選ぶことがたのしいスーパー。
仕事柄、スーパーにはいつも助けられています。事務所の場所を決める時も、スーパーは重要な要素でした。すぐ近くにOdakyu Ox、マルエツ、丸正と三つのスーパーがあって、少し足を伸ばせば24時間営業のハナマサやダイエーがある。
数年前、丸正が大型の薬局店に。なくなってから気づきました。生活の中心にあるスーパーだったということに。アクセス、品揃え、価格のバランスがベスト。今でも丸正だった場所を通ると、喪失感が蘇ります。撮影時、たくさんたくさん助けてもらったスーパーでした。
仕事にも生活にも欠かせないスーパーマーケット。ロケで生活圏以外のスーパーに訪れるのも楽しいものです。野菜、肉、鮮魚、乾物や調味料の配置。店の大きさによって、立地によって。どんな理由でその動線になったのかを想像するのも面白い。妄想していると買い物をしにきたはずの調味料がなんだったかを忘れてしまいそうになる。
ずっと気になっていたスーパーがあったので、少し遠くまで足を伸ばしてみることにしました。
六本木や秋葉原にも店舗があるけれど、せっかくだから本店に訪れてみたい。今週の気になるものの舞台は青梅線の羽村市にあります。
自宅から羽村まで。代々木上原の駅から行くか、笹塚から行くか。新宿を経由して中央線に乗るか、小田急か京王線で移動するか。ぱっと思いついたのは中央線で立川までだったけれど、違うルートを選択。京王線で分倍河原まで行って、南武線に乗り換え。終点の立川で青梅線に乗り換えて羽村に行くことにしました。
よく晴れた日はまだまだ暑いけれど、吹いてくる風はすっかり秋。目線の上の方では、百日紅の花がまだ紅色を保っているけれど、視線を下げるとコスモスに出会う機会も多くなりました。
立川から奥多摩を結ぶ青梅線。乗るのはいつ以来だろう。中高のバスケ部で仲の良かったしょうちゃんの家が昭島にあって、遊びに行って以来かもしれない。30数年ぶりに乗車する青梅線。京王線に揺られながら、青梅線の駅一覧を見てみる。立川、西立川、東中神、中神。次がしょうちゃん家のあった昭島だ。拝島駅は西武新宿線の終点の駅。子供の頃、通学に利用していた西武線のホームで「拝島行き」の表示をよく見ていたからか、妙に親しみがある。牛浜、福生。その次が本日目指す羽村駅。そうか、福生と羽村はお隣の駅だったんだ。福生には大学時代、アルバイト先の喫茶店のオーナーご夫婦が連れて行ってくれたおいしいサンドウィッチ屋さんがあった。鉄板で分厚いトーストを焼いてくれる店主のおじさんの後ろ姿。毎回、福生とセットで頭に浮かぶ。
分倍河原で南武線に乗り換えて立川まで。運良く次に来るのは快速。6分で立川に到着できるようだ。
立川駅、来るたびにその大きさにびっくりする。南武線から青梅線への乗り換え。駅構内にもたくさんのお店があって、階段のすぐそばの崎陽軒を見てお腹が鳴った。
羽村は青梅線に乗って8個目。今は昭島にいないかもしれないしょうちゃん、元気かな。
羽村の駅に到着して奥多摩の方を眺める。ほんとに空がきれいな日だ。
慣れない場所で地図を見るのは楽しい。目指すお店は駅の右側。左に進むと多摩川の表示。お買い物のあと、余裕があったら行ってみようかな。
駅のロータリーの向かいに大きな会館がある。
そういえばこれから向かうスーパー福島屋さんの本店住所も「五の神」の三丁目だった。すぐにグーグルマップを開かずに、駅の付近の電柱の住所を確認すると五の神一丁目。そんなに遠くない場所に福島屋さんがあるはずだ。
駅前から続く大きな道は羽村駅前中央通り。この道をまっすぐ行くと、どんつきに羽村動物園があって、並行して走っている羽村街道は八高線の箱根ヶ崎の方まで続いている。ずどんと抜けた道、気持ちがいい。
向かいから市内を走るコミュニティバス「はむらん」がやってきたけれど、今日はバスを待たずに歩いて目的地まで。
ちょうどお昼時、お腹が空いたなぁと思いながら歩いていると道を挟んでマックとケンタ。誘惑には負けずにどんどん歩く。風の気持ちがいい日でよかった。
数分歩いた先に見える「山梨中央銀行」の看板。頭の中にはTHE BOOMの宮さんの声が流れてくる。『JAPANESKA』の発売は1990年。14歳の自分にワープ。やっぱり今日は中央線に乗ればよかったかなぁ。「夜を越え、僕を乗せて」のストリングスが盛り上がってくる曲の終盤あたりで福島屋さんが見えてきた。
1971年に酒、雑貨店「有限会社福島屋」としてスタートした。1980年の2月に「株式会社福島屋」に社名を変更してから42年。羽村本店、立川、六本木、秋葉原店の他にも、定食を中心にした飲食店「福島屋食堂」も虎ノ門ヒルズで営業している。いいスーパーだとあちこちで耳にはしていたけれど、訪れるのは初めて。福島屋本店の向かいに業務用スーパー「ファンタスクラブ」、園芸店の「サインフラワー」、ロールケーキ専門店「kuru-maru」とイタリアンレストラン「ゾナヴォーチェ」がずらっと並ぶ。
スーパーにまず立ち寄りたい気持ちはあるのだけれど、やっぱり食欲には勝てません。今日は「ゾナヴォーチェ」でピザを食べるのを楽しみにしてきたんです。
ロールケーキのショーケースを外から眺め、園芸店で19日が敬老の日であることに気づき、ピザの待つ「ゾナヴォーチェ」へ。
店の外のイーゼルに置かれたメニューにはパスタランチとピザランチの写真。パスタの気分でもあるなぁ。こういう時、一人で来たことを後悔する。天井の高い、広い店内。お店に入るとすぐコーヒー、焼き菓子、パンを販売する場所があって、そのすぐ先には大きな薪窯。女性が一人でクッキーを焼いている。
「こちらのお席にどうぞ。」
案内していただいたのはお菓子を焼く薪窯とピザを焼く窯の両方が見える特等席。ピザの窯はお店のど真ん中にあって、ピザを窯に入れたり取り出したりするあの道具が3本立てかけられている。あの道具、そういえば名前を知らなかった。あの道具がないと、窯の奥のほうまでピザを届けられないし、取り出すこともできないんですよね。あの道具のおかげで、今まで何度もおいしいピザをお腹におさめてきたのに、名前を調べようと思ったことがなかったなんて。教えて、グーグル先生!「ピザを窯に入れる時、取り出す時に使う先端が平らな棒状の道具を主にパーラーといいます」。パーラー。パーラー!思ってもみない名前でした。フルーツパーラーとかパチンコ屋さんも想像してしまう、ピザを窯に入れる道具パーラー。福島屋さんと一緒に刻み込まれました。
「ドリンクはあちらのバーからどうぞ。サラダもすぐお持ちしますね。」
自家製のアイスコーヒーというのも気になりつつ、いいお散歩距離だったこともあって、いったんオレンジジュースでのどを潤す。はぁ、少し落ち着こう。
特等席の前でじゃんじゃん焼けていくクッキーたち。甘い香りにお腹がグーグー鳴る。おそらくクッキーに使われているであろう素焚糖20kgの袋を眺めつつ、その味を想像する。グラニュー糖より、やさしい甘さのはずだ。オーブンで焼くよりも、窯の火力なら一気に水分が飛んでいくだろうから、サクッとした食感になるはず。帰りに必ず買ってかえろう。
そんな妄想で飽きずに時間を重ねていると、サラダがやってきました。
一番びっくりしたのは玉ねぎ。めちゃくちゃ甘いんです。焼き色がついていないから蒸してあるのかな。
塩とオリーブオイルとパルミジャーノ。シンプルな味付けだけに、野菜の味がダイレクトにやってきてしまう。とうもろこしも、ラペも全部おいしかった。福島屋さんでのお買い物がより楽しみになる。
ピザを待つ間、パンも美味しそうに焼けていく。使い込まれた食パン用の型。カンと叩いたらするっと食パンがはずれるんだろうなぁ。
ランチのピザは4種類。基本のマルゲリータ、白のマルゲリータビアンカ、アンチョビの乗ったロマーナ、ツナと夏野菜のピッツァ。迷いに迷って、チョイスしたマルゲリータがいよいよやってまいりました。トマトソースが光ってる!
自慢のピザを美しくみせるために、下になにか置いている、石?と思った正体はピザカッターでした。カトラリーの入った小さな籠からナイフを探した数秒前の自分がはずかしい。
ピザをカットしていると、考えたことのなかったポイントで手が止まりました。カッターがバジルにあたるたび、お腹を刺激するバジルの香りが強くやってくるんです。これは参った。強いバジル、おいしいバジルだ。
チーズをフォークですくって。ここはあえて「救って」という漢字を選びたくなる気持ちですがぎゅーんとすくって、ピザにのせて食べる。バジルの強い香りがまずやってきて、そのあとにトマトソース。きれいな味。ソースの向こうに生のトマトの時のおいしさを感じるきれいな味。ピザの耳の香ばしさとアイスコーヒーの苦味が口の中で握手する。
シンプルなピザがおいしいって最高だよねと、しみじみ思う。同時に他のピザも食べてみたくなるし、パスタの味も気になり出す。
ピザをぺろりと平らげて、いざスーパーへgo!なのですが、業務用スーパーのファンタスも福島屋さんの本店も楽しすぎたので、この続きはまた来週。
台風の動向も心配ですが、みなさまたのしい連休の日々をお過ごしくださいませ。