お裾分けと新しい道具。

先週作ったキムチ。「食べたい!」と言ってくれたSAKRAJPのリーダーぐっさんにお裾分けをしてきました。「つまらないものですが」と目上の方に手土産を持っていく時に使っていた言葉。最近全く使わなくなりましたが、お裾分けの「すそ」は着物の地面に近い末端の部分。そこから意味が転じて「つまらないもの」という意味になったのだとか。自分の中の「お裾分け」のイメージって、つまらないものを渡すというよりは、おいしかったから、いいものだからお分けするイメージでした。お裾分けは「お福分け」とも呼ばれるそうで。なんだかそっちのほうが嬉しい言葉だな。でも自分が作ったものをお福分けと呼ぶのは、さすがにちょっと気が引ける。と、感じてしまうのも日本人ぽいな、と思ったりしております。

キムチの好みも人によって全く違う。果たしてぐっさんのお口に合うかどうか。我が家ではおいしい票が入ったけれど、お気に召さない味だったら、たくさんお裾分けするのは申し訳ないことになる。すぐ食べられるサイズにキムチをカット。1食か2食分くらいがちょうどいいかな。キムチはお裾分け程度だから、一緒に食べたらおいしいお肉とサンチュもセットにして袋につめる。

ご近所さんと笹塚の駅で待ち合わせ。キムチを届けて、コーヒーをご馳走になって帰ってきました。車で甲州街道を走る時、いつも気になっていた「Dear All」さんへ。佇まいがきりっとしていて、きっとおいしいコーヒーが飲めるんだろうなと思っていたお店。

酸味ある豆。ドライフルーツの香りのするおいしいコーヒー。居心地がよくて、ハンドドリップのコーヒーもおかわり。自宅からそう離れていないところで、また行きたいコーヒー屋さんが増えて嬉しい。

相変わらずパンも焼いてますと話をしながら笹塚の駅でぐっさんと別れる。週に一回は手を動かそうと決めたパン修行。今週はミルクハースというパンを焼きました。

基本のレシピはmochaさんの動画より。強力粉235g、ココアパウダー15g、きび砂糖20g、塩5g、ドライイースト 3g、人肌に温めたミルク180ml。バターを練り込むパンは初。15g入ります。オリジナルのレシピでは、チョコチップとナッツが入っていましたが、フルーツを入れたパンを作ってみたくて、オレンジピールを40g入れてみることにしました。

粉をサクサクとよく合わせる。
ミルクを入れるスペースを空けて、粉の土手の上に塩をふる。
人肌に温めたミルクにドライイースト 。活発に動ける温度。ミルクは温めすぎず、冷たすぎず。
生地とミルクを混ぜていく。
生地がある程度まとまったところでまな板に取り出し、捏ねる。
捏ねるパン。前回作った食パンは上手にいかなかったので、少しトラウマ。
今回は、生地の伸びと触感が悪くないんです。すーっと伸びる。
生地がつやっとしてきたら、バターを練り込む。バターを入れて捏ねるのも、初の体験。うまく練り込めるのか。またやってきた緊張感。
室温に戻しておいたバターを練り込む。生地がつるんつるんと滑りだす。むむ、きちんと混ざるかな。さっきよりも力をこめて、ぐぐっと練り込んでいく。
全体にバターが混ざってくるとまな板に生地がペタペタと。ひとまとまりになるように、さらに力を入れて捏ね続ける。
根気よく捏ねていくと、おいしそうな生地になってきました。
まあるくまとめて一次発酵。今日は少し気温も暖かい。イーストさん、頼みます!
1時間後。倍のサイズに膨らみました。ここまでは、美味しく焼けそうな予感しかないけれど果たして。
きれいに発酵してくれた生地は、ボールからつるっと離れます。
カードでスパッと半分に切って、ひとつずつ丸めます。
硬く絞った濡れ布巾をかけて、しばし休憩。ベンチタイム。
上からぷすっと押して、ガスを抜きます。生地の手触り、なめらかで良い感じ。
綿棒で均一の厚さになるように伸ばす。すーっと伸びる気持ちの良さ。
チョコチップとオレンジピールを散らす。焦げ茶とオレンジ。いい色合い。
全体に散らしたら。
両端を畳んで、その上にもチョコチップとオレンジピール。
手前からくるくる巻いて。
巻き終わるとどっしり。でもミルクとバターの入った生地はしっとり。
巻き終わった生地を天板の上で2次発酵。30分では膨らみが足りず、プラス15分。
パンの発酵を待つ間、やっと届いた新しい道具を開封する。クープ ナイフと申します。パンにきれいに切り込みを入れてくれる道具。
刃を包んでいるパッケージのハングルを見て嬉しくなる。도루코=ドルコと書いてあります。
ナイフの柄の部分と刃の部分。これであっているのかな。指がぴっと切れそうな薄い刃。画像検索をしながら、おそるおそる取り付ける。
包丁よりも、しっかり深くクープ が入る。これはすごい!切り込みを入れる時の気持ちよさ。新しい道具が、新しいパンを焼くやる気の着火剤になる。
あまりに気持ちよく切れ目が入るので、クープだいぶ多めのミルクハース。予熱したオーブン200℃で20分焼きます。
焼き上がり。あぁぁぁ。多めに入れすぎたクープから、チョコやオレンジがはみ出る。うまくいったと思ったら、やっぱり最後に何かある。
出来上がり写真を撮る時は、くるっとひっくり返せばよし。うん、こっちから見ると完璧。
ふたつ並んだ姿、かわいくて愛おしい。右側の1号はコアラみたい。

肝心のお味は。ココアのほろ苦さとオレンジピールのほろ苦さがばっちり!おいしく焼けました。ココアを入れた生地のパン。バニラのアイスクリームをのっけて食べるのが絶品なんです。

作ったキムチをお裾分けしたり、相変わらずパンを焼いたり。そんな日々を過ごしながら、今週一番気になっていたことは、やはりウクライナのことでした。旅に出られるようになったら、東欧は必ず行きたい場所。東欧の刺繍を巡る旅をしたいと、いろんな場所を調べていました。その中でもウクライナの刺繍はとても美しい。ソロチカと呼ばれる民族衣装。ソロチカとはウクライナ語で40を表す「copoк」ソーロクから来ている。40という数字は、糸の太さを表す番手のことで、細い糸を使った高級な布という意味があったのだそうです。

刺繍の色にも意味がある。赤は人生の喜び、情熱や愛。黒は永遠。ウクライナの国旗の色、青は健康、黄色は若さや幸福を表している。袖や襟元、裾などの外の世界との境目に施される刺繍は、病気や悪霊などの悪しきものから身を守るための魔除の意味がある。

刺繍の他には食べ物のこと。ボルシチは、実はウクライナが発祥の地であるとか、半分に割るとバターが溶け出すチキンキエフを現地で食べてみたいとか。その程度の知識しかなかった状態で、Netflixの『Winter on Fire』という作品を見ました。2013年11月19日EU加盟の公約を守らないヤヌコーヴィチ大統領に抗議をする学生のデモから始まり、2014年の5月に大統領選挙が行われることが約束されるまでの市民の闘いを追ったドキュメンタリーでした。その中で翻訳者の女性が語っていた「自由と人間としての尊厳」という言葉。メモを取りながら、胸がとても苦しくなりました。2013年といえば9年前。遠く離れていない年の出来事でも、自分の目が向いていなければ何も知らないままでいてしまう。まずは寄付など、今日本にいる自分ができることをすることと、目を向け続けること。無事を祈ることのほかにできること。落ち着いて考えたいと思います。

今日も読んでくださってありがとうございました。みなさま、どうぞあたたかい週末をお過ごしください。

こいけはなえの気になるもの。

(毎週土曜日更新)
マネージメントを中心に料理家と一緒にand recipeという会社をやってます。とにかく旅が好き。

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