ただいま絶賛公開中なので。
おはこんばんちは。飯塚です。
先月から連載していた息子1号の「日本の学校体験入学話」、今日はちょっとお休みして珍しく映画の話題を。
実は映画が好きです。
日本を離れる前は映画会社に数年勤務しておりました。
会社の作品がゴールデングローブ賞やアカデミー賞絡みの時は社内に妙な高揚感があり。
ネット中継で受賞式を見守るのです。
ポスターやチラシ等、印刷物のデータを同時進行で修正、印刷会社に入れなければならないからです。
そんな事が今年はアイルランド映画絡みでてんやわんやとあるのかな、などと思いを巡らせていました。
映画の公開時期は限られてますから。
先月末に日本でも公開された「イニシェリン島の精霊」(原題The Banshees of Inisherin)という映画をご存知ですか。
アイルランドのスタッフ、キャスト陣によるアイルランド撮影のアイルランド映画。今年はアカデミー賞9部門ノミネート。
アカデミー賞の前身となるゴールデングローブ賞からアイルランドではニュースや新聞でも大きく報道されていました。
本来なら先月のノミネート時点で書きたかったのですが、私自身が未見でしたので書くに書けず。
ついに先週金曜日に観ることができました。
映画館で観たかったけれども、ディズニープラスで配信していたので家で観ました。
子供達が寝静まってからの映画鑑賞、一応夫にも声をかけてみたら、初めはちょっと興味を示してはいたのですが、連日の激務につき
「やっぱりいいや。たぶん眠くなるし、アカデミーノミネートとか騒いでるけど、何にも起こらない退屈な話だって評判良くないよね。俺は寝るわー」
と。
確かにね。
アイルランドの監督が作るアイルランドの島の田舎の話。
「トップガン」みたいなエンタメ系じゃないのは百も承知。
「つまらない」というより「難しい」
舞台はアイルランドの西の島アラン諸島。約100年前の内戦時代の話です。
島に住む男(コリン・ファレル)が理由も分からず突然親友に絶交されるところから話は始まります。
内容や感想を詳細に書くとネタバレになってしまうので、ざっくり、私的感想だけ言わせてもらうと。
全然退屈ではない!
予測不能な事が次々に起こるし、会話もアイリッシュ独特の皮肉やら含みがあるし。
目が離せないし冗長ではない。
俳優陣が素晴らしい。会話のやり取りとか本当に村人みたいで自然なのです。
また、コリン・ファレルもすごく“いい人感“出てるんです。
ただ、難しい映画だな、とは思いました。
時代背景(アイルランドの内戦時代)が関係している。という映画評論を読んで自分の勉強不足を恥じています。
玄人向きの映画かな。と思いました。
これこそアイルランド、みたいな映画。
ちなみにアイルランドに住む人間からの視点で観ると。
うわー、ものすごくアイルランドっぽい!!と思い、苦笑いが止まりませんでした。
景色も、会話も人間模様も、アイルランドそのもの。
この映画の中の会話もほとんど普通に聞き取れたのはアイルランドの英語に耳が慣れた証拠なのか。実はいまだにハリウッド映画やオーストラリアのドラマなども俳優さんによっては全然聞き取れなかったりするのですが、本作はそのストレスがなかったのは喜ぶべきか。
今度から友達に「アイルランドってどんな国?」って聞かれたらこの映画観て、って言っても良いかもしれない。(ただし田舎に限る)
確かに馬車や服装や、スマホがない、という点はあるものの、それ以外は100年前という古さもあまり感じさせないくらいに今と通じる話。
舞台となっている島の風景も、アイルランドの西の田舎道はまさにあんな感じだし、古い茅葺き屋根の家も減ってはいるものの、まだ見かける。
うちの近くにもあんな感じの家、ありますよ。
何よりも、田舎の人間関係が、まさにアイルランド過ぎるのです。
アイルランドの田舎、店はなくてもパブだけはある。
そこに村人が毎晩集う。
生演奏の音楽は欠かせなくてどこのパブも週末は必ずと言って良いほど演奏者を呼んでいます。
話の内容は村人の噂話。
日本も田舎はそうなんですかね?
とにかく人の噂話大好き、詮索好き。そして嫉妬深い。
毎度お馴染み、愚痴の時間です。
私なんかも村唯一の日本人なので監視されてるし噂されてるの、ビシビシ感じます。
仮に私が不倫なんかした日にはその日のうちに夫と義理の両親の耳に入るはず。
面倒くさいから悪い事一ミリもする気ないし、とりあえずいい人ぶってます。車の運転も気をつけてるし。
だって、本当に皆知り合いというか繋がってますからね。
コミュニティが狭すぎる。
で。わりと皆さん生まれたときから死ぬまで生涯ここにいる感じ。
でもやっぱりこの閉塞感、若い人や刺激が欲しい人には物足りないだろうな、と改めて思ったり。
夫は21歳からアイルランドを一度出て、戻ってきた人。
うちの子達も成長するに従って一度外に出て見聞を広げたい、という日が来るかもしれない、と思います。
そういえば。
話逸れますが、数年前に公開されたアイルランド女優シアーシャ・ローナン主演「ブルックリン」もそんな話でした。アイルランド自体が小さな島国なので、アイルランドの映画となるとその田舎の人の感覚、というのが如実に出ると思うんです。
ヨーロッパの他の小国だと陸続きだし、「他国に出て行く」と言っても意識が違うはずですし
「イニシェリン島の精霊」はそういうテーマの話ではありませんが。
小さな島だけの世界に囚われていると唯一の友人に縁を切られたらまさにこの世の終わり。
娯楽もないし話し相手は飼っているロバだけなのです(ロバは寂しがりやの動物なので多頭飼い、または誰かが常に相手をしないといけないんだそうです)。
この映画、田舎の嫌なところがかなり凝縮されていて
「ぎゃー、わかり過ぎる!ホントイヤだわー」
と内心悪態つきながら鑑賞してしまいました。
あ、また毎度お馴染みのディスりになってしまった。
アイルランドって綺麗な国だな、と改めて思える映画。
ちょっと良い事言わなきゃ。
この映画の高評価の一つは景色の美しさ。
アイルランドの西の田舎、緑の中で岩がゴツゴツあってワイルド。農産物を育てられない不毛な土地は他のどこにも似てなくて独特の美しさがあります。
その景色に魅せられるのです。
ここ近年は映画のロケ地になったことで観光客が増えています。
特に映画『スターウォーズ』シリーズの『フォースの覚醒』と『最後のジェダイ』の舞台になったスケリグ島などは大人気の観光地。
実は私もアイルランドに来て最初の夏2013年に行きました。
この「イニシェリン島の精霊」公開されているので興味がある方はご鑑賞ください!(これを読んで観たいと思う人がいるのか少し不安)
久しぶりにアイルランドのことを書きました。
また来週は日本の学校の話の続編です(読みたい人いるのか疑問もありつつ連載中)。