでもジャニーさんが好きなんです」

「でも皆ジャニーさんが好きなんです」

と揃いも揃って被害者達が加害者を擁護している点。

レポーターは

「君は性被害に遭ったんだよ」

と諭すも彼らはそれを認めない。事実を認めたくないのかもしれない。

レポーターはそれを洗脳、搾取と形容し、インタビューに応じた弁護士もこの洗脳の恐ろしさを指摘する。

ジャニー喜多川が、長年に渡り少年達の心理を巧みに利用した現実を思い知る。

詐欺師が言葉巧みに被害者に近づき親切を装ってお金を巻き上げるのと手口は同じ。

彼の目的はエンタメ供給だったのか、それとも自らの欲求を満たすためのものなのか、すら考えさせられてしまう。

これは古代から世界中で起きている事だろう。

力を持つ者によるセクハラやレイプ、それは世界中で起きている事。

ハリウッドではハーヴェイ・ワインスタインが長年に渡り女優達をレイプしていた事、アメリカのセレブ、ジェフリー・エプスタインがセレブリティを招待し少女買春を斡旋していた事などが明るみに出たのはここ数年のこと。

世の中に#Metooムーブメントなる現象が起きた。

「私もこんな目に遭った」

「今まで誰にも話せなかったけど私も被害者です」

と名乗り出る。

今まで封印してきた屈辱的な経験を初めて公にする。

加害者は特に優遇もされずにしっかり報道され、証言者が次々と現れ、裁判に持ち込まれた。

エプスタインの「少女買春パーティー」常連客だったイギリス王室のアンドリュー王子はほぼ王室を追放されたような形になった。

この流れでたとえ数十年前だろうと、性被害は訴えるべき、という風潮になり10代の頃に寄宿学校や教会で教師や神父から性被害者が告発する件が後を経たなくなった。

見た目普通のおじさん、な人が少年時代に閉ざされた世界で力のある人にレイプされていた話を震えながらする。

これまでは名もない被害者達はずっと声を上げる事などできず涙を飲んでいたのだ。

もう沈黙せずにありのままを話せる、これこそインターネットの功績かもしれない。

似たような証言者が次々に現れ、年老いた元教師や神父はある日突然最も恥ずべき形で公に引っ張り出され余命は牢獄で過ごす事に。

このニュースが取り上げられる事はもはや珍しい事ではなくなった。

これもアイルランドのカトリック離れの一因なのは間違いない。

日本と決定的に違う点は、告発者は賞賛され、加害者は徹底的に断罪される、という点。

だからこそ、被害者は恐れずに名乗り出る事ができる。

海外メディアが取り上げた功績は大きい。

日本のメディアが取り上げられなかったこの業界一のタブー案件、BBCのドキュメンタリーがきっかけとなり事態は急変したようだ。

事務所社長は声明をだし、新たな被害者が実名で名乗り記者会見をしたり。

沈黙は破られ始めたけれど、日本の世論は欧米諸国とは正反対。なぜか被害者が世論にボコボコに叩かれ、加害者は擁護される。

幼い頃からの癒えない傷に、日本の世論は塩と唐辛子を刷り込むように更に痛めつける。

日本ではレイプされる方が罪なんですか?

せっかく告発したところで糾弾されるなら、誰も被害を名乗り出ない。

この日本の風潮、とにかく違和感しかなく。

特にこのジャニーズに関する被害者への中傷でよく見かけたのが

「でも芸能界に入りたかったんでしょ」

「それで有名になれたんだからいいじゃない」

加害者はその心理、またまだ精神的に未成熟な子供達が拒否できないことを利用し搾取しているという点は置き去りになっている。

この件を報道できない理由の一つは、日本のエンタメ界でジャニーズの男性陣ありきで成り立っているから。

ジャニーズにマイナスな報道などしたら人気タレントを起用させてもらえない。

また、真実が明らかになれば今後益々追求されると彼らに要らぬ憶測がされる。

ジャニーズの活躍しているスター達も世間から色眼鏡で見られる可能性もある、を盾に報道しないのかもしれない。

被害者を中傷する人、想像力がないんだろう。

世の中には美人局みたいな話がある事も事実。

けれどこの件はまるで違う。

マスコミも成人同士の不倫などは放っておいて、組織犯罪を断罪するべきじゃないの?

在外邦人は日本のマスコミの報道に呆れている。きっと日本に住む人も同じ思いの人はたくさんいるはず。

そろそろ報道や世論の流れが変わればいいな、被害者に報われる日が早く来ますように、などと西の果てから願っています。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。