牛肉麺
ニーハオ、ニホンコンです。
美味しいか美味しくないか分からないけど、懐かしい食べ物って
ありますか。
私にはあります。「牛肉面 niú ròu miàn」ニュウロウミェンです。
私が北京に留学をしていた時、学校の構内にこの牛肉麺屋さんがあり、
12時に授業が終わると現地の学生に紛れて食べていました。
(確か、日本円にして数十円だったような)
時はまだ90年代、中国語で香菜(xiāng cài)と呼び、日本で今や市民権得まくり
何なら家でも育てているくらいな「パクチー」は、当時は食べたこともなく、
「なんじゃこりゃ!この変なにおいの草は!!」とたいそう驚いた記憶が。
それが今や、日本で「蘭州牛肉麺」という名で食べられる日が来るとは。
蘭州というのは、甘粛省蘭州市。ちょうどシルクロードの途中です。
中国の西北部に位置し、中国の北は小麦が多くとれるため、麺文化も盛ん。
(南にも麺文化はありますが、こちらは米文化。麺も「米線(mǐ xiàn)」という
ベトナムのフォーの細い版のようなラーメンがあります、こちらも美味し)
というワケで行ってきました神保町
今日は本がメインではなく、麺なので、チラ見しながらもずんずん歩きます。
馬子禄(mǎ zǐ lù マーズールー)神保町店
中国人の学生からも池袋の美味しい牛肉麺屋さんをいくつか聞いてはいたものの、リアル中国人の
おススメはホントにパンチが強いので、私の嗅覚ではここ一択。なぜって、蘭州にある本店は
100年以上の歴史を誇り、国から認められた老舗「中国老字号」に認定されたんだとか。
日本ではようやく「ハラル」という言葉が浸透しましたが、中国では以前から「清真」
という言葉があります。イスラム教徒も一定数いる中国。これがお店の看板にあると
「ああ、イスラム教徒向けのお店だな」と一目で分かるのです。
次にいつ来れるか分からない旅行客のごとく、今日はもうガッツリ食べようと決めており。
①牛肉面②茴香水饺(huí xiāng shuǐ jiǎo / ウイキョウの水餃子)
③酸梅汤(suān méi tāng / スッパイ梅ジュース)
店員さんに伝える「ニュウロウミェンと、フゥォイシャンシュイジャオと
シュンムイトンください」。
こういう固有名詞、現地で覚えた言葉で言うほうが慣れている。しかし、
最後の酸梅汤は香港でよく飲んでいたので、下手くそな広東語になった。
店内を見渡しても、誰もそんな頼んでない。たぶん、私が注文チャンピオン。
道理で、店員さんも「えっ?」ってなった筈だ。だって、蘭州ラーメンやさんで
2000円近くオーダーしてる私、たぶんオーダーし間違えてる外国人だと
思われてるであろう。
しかし店内は満席。そして、ひっきりなしにお客さんが入ってくる。
お客さんの半分は中国人で、そして半分は日本人といったところでしょうか。
やってきました牛肉麵!
パチパチパチパチー!拝啓牛肉麺さま、大変ご無沙汰しております。私が北京で出会ってから
25年が経とうとしています。当時は大嫌いだったパクチーも、最後はアナタなくしては
食べられなくなったほどでした。
そして、トッピングの牛肉さま、日本ではあなたのようなペラッペラで薄っぺらいお方は
お見かけしませんでしたが、健在でしたか。ちなみに清真=ハラルでは豚肉は食べず、
それゆえ牛肉なのだというのを、随分後になって学びました。
と、懐かしい思いと共にズルズルと食べる。「そーそー!この味!」
麺をすすると共に辛さも入ってきて食べたいと咳き込みたいが同時にやってくるという
困った麺。そして、美味しい以前にもう、終始「懐かしい!」フレーバーで終始幸せでした。
梅ジュースも運ばれてきました。コレコレ。ぐびぐび―。
このジュース、私は香港の街角でよく飲んでました。夏の暑い日にスッキリする。
清涼飲料で、かの西太后も愛飲していたそうです。
一口のんで思いました。これは飲みやすい。そして、分かったのは、香港バージョンは、
ほぼ原液かと思われるこの何十倍もの濃さで、だから喉がヒリヒリしたんだと。
日本でウイキョウ(フェンネル)なんてあまり食べないのですが、中華では結構あります。
パクチーとセロリの親戚みたいな感じで、シャキシャキしてるわ、いい香りだわで美味しい。
そして、黒酢で頂くのも中華ならでは。そして、よかったこの量で。これなら食べきれる。
そりゃあ厨房撮りたいです
ここの自慢は全て手打ち麺。麺も平麺、細麺、三角麺など、全9種類ものバリエーションをもち、
それぞれオーダーに合わせて作ってくれるという。
ここはもう、外国人観光客のごとく「写真とっていいですかー?」と奥の厨房へ行く。
何なら中にも入りたかったけど、もうずっと満席でフル回転だったため、それは諦める。
本場蘭州あたりだと、コックさんは全員イスラム教の、ちょっとアラビア顔の中国人たち。
またそれがシルクロードの真ん中っぽくて、とても不思議な感覚になるのです。
わたしは時々中華が食べたくなることがあり、家でせっせと青椒肉絲だの麻婆豆腐だのを
作っていますが、ガッツリ本気モードの中華を食べたくなるとこうして出かけていきます。
それは、味覚以上に、中国にいた時のように「なんだかアウェイ」で「ちょっと困る」
ような体験をしたいのかもしれません。
当時、言葉もよく出来なくて困ったこと、食や生活面でもスムーズにゆかないことが
沢山あり、困ることだらけでした。
牛肉麺は、その思い出の中でもかなり初期に、そしてガツンとやられた一品で、
だからこそ思い出深いのかもしれません。
でも必死だった当時は思い返せばキラキラしていて、苦労は買って背負った甲斐が
あったものです。
たぶん、また何だか頑張りたくて、そしてあの時の気持ちになりたくて、
こうしてチャイナ色強めの場所にノコノコと出かけては、必死になるのです。
ああ、また困りにいかなきゃだわ。
11月2日