ひとり泣いた夜〜青春純情物語

こんにちわー。ムトーです。

もう4月も後半。ということはもうすぐゴールデンウィークですね。

特に何の予定も入れてないです。何も考えていない。

何しよう。なんか楽しいことあったら誘ってください。バーベキューとかあったら呼んでください。静かに端っこでお肉を遠慮がちにいただきますので。

僕、趣味は「喫茶と靴磨き」です。最近そう言っています。2年くらい前まで喫茶のみだったんですけど、靴磨きが新しい趣味として加わったのです。

そしてね、もうひとつ好きなことがあって。これはそんなに頻繁にやらないから趣味とまでは言えないんだけれど、とても好きなこと。

「ひとり飲み」

です。

喫茶するのも靴を磨くのも、ひとり。

ひとり飲みももちろんひとり。

趣味ってそんなもんですかね。

あ、そうそう。ときどき無性にひとりで飲みたくなる。

久しぶりに何の予定もない土曜日。よし、やるか。

ひとり飲みのための準備

夕方から飲み始めるために、午前中にそれなりに家のことをやっておかねば。

天気もよくないし、黄砂が飛んで来てるからコインランドリーに。

最近オープンしたコインランドリー

50分の乾燥時間。

よし。コーヒー飲もう。

あ、ハイカロリーのおやつも付けてもうた。

うん。多分、本物のお酒好きのひとは最初の1杯のために、水分控えたりするんだろうけど。僕はそういうのじゃないんで。あ、シナモンロールで逆に口の中の水分なくなったな(お前の加減次第)。

よし、ランドリー戻って洗濯物取り出して、買い物してお昼ご飯作ろう。乾燥してる時間に買い物すればよかったな。

郊外に住んでいるので、バスで出かけるつもりでいたら妻が送ってくれることに。わー、ありがたい。

玄関で靴を履いていたら、なんか背中に視線を感じて振り返る。

あ、、。

お、おう。このバッグを連れて行こう。

スタート!

午後3時過ぎに家を出て、1軒目のお店の前で下ろしてもらう。

あ、あそこ5Gなんや。

午後3時22分。ひとり飲みスタート。

ブックカフェ バレイショテン

まだ時間も早いので、お酒も飲めるブックカフェ「バレイショテン」。以前インタビューしたお店。

「いつもこのひとコーヒーしか頼まんのに、なんかあったのかな」と店主に思われてるかもしれないので、念のため今日のコンセプトを伝え、ビールとおつまみを注文(おれ、なんか生きづらい)。

チーズはじゃりじゃりした塩が入ってて美味しい。

ひとり用の席で壁に向かってひとり乾杯。

はー。これは最高のスタートが切れた。至福の時だ。

友人がこのあと午後6時から飲み会があって近くにいることがわかったので、合流することに。

このお店で一緒に飲むのもよかったけれど、お客さんが多くて2人席に移動するのが難しいので別のお店に向かうことに。

「ごちそうさまでした。また来るかもです。」

オサレバーガー屋さん「アンオンバーガー」

友人と入ったお店は「AN/ON BURGER(アンオンバーガー)」という名のハンバーガー屋さん。

ここのお店はハンバーガーはもちろん美味しいのだけれど、オーナーをはじめスタッフのみなさんが明るくて楽しい。

友人とメニューを見ながら「ハンバーガー食べたい」と思うものの、この後のことを考えると食べられないからぐっと我慢してお酒だけ注文。「二人ともこのあと飲み会なので、ハンバーガー食べられなくて。お酒だけですみません。」と伝えるとオーナーさんが「全然大丈夫ですよ。」と言ってくれたので甘えました。

僕はコークハイ。友人は普通のハイボール。

オーナーさんが僕らの席にやって来て「いまさっき、『二人とも飲み会』って普通に聞き流しましたけど、ムトーさんは飲み会じゃないですよね。ただひとりで飲むんですよね。」と、僕の小さな見栄と嘘を指摘される。

苦難のはじまり

雨が強く降り出して、止むまでアンオンバーガーでお酒をおかわりしていたら、もうすぐ午後6時。友人の飲み会が始まる時間だし、ハンバーガー屋さんも閉店の時間。友人を見送り、僕も席を立つとオーナーさんから「次はどこに行くんですか?」と聞かれたので「いや、いくつか行こうと思ってるお店はあるけど決まってないです。ふらっと良さそうなお店に入ろうかと。どこかいいとこありますかね?」と僕。するとオーナーさんが最近できたばかりの中華料理店を教えてくれた。ここから徒歩5分くらい。

ムトー「行ってみます。」

オーナー「そのお店だったら私たち2人もあとで行きたいんでご一緒してよければ3人の席確保してもらってていいですか?」

ムトー「3人席予約したけど結局2人来ない、っていうトラップやめてくださいよ。来てくださいね。」

というやり取りののち、僕はその中華料理屋さんにひとり向かう。雨が止んで澄んだ空気の街を少しアルコールを帯びた体で歩くのは気持ちがいい。

あ、ここか。わ、おしゃれなお店。わー、人多いなあ。外から中を覗いているとお店の人が出て来て「お一人ですか?あー、3名様、、、。今日お客さんいっぱいで、ごめんなさいー。」と伝えられて。残念。でもすごく良さそうなお店だったので、そのうちまた行ってみよう。

ハンバーガー屋さんに戻って満席だったことを伝えて、僕はまたひとりふらふらと歩く。

けっこう近いところにある、よく行くお店はまだ開いていないっぽかったので、ちょっと歩いてJR大分駅近くの僕の好きなお店に向かった。人気のお店なので入れないことも多い。でも今日はひとりだし、まだ時間も早いし入れるはず。早くお店に入りたくて早歩き。

「青年酒場」というお店で、いわゆる大分の名物「りゅうきゅう」「とり天」などの料理が美味しいし、駅に近いので仕事帰りにさっと立ち寄れる。わー、今日も楽しみ。

ん・・・?

ん。空いてない?早過ぎたかな。。
うっ、、、、、、、、、、、。

ああああああああああああああああああああ。

ああああああああああああああああああああああああああああ。

う、、こんなこともあるさ。気を取り直そう。あ、近くの焼き鳥やさん行こう。

大分の街中でお酒を飲んだ人の4割がシメに使う(ムトーの個人的実感しらべ)ラーメン屋さんの前を通って近くのビルの地下にある焼き鳥やさんに向かう。あああああああああああ、、、、閉まってる。。。なんで??

あれ、なんか今日調子悪いな。

15分くらい歩いて大分の歓楽街の中にある地鶏屋さんに向かう。何回かひとりでカウンターに座ったことがあるし、美味しいし。

あああああ、、、、、、、、、、、、入口に、、入れなかった人が並んでる、、、、。

ほ、、ほかの、、、焼き鳥屋さんに、、、、。焼き鳥食べたい。。

なんだか酔いもすっかり醒めて、心が弱々しくなって、入ったことのないお店のドアを開けられない。。

外からガラス越しに中が見える焼き鳥屋さんを覗くと、カウンター席が1席空いている。しかし若い女性のとなりの1席に45歳のおじさんが座ったら嫌かもしれない、と思うとお店に入られない。

勇気を出してドアを開けたポップな餃子屋さんもカウンターが満席で断られる。

みんなお店の中で美味しそうに、楽しそうに仲間とビールを飲んでいる。

ちょ、、つらい。。もう2時間くらい彷徨ってる。。

え、、どうしよ。お腹も減ったし。。

ちょっと、カレー挟んでいいすか。

「イスルランカ」というスリランカカレーのお店

スリランカカレーの「イスルランカ」。人気のお店だけど今日はゆっくり座れそう。スリランカ人の店員さんの柔らかい接客が心地いい。

あー、、うまい。すごいうまい。

うまいけど、これは、、なんだっけ。食事??

おれは、、ひとり飲みをするんじゃなかったのか。これでは夕食にカレーを食べに来たひとじゃないか。

でも、なんだかお店に飛び込めないな。お酒を楽しむメンタルが崩れてしまって、一歩踏み込む勇気が出ない。

出張したときのことを思い出そう。ひとりでお店見つけて「ひとりですけどいいですか?」って行けるじゃん。

大分に出張に来た設定で行こう。それならお店に入れるはず。うん。それでいこう。いやしかし、、。

カレーを口に運びながら頭の中で今日のこれまでの行動とこれからのことについて考えを巡らせた。

「おれはビールを飲むんだ。」

そう言い聞かせて、カレー屋を出た。

最初に入れなかった中華料理屋さんにもう一度行ってみよう。時間も経過したし、ひとりなら入れるかもしれない。あの店からやり直そう。

「ごめんなさいー。カウンターも埋まってて。。」

ぐぅ、、、。せっかく気持ちをリセットしてチャレンジしたのに、2回目も入れないとダメージが大きい。膝からくずれ落ちそうだ。。僕の彷徨がまたはじまる。

向いてない

ガラス張りの焼き鳥屋さんはおしゃれな人たちが入口側のテーブルに座っていて、輝いて見えてまぶしくて入れなかった(もう、なんか向いてないじゃん)。

アイリッシュパブの前を通ると通路側のテーブルが空いていた。

ここに入れなかったらもうどこにも入れないぞ、ムトー。誰かがそう言ったような気がした(お店入れなすぎておかしくなってる)。

よし、入ろう。

カウンターに行き、ギネスをオーダー。

久しぶりのビールをテーブルに運ぶまでに喜びと緊張で手が震えたのか、泡がこぼれる。

ほぼ満席でワイワイガヤガヤしているけれど、こういう「ひとりでもいいんだよ席」があると僕みたいな人間にはオアシスみたいでありがたい。

お店の中の賑やかな声の方に視線を向けると、さみしくひとりで飲んでいる、いや「独りで淋しく飲んでいる」ひとと思われそうなので店の外を見ていた。

ピカピカに磨いた靴でも見てニヤニヤしようかと足元に視線を落とそうとした時に、膝の上のトートバッグのイラストの人物と目が合った。僕はテーブルにバッグを置いた。

このバッグのイラスト、元々は昨年のSAKRA.JPイベントのためにSAKRAメンバーのこいけさん(ひだり)とニホンコンさん(右)をイメージして描いたもの。なんとなく、このバッグの2人のおかげでちょっと心が落ち着いた(もう向いてないって)。

ゆっくりと1パイントのギネスを味わって、まだここで終われるものか、と店を出た。まだ僕はやれる。

よく行っている家庭料理のお店。6時くらいに前を通りかかったときまだ開いてなかったぽかったけど。

張り紙、、、

「陶やかん」。ここもお店のひとがとても面白くて。料理もおいしい。なにより落ち着く。開いてる!!

が、、張り紙、、、。

本日貸切、、、、、、、、、。

ううううううううううううううううううううう。

今日は、、だめだ、、、、、、。

ううううううううううううううううううううう。

もうない。心が折れて、もうひとりで入れるお店が僕にはもうない。

絶望の果てに

絶望の中、僕が向かったのは最初のブックカフェ。

すっかり暗くなってらあ

「え、ほんとに戻って来たんすね。」と店主。

「戻って来るつもりはなかったんですけど、仕方なく。。。」と僕。そしてビールを注文。

僕は店主に全ては語らなかった。「今日は街に人が多くてなかなかお店に入れなかったんですよ。」と言った。

よく冷えたグラスに注がれたハートランドビールがたまらなく美味しかった。

このブックカフェの通りの角に居酒屋さんがある。そこは20代後半の頃に、当時通っていた陶芸教室の仲間と何度か入ったことのあるお店。多分それから20年くらいご無沙汰している。ずっと見かけるたびに気になっていたんだけど、全然行く機会がなかった。

「あのお店、何時までやってるんですか?」と訊ねると「けっこう遅くまでやってますよ。行くんですか?」と店主。

「行ってみようかな。勇気だして。 ごちそうさまでした。」

1杯のビール代を支払って、2回目のブックカフェを出た。

徒歩10秒。

外から店の中を見るとカウンターに男性と女性のペアが1組のみ。よし、行ける。

ドアを開けて店内に一歩入ると、詳しくは覚えていないけれど、多分20年前と同じレイアウトのままだな、と思った。

お店のひとたちは入れ替わっていると思うけれど、店主らしき人に見覚えがあって、多分20年前もこの人がいたような気がした。

入口に一番近いカウンターに座って。メニューを見た。

当時の料理の記憶もないから、あの時のあの思い出の味を!というものもない。ただお腹は減っているし、目に入った美味しそうなものをいくつかオーダーした。ひとり飲みにも適したお店だったのか。

いたわさ
大分名物「りゅうきゅう」にアボカドがはいったもの

お通しからどれも美味しい。

お酒の種類も豊富だし。

ビールを飲み干した僕は「チンザノ・ロッソのロックをください」と店員さんに伝えた。

1.5メートルくらい横に座っている女性が少し酔っていて「マスター、私もあれ、なにチンザノ?養命酒みたいなの。あれ飲みたい。飲んでみたい。おいしい?」と言って出してもらっていた。

若い頃友人の家にあってよく飲んでいたお酒がチンザノ。そんな特別美味しいとも思わないが、思い出に浸りたくて注文した。彼女のお口に合うといいけど。

「まっず!ムリムリ!」

という彼女の声が聞こえた。

なんか、ごめん。

僕はグラスの氷を溶かしながらチンザノをゆっくり飲んだ。

妻からラインのメッセージが届く。

「迎えいこうか?」

夜9時27分。

「あとちょっと飲みたいから、バスで帰る。22時とかでよければお迎えお願い。」

その後、確認したらバスは9時45分が最終だし、逃したらタクシーでもいいかとか考えていたので全く時間を気にしていなかった。

9時45分、僕はその居酒屋を出た。美味しかったし、懐かしかった。20年前の楽しかった時代を思い出した。

その時、妻からまたメッセージ。

「今家出た。」

そうすると、店を出てしまったけど20分くらい待ち時間があるな。

「え?おかえりなさい。3回目ですか。1日3回来る人いませんよ。」

3回来てくれたからということでピクルスをサービスしてもらった

今日3回目のブックカフェ。「妻が迎えに来てくれるので待たせてください」と店主に伝え、いつでも出られるように先に支払いを済ませて、またビールを飲む。

「どうでした?あのお店。いいでしょ?」と店主。

「はい、すごくよかったです。昔ね、ちょこちょこ行ってたんですよ。20年ぶり。なかなか、行く機会なくて。今日思い切って勇気出して行ってみてよかったです。」と僕。

さっきチンザノをまずいと言った女性とその連れの男性がいた辺りのカウンター席に座っていた20年前の自分を思い出しながら、「あの店、思い出の店なんですよ。」と立ち上がりながら僕は店主に言った。

「陶芸教室の仲間と毎週のように集まって飲んでたんです。その日もあのお店に集まって飲んでて。僕とその陶芸教室のメンバーのひとりの子がテーブルから立ち上がって、カウンターに二人で腰掛けて。ストローの紙の袋を二人薬指に巻いて『実は僕たち結婚します』って仲間に伝えた場所なんですよ。」と僕が言うと、店主は笑いながら「なんすか、その話し。」と笑った。

「その時にカウンターで並んだ人が迎えにきたみたいです。3回目のごちそうさまでした!」そう言って僕は店を出た。

「いや、こちらのセリフもあわせて4回目のごちそうさまですよ。」と店主(ごめんこれ嘘。創作)。

その思い出の店の名は「青春純情物語」(これ本当)。

青春とか純情とか、自分に似合わなくなった気がしてずっとあのお店に入れなくなってたのかもしれないな、と妻の運転する車でうとうとしながら思ったりした。

家に帰り着いたのは午後10時30分のちょっと前だった。

なにこれ。

妄想旅行社ムトーツアーズ 代表 ムトー

ムトーツアーズ

(隔週月曜日更新)
大分県に住んでいます。大分に遊びや仕事に来た人を案内することにヨロコビを覚える男です。