宝を探しに。
おはこんばんちは。飯塚です。
日本はオリンピックが話題になっていますか?
雪も降らないのでウィンタースポーツ自体が存在しないアイルランド。
代表選手はアイルランド籍を持つアメリカ人やフランス人だったりします。
大会前にニュースで紹介されてはいましたが、選手のインタビューはアイリッシュ訛りではない英語でした。
前回の冬季オリンピックもそうでしたがメダル争いもないため誰も話題にしないしニュースにもならない。
更に今回は中国批判目的で極力無視する意向なのがわかりやすいほど。
ニュースも新聞もラグビーを報じてます。
日本は選手層が厚いし今回は特に時差もないから盛り上がりますよね。
この国にいると一生オリンピックは開催されてないような気分になります。
ずっと気になってたある店。
アイルランドの田舎の村に住んでいます。
歩いて15分圏内にあるのはスーパー一軒、美容院一軒、不動産屋一軒、ハンバーガー屋、パブ二軒。
車で5分圏内だとガソリンスタンド兼車の修理屋、郵便局、レストラン一軒、パブ三軒、アンティークショップ一軒。
車で5分圏内にスーパー一軒、レストランも一軒しかないのにパブだけは五軒もある。
アイルランドの田舎アルアル。
店はなくてもパブだけはある。
そして謎のアンティークショップ。
表に割と大きく看板をだすこの店、幹線道路沿いにあり、我が家から町に出る時は必ず前を通る。
ただ、一度も開いてるのを見た事がなかったので閉店したんだろうと思っていた。
それなのにFacebookページもある。
いったいいつやっているんだろう。
住んで8年、初めて行くチャンスが訪れた!
実は週末の午後2時から5時のみ開店している、と最近知りました。
昨年11月末、この開店時間にたまたま息子1号と赤児だけを乗せて前を通りかかり。
あ!アンティークショップやってる!
通り過ぎて、路肩に一時停車。
息子1号7歳に、「ねぇ、アンティークショップ見てみる?」
子「アンティークショップって何?」
私「昔の物や人が売った物だけが置いてる店だよ。」
息子「面白そう。行きたい」
私「壊れやすい食器やグラスがたくさんあるから走ったり、触ってはダメだよ。約束できる?」
息子「わかった。約束する」
Uターンしてお店の前に停車。
今まで素通りしていたこの道に謎のアンティークショップがあるなんて。7歳児はちょっとワクワクしていたようだ。
中に入ると割と広い店内に食器や古い家具、インテリア装飾がずらりと並ぶ。
見た事ない風合いの物ばかりに圧倒されながら、7歳児はそれなりに品定めをしていたようだ。
店の奥でお皿を見ている私に、
「これ、買ってもいい?」
€のマークが入った長財布。海外のお金と日本のお金、ユーロのお金をごちゃごちゃに保管しているこの子には確かに必要だ。
ユーロだけを入れる財布または貯金箱、いるよね。見た目のダサさは気にならない。
「あそこにいるオーナーに値段を聞いてごらん。」
レジに行き、これいくらですか?と聞きに行くと、70代位の品の良さげな店主のおじさまは
「ママが良いっていうなら、君にあげるよ。持ってきなさい。」
という声が遠くからもはっきり聞き取れた。7歳児はその真意を理解できないようで不思議そうに立ち尽くしている。
見かねた私が代わりに答える。
「いや、そんな悪いですからお支払いします!」
店主「いや、いいですよ」
「本当ですか。ありがとうございます」
これはまずい、もらいっぱなしで帰れないじゃん!
慌てて何かを買わなければ、とエッグスタンドを買って帰る事に。
息子はこの財布をホクホク笑顔で握りしめ、帰宅するや否や手持ちのユーロのお金を財布に移した。
きっとまた何か出会いがあるはずと。
その日以来、この店の前を通ると
「今日はアンティークショップやってないね」
と気にかけるようになった息子1号。
そして2ヶ月過ぎた頃
息子1号は「アンティークショップに行きたい」
と言い始めた。
3歳の息子2号も兄貴が口にするアンティークショップとやらが気になる様子。わからないけどとりあえず
「僕もアンティークショップ行きたい」
実は母も行きたいのでした。
じゃ、行こうか!
特に予定がない土曜日の午後、車をいつもの道へと走らせる。
今回は3歳児も連れて。
この子も最近は状況を理解できるようになってきたしな。
もちろん、走るな、触るな、暴れるな、と事前にしつこいほど言い聞かせて。
ドアを開け、男児達は静かに歩きながら品定めを始める。
店内はお皿などがほとんど、それでも古い物ばかりが並ぶ見慣れない雰囲気は3歳児までも魅了しているようだ。
なぜかイタチやリスの剥製も。
私「見て。あれ、偽物じゃないんだよ」
息子1号「あれ、欲しい!買って。」
私「嫌だよ。ママの家には置かないよ。大きくなって自分の家に住んだら買いなさいよ。」
ガラクタにも需要がある。
それ以外は前回と同様、気に入った物を一つ一つオーナーのところへ持って値段を聞く子供達。
その度に「it’s ok. You can take it.」持っていきなさい。
と言うオーナー。
子供達が欲しがる物はなぜか無料。
ま、確かに子供達が選ぶ物は値段が書いてなくてガラクタみたいな扱いなんだろう。
こんなの誰が買うんだ?みたいな物、こういう子供達の為に置いてるのか。
もちろん無礼は禁物だけど。
「ありがとうございます。前もこの子はすごく喜んでいて。本当は子供達を連れて来るような場所じゃないのにすみません。」
優しいオーナーからは「いや、子供がこういうのに興味を持つのは良い事ですよ」と、ありがたいお言葉。
今日は本格的に私も買い物して帰らねば。
子供達が嬉しげに両手に戦利品を抱えてるのに、無銭で店を出るなどあり得ない。
と言うより、実は私もここで買い物したかったのだ。
最近ポーリッシュのマグカップも買ったばかりなのに、カップとソーサーと小皿セットの、可愛いなぁ。
コーヒーとケーキをこれでお客様に出すのも洒落てる。全くタイプの違う二つのセットと小皿を二枚、レジに持って行く。
イメージの中には現実のおもちゃがばら撒かれたカオスなリビングはないことになっているのが恐ろしい。
アンティークショップは子供にとってのアミューズメントショップだ。
私と息子二人、それぞれが気に入った物を抱えてホクホクしながら帰路に着く。
息子1号はさっそく購入したシンプソンズのマグカップでカップスープを飲みたい、と言う。
息子2号はなぜか欲しがった靴のブラシを頭のブラシと勘違いして髪の毛をとぎはじめた。
うわー、やめれ!それ、靴のブラシだよ!
子供達が夫に戦利品を無邪気に見せびらかす様子をみながら、アンティークショップは本物のトレジャーハンティング出来る場所なんだ、と改めて気付いた。
そういえば、私もフランスの蚤の市に心を躍らせてグラスやペンダントヘッドを買ったなぁ。
今日しか出会えないのがアンティーク。
かつてどこかで、誰かが使った物たち、それを見初めるから掘り出し物、などと言い、高揚感を味わえる。
きっとまたこの子たちはあの店に行きたい、と言うだろう。
私も気になったお皿、本当は他にもたくさんあった。
これから行くたびに少しづつお気に入りのお皿を増やして行こう。