Find my Tokyo.
最近、空がきれいですよね。ベランダで洗濯物を干しながら、真っ青な空と真っ白な入道雲を見ていたら、そのまま海に走って行きたい気持ちになることがしばしば。我が家のある代々木上原から海まで走って行こうと思ったら、何時間のランニングになるんだろう。すぐ近くに海のあるニホンコン先生がうらやましい。
そんなことを思いながら、ふと思い出したのが西葛西。
数ヶ月前、地下鉄の中吊りで石原さとみさんが東京メトロの路線の駅を紹介する広告に「西葛西駅」が取り上げられていました。代々木上原駅は千代田線の終点。「東西線」はなかなか利用する機会がないので、西葛西駅を意識したことがありませんでした。「Fine my Tokyo」の広告で、石原さとみさんが立っているのはインドの食材が並ぶお店。西葛西、インド?
江東区に住む先輩に「西葛西ってインドの方がたくさん住んでいらっしゃって、インド料理のお店も多いらしいですね。」と話してみたのですが、返ってきたのは「え?西葛西、インド?」。自分と同じ反応。
わりと近所に住んでいる人でも、西葛西とインドがつながっていないのもなんだか新鮮。
とりあえず「西葛西 インド」で検索してみると、なにやらおいしそうなお店がたくさん。日本ではなかなか見ることのできないインド菓子の専門店もあるらしい。
機会があったら西葛西に行ってみたいと温めていた気持ちが、入道雲のおかげでぱんっと弾けました。葛西には「葛西臨海公園」がある。インド料理を食べて海を見て帰ってくる夏の日、いいじゃんいいじゃん。思い立ったのは山の日。山の日だけど、海へ。そんな予定も悪くないはず。
決めうちで行くのをやめて、街をブラブラ歩く。その時お腹が反応したお店に入ろう。
朝から西葛西に行こうと決めてはいたものの、仕事を片付けてから心置きなく小さなインドを満喫しようと思っていたのが運のつき。千代田線に乗って、大手町で東西線に乗り換えるまでの間に、血の気とお腹がひいていく。時刻は14時。おいしいカレーのために朝はジュースで済ませ、昼ごはんは抜いている。
事前にあんまり検索しすぎなかったのも運のつき。移動中に「西葛西 インド」と再度Googleさんに尋ねると「もうすぐ営業終了」の文字がずらりと並ぶ。こ、これは、高円寺「七面鳥」を最初に訪問した時のパターン。西葛西の駅に到着したら全てが「看板です。」のパターンやないか。
TokyoをFindする前にお店がClosed。ヨガのレジェンド級にお腹が引っ込んでいる状態なのに。
あまり検索しないと決めたきたはずなのに「もうすぐ営業終了」の文字に完敗。西葛西に到着する15時頃に営業しているお店を必死に探す。携帯からスパイスが香ってきそうな魅力的なお店は、のきなみ15時に営業終了。
17時まで葛西臨海公園をぶらぶらして、夜の営業に戻ってくる手もある。腹ペコだし、とりあえず西葛西までは行ってみるか。
東西線が荒川を超えると、最初に到着するのが西葛西駅。コンピューターの2000年問題。IT大国になりつつあったインドから、たくさんの技術者が日本に派遣されてきたことが、西葛西がリトルインディアになるきっかけだったそうだ。観光庁や銀行・保険会社など、大手町や茅場町で働くインドの方々。通勤に便利なで、大規模な集合住宅の多かった西葛西は何百人単位で来日した技術者の方々の住まいを確保しやすかったそうだ。
ベジタリアンや単身者の多かったインドの技術者のためにできた最初の食堂「カルカッタ」はおいしいと評判のお店。15時直前に西葛西に到着。もちろん閉まっているとわかっていても、場所だけは確かめたい食いしん坊ごころ。カルカッタは次回必ずリベンジ。
ブラブラと駅の周りを歩いていると、Find my Tokyoのポスターにも載っていたインド菓子のお店を発見。「トウキョウミタイワラ」ミタイというのは、お祝いやお祭りにかかせないインドのお菓子のことなのだとか。
以前、インド旅行のお土産にいただいたミタイ。かなり激しい甘さのお菓子には、ひとつ食べ終えるのが大変だった思い出が。でもせっかく西葛西までやってきたし、ミタイといってもいろんな種類があるからチャレンジ。お店の前でメニューを見てみると、軽い食事もできるようだ。神様仏様シバ神様。はらぺこを救う救世主が、思わぬところで現れました。
「こんにちは〜。」美しいガラスのショーケースに目を奪われていると、「食べて帰りますか?お二階へどうぞ。」ときれいな日本語で2階を案内される。
少し急な階段を上がる間にも、マスクごしにほんのりカレーの匂い。朝から食事を我慢してきた甲斐があった、おいしそうな香り!
テーブル席に日本人のお客さんが1組とインド人のご夫妻が1組。インド人の方が食べているお皿が気になってチラ見。アイスクリームの器のようなものに入っているデザートはなんだろう。
「メニューをどうぞ。」これまたきれいな日本語でインド人の店員さんが、メニューを2枚置いていってくれる。どれもこれも、初めてみる名前。写真と説明がなかったら、頼めないものばかり。ちょっと海外の食堂へ旅をしている気分だ。
はらぺこだから早くメニューをチョイスしたいのだけれど、一筋縄ではいかないラインナップ。料理の中身がよくわからなくて食べたいものがなかなか決められないのも、そういえば旅の中の楽しい時間だった。
しばしメニューを読み込んで、豆のカレーと「バトゥーレ」というインドの揚げパンがセットになったメニューを頼む。せっかくインド菓子専門店に来たのだから、デザートも頼まないと。アイスクリームの器に入っていたデザートが気になりつつ、店員さんにおすすめを聞いてみる。
「ラス マライ」と、迷うことなく呪文のような答えが返ってきた。「ラス マライ」3回唱えたらランプの中からジニーが出てきて、願いを叶えてくれそうなデザートの正体は、濃厚なミルクに浸かったカッテージチーズでした。
インドといえば紅茶。チャイも注文する。
どんなランチになるんだろうと楽しみに待っていると、あまり待たずに豆のカレーがやってきました。「バトゥーレ」どでかい。
はぁ〜。油のいい匂い。待ちきれずに熱々のバトゥーレをちぎる。生地がはなれていくのと同じスピードで甘い香りが漂ってくる。この匂いを吸い込むことができただけでも、西葛西に来てよかった。
ベタな広告のように目を閉じて生地を味わう。ナンよりもふわりと軽い食感。さぁ、早くカレーと一緒に食べよう。おおぶりのひよこ豆がごろごろ。豆のカレーなのに、肉のような食感。
トッピングの赤玉ねぎとチャツネものせて、一緒に食べてみる。玉ねぎの辛味とチャツネの甘さがスパイスの合間にひょっこりとやってきて、これまた違った味わい。おいしい。
夢中でカレーを食べていたら、チャイがやってきた。壺のようないれものに入ったチャイは甘いのかと思ったら、ノンシュガー。お好みで砂糖をいれるタイプでした。チャイはホットしかなかったのだけれど、これはホットで飲むべきお茶だ。カレーの合間にうまいチャイ。またしみじみ、目を閉じるタイム。
そしてやってきた、呪文を唱えても願いが叶うかはわからない店員さんオススメのデザート。黄色はサフランだったのか。インドのご夫妻が食べていた、アイスクリームの器に入っていたのはこれ。到着してから味が気になって仕方がないけれど、まずはカレーを平らげる。
ついにデザートタイム。未知の未知の食べ物。一旦、匂いをかいでみる。ほんのりサフランの香り。その他にこれといった強烈な匂いはなし。黄色に染まったミルクを、スプーンですくう。アーモンドのスライス、ピスタチオ、カルダモンがミルクの中に静かに潜んでいた。アーモンドとピスタチオもミルクと一緒にすくって一口。
なんとも、今まで味わったことのない味。サフランの香りがやっぱり聞いていて、ミルクを飲んだはずなのに口の中はサフランライスを食べたあとのような状況になっている。まか不思議。
だいぶ甘みも強いのでこのミルクをそのまま、先ほどの甘くないチャイに入れたらおいしいかもしれないとも思ったのだけれど、デザートの甘みを緩和するのに砂糖なしのチャイは、そのままジャストステイしてもらっておいた方が良さそうだ。
いよいよカッテージチーズの部分に突入。食べ慣れているチーズを想像して口にふくんで、めんくらう日本人。それはわたしです。食感にびっくり。カッテージチーズみたいに、ほろほろ崩れないんですよ。ネトっともしていない。ふかふかしたあんまんの花巻の部分をぎゅっとした感じ。噛んでいるとサフランライスの風がそよそよ吹いてくる。
まだまだ食べたことのないものが、世の中にはいっぱいある。
久しぶりに味わう事前に全く想像できない味、想像を超える食感との出会い。ザッツ旅気分。
お腹がいっぱい、心もいっぱいだけれど、お菓子コーナーも外すわけにはいかない。
一見月餅のような風貌のまあるい子「ペダってどんなお菓子ですか?」「ペダはミルクを固めたお菓子です。」
「このペサンラドゥは、何でできているんですか?」
「ペサンラドゥはひよこ豆を固めたお菓子です。グラムでいくらという表示だけれど、1個ずつでも大丈夫ですよ。」ちょこっとずつ食べてみたいので、気になるお菓子をひとつずつ。
「1個ずつでも大丈夫ですよ」と言ってくれた店員さんにひとつずつでと注文したら、「1個ずつでいいの?」と再確認されたということは。みんなこのお菓子たちを大量に買ってかえるんですね。その言葉にへぇとうなづきながら、ありがとうございましたと伝えて店を出る。
西葛西編、長くなりそうなので続きはまた来週。
台風が近づいていますが、みなさまどうぞ安全にお過ごしいただけますように。よい週末をお過ごしくださいませ!