栗の季節。
秋を押し退けて急に冬がやってきてしまったような今週。皆さん、体調くずされていないでしょうか。こどもの制服は今週の真ん中まで半袖で問題なかったのに、長袖のシャツでも寒いくらいの気温。着るものも混乱。ふとんも混乱。水曜日までタオルケットでOKだったのに、慌ててかけ布団をひっぱり出しました。
例年なら、カーディガンを羽織りだすと猛烈に食べたくなるモンブラン。あまりの寒さに栗の季節を忘れて通り過ぎてしまいそうな10月。芝浦埠頭のスタジオに行った仕事の帰り。激しい雨風がおさまったので、地下鉄をパスして新橋から日比谷までぶらぶら歩くことに。おかげで、秋のモンブランにありつけました。
渋皮をむき、クチナシの実と一緒に煮た栗をペーストにした鮮やかな黄色のモンブランもいい。土台がスポンジで真ん中にカスタードと生クリームの両方が入っているものもおいしいし、生クリームだけのものもいい。
自由が丘にある「モンブラン」のモンブランは、黄色のモンブランに白いメレンゲの帽子がかわいい。水色と白のストライプのグラシンカップも相まって、味もビジュアルも100点。
事務所の近所にある「アスタリスク」のモンブランクレメは、茶色いモンブラン。とにかく背が高い。ドレスのように生クリームを包んでいる栗のペーストに、上から垂直にそーっとフォークを入れる。できるだけ栗がばらけないように慎重にすくって口に運ぶ。栗が好きだーと叫びたくなるモンブラン。こちらも味、ビジュアルともに100点。
そしてモンブランといえばもうひとつ。銀座といえばみゆき館。みゆき館といえばモンブラン。週末の最後の仕事が銀座を通過する場所でよかった。
「今は、和栗のモンブランがおすすめです。」メニューにもどーんと和栗のモンブランの写真。おすすめならば、食べないわけにはいかない。和栗のモンブランとコーヒーをお願いします。
そういえば「和栗」っていつ頃からアピールされるようになったのだろう。
「和栗」=日本原産の栗と思ってすっと受け入れていたけれど、そもそも和栗の定義ってなんだろう。和栗の反対は西洋栗?他にはどんな種類があるんだろう。
栗。英語の表記はchestnut。フランス語の表記はmarron、châtaigne。そうだった。マロンはフランス語なのでした。ふたつの呼び方、その使い分けがあるのかと思って調べてみると、果皮の中に大きな栗が入っているものをmarron、複数の実が入っているものをchâtaigneと呼ぶのだそう。
小さい頃、おじいちゃんと栗拾いに行った時。トングで栗を押さえながら、靴の裏でイガイガをぐりんとはがした時に大きな実がひとつ出てくると「当たり!」とジャンプして喜んでいたことを思い出す。フランスだったら「Marron!」といって飛び上がっていたのか。栗のイガイガを、斜め45度になった足の裏でチクチクうっすらと感じるのが、なんとも気持ちよかった。
ブナ科クリ属の落葉高木樹。栗の原産地はアジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカの四大大陸にまたがっていて、北半球の温帯域の山野に広く自生している。果樹として栽培されている栗には大きく分けて「日本グリ」(これが和栗)、西洋グリ、中国グリ、アメリカグリの4種類があるのだそう。アメリカグリ、初めて知りました。
そしてそして和栗とは。日本原産の野生のシバグリ(芝栗、柴栗)を品種改良したもの。果実が大きくて、風味が良いのが特徴。甘みはやや少ない。渋皮が剥がれにくく、果肉が割れやすいのが特徴。果肉の色は黄色。説明だけ読んでいるとネガティブポイントが目に入ってきちゃうけれど、「和栗」と聞くとおいしそうと感じるのは日本人だけなのかしらとふと思う。
みゆき館。ケーキセットでコーヒーを頼むと嬉しくなるのはコーヒーがポットに入ってやってくること。カップアンドソーサーが少し小ぶりなのもいい。カップにちょうどいい量のコーヒー。その都度コーヒーをおいしく飲むことができて、ポットから新たにコーヒーを注ぐ時が毎回嬉しい。
そわそわしながら待っているとやってきました、和栗のモンブラン。グラシン紙をゆっくりはがして、栗のペーストとメレンゲの台座の部分もじっくり眺める。あぁ、おいしそう!
台座のメレンゲのさくさく感を保つために、大量の作りおきをせず、1日2回作られるモンブラン。中心は無糖の生クリーム。栗のペーストは和栗100%。そうか。真ん中の生クリームは無糖だったんですね。甘すぎず、するする口にしてしまうのはそういうわけだったのか。
合間でコーヒーを注ぎながら。サクサクのメレンゲも味わう。フォークを入れる時にスポンジの土台はぐっと力をいれなくてよいのだけれど、メレンゲの土台の時ならではの合気道のような間合い。すー、えいと心の中で号令をかけながらフォークにちょっとだけ力をこめる。この一瞬も至福。
モンブラン。食べ始める前はいつもじっくり味わおうと思うのに、食べ始めるとどんどんフォークの速度があがって、ぺろりと食べ終えてしまう。どっしりした見た目と反する吸引力。コイケ吸引器のモンブランたち。
二度目のコーヒーをカップに注ぐ頃には、お皿の上はきれいになっていました。今日ももう少し、ゆっくり食べたらよかった。
また連休ですね。みなさま、どうぞあたたかくお過ごしくださいませ。