ハラ違いな東と西。

おはこんばちは。飯塚です。

この話、ニュースに出ていた女性に読んで欲しい。

夫の寿司修行中に日本に一年家族で住んでいた頃に聞いた忘れられないニュースがあります。

母乳が出なくて悩んでいる女性が、ネットで母乳を買いクール宅急便で送ってもらった。

ニュースでは、素人が売買している母乳を買うのは衛生面でも危険なので絶対しないように。
とアナウンスされていました。

冷静に考えたら、どこの誰がいつどんな風に出したかわからない母乳を買い、それを自分の赤児に与えるなんて危ない事なのに。

そんな判断を誤るほどにこの女性は、自分を責めて追い詰められた。

日本における「母乳神話」、また「母乳ハラスメント」の恐ろしさを知りました。

「母乳神話」また「母乳ハラスメント」でググると、ママさん達の愚痴が出てくる、出てくる。

義母や親戚または通りすがりの人にまで「母乳で育ててるの?」とか、「母乳はちゃんと出る?」
などと聞かれる。

これが母乳の出ない人にはストレスでしかない、と。
そして、母乳で育てないとかわいそうだとか、赤児の情緒に問題がでる、という医学的根拠のない昔の噂話を吹き込む。

100%余計なお世話案件。

ネットで母乳を買った女性、私がアイルランドで経験した事を知れば罪悪感なく粉ミルクを買うだろうに、と思いながらニュースを見た記憶があります。

息子1号を妊娠時の7年前、夫の叔母さんと世間話をしていて。当時の私の英語会話の不十分さからか、彼女には私が母乳ではなく、粉ミルクを与えるものだと思わせてしまいました。

彼女は顔をしかめながら

「そうよね、母乳なんて動物が与えるものだもの。気持ち悪いわよね。人間は栄養がある粉ミルクがあるんだからそれが一番いいのよ。母乳は粉ミルクが買えない貧乏人や途上国の人がやるものよね。」

なんて言うのです。

なんですか、その斬新すぎる価値観は⁈

驚きのあまり口あんぐりしてしまい、どう言葉を返していいか分からず。

しかしこの後、実は彼女に私が母乳を与えるつもりだとわかってしまい、物凄く気不味い雰囲気になりましたが。

私に対する意地悪で言われた訳ではなかったし、ある意味マジョリティのアイルランドの価値観を聞けたいい機会でした。

そう、彼女の発言はアイルランドで割と普通の感覚なのです。

新聞などでも度々取り上げられているアイルランドの母乳率の低さ。世界的にも稀なほどだそうです。

調査によると、三人に一人しか産院入院中に授乳を試そうとせず、退院時に授乳をしていた人はたった37.3%、病院によっては20%以下の所もある。
また、生後6か月の授乳率はヨーロッパ平均25%、世界平均38%に対してアイルランドはたった13%と最近の調査にでている。(出典:アイリッシュタイムズ)

これには色々理由があります。

アイリッシュは日本人ほど我慢をしない

まず、妊娠時から喫煙、飲酒を我慢したので、産後はすぐタバコも酒も再開したい。

というより、実は妊娠時もお構いなく喫煙、飲酒してる人も多い。

大学病院産婦人科の入り口では臨月の女性が喫煙しているのを初めて見た時は我が目を疑いました。が病院行く度にそんな人が必ず数人はいるという現実。

また新生児のベビーカーを押しながら歩きタバコしている女性の姿も珍しくありません。

新聞にも妊婦の飲酒、喫煙率が高いアイルランドは新生児への悪影響が世界的にもワーストだと記事になっていました。

妊娠や子育てで自分の生活に我慢を強いられたくない。

一応、産院内のあちこちに、タバコをやめましょう。
お酒は控えましょう。

というポスターがありましたし、検診でもよく聞かれました。

妊娠中に禁煙にトライしましょう。というポスター。

出産後は授乳はしんどいし、酒飲みたいし、新生児預けて夜遊びしたいし!と躊躇なく粉ミルクを与えます。

対して日本人は、コレを食べれば母乳が増える、とか、母乳の出に良くないから授乳中はケーキなどたべてはいけない、だなんてストイック。

アイルランドでこの手の話、一度も聞いた事ありません。

元凶はミルク会社の策略

また、最近新聞で暴露的に記事になったのが、粉ミルク会社が病院のスポンサーになっている為、産婦人科が母乳ではなく粉ミルクをママさん達に斡旋する仕組みが出来ている、という話。

本来なら、赤子の免疫力をつけるのに母乳は最適とされているのに、産婦人科の先生は妊婦さんにその教育どころかミルクを勧める。

今回の出産、まるで潜入取材気分でそれを体験しました。

看護婦さん達はママさん達を見回りながら、
「母乳あげるの?ミルクにするの?」
などと聞いて周り、私にも

「あなたの赤ちゃん母乳たりてないからミルクあげた方が良いわよ」

と、液体ミルクのボトルを置いていきました。

病院でいただいた液体ミルク。ヤクルト位な大きさです。

同室の他のママさん達が「授乳はしんどいからミルクにしようと思ってるの」

というのにも、看護婦さん達は「そうよね。ミルクは栄養足りてるしあなたも疲れなくて済むわよ」なんて言ってる始末。

一応院内には授乳の仕方を指導します、というポスターもありましたが。

産院に滞在中は試供品の液体ミルクは無料でいくらでも貰えます。

何社もあるミルク会社が連日、この液体ミルクを産院に納品しているのです。

このサンプリングで、新生児に餌付けをして退院後はスーパーで粉ミルクまたは液体ミルクを買わせる仕組み。

TVのCMも粉ミルク系が多く、「母乳より粉ミルクの方が栄養に優れています」的に謳っているのは、かなり違和感を覚えます。

先週にはラジオでも、アイルランドにおけるミルク会社の圧力で、世間一般的に母乳のメリットが浸透されていない。むしろ母乳を与える事をマイナスに捉えてるのはこの国くらいなものでミルク会社の広告のミスリードは今すぐやめさせた方がいい、と話していました。

酪農王国のアイルランド、輸出において乳製品は要でもあり、粉ミルクもその中の一つ。

最近やっと新聞含め一部のマスコミがミルク会社を批判し始めましたが一般的には母乳のメリットなんてほとんど浸透してないのです。

息子の学校のママ友達のも、授乳は体力を消耗するからすぐやめてミルクで育てた、という人ばかり。

その為、私が授乳してる、というと、

「あなた偉いわ!あんなに大変なのに頑張り屋さんね。」
とか、過剰な反応が返ってくる。

授乳は確かに体力がいる。

このおかげで妊娠太りを解消できるし、試そうともしないアイリッシュの女性達はどんどん巨体になる。

ミルク会社の啓蒙活動は笑えないほど功を奏してます。

西の果ての母乳ハラスメント事情

最後に、私も言われた母乳を与えるのは気持ち悪い、論。

母乳を与えるのは動物、人間は粉ミルクがあるのよ、という話。

人間だって動物ですよ。

世の中には色んな価値観ありますね!
で話は終了したいところですが、これの厄介なのは、旦那さんや義理の両親からも

「授乳なんかやめれ」
と文句を言われ、なぜかママさんは罪悪感を持ちながら授乳をする。

アイルランドに住む日本人女性も、息子さんに母乳育児をしていたけれど、生後6か月位の時に義母から度々

「まだ母乳あげてるの?」

と訝しげに言われ、生後一年の時には

「まだあげてるの?(いい加減やめたら?)」

と言われ、仕方なく止める事にした。

その上、「赤ちゃんが夜泣きするのはあなたがいつまでも授乳したからよ。」
などと小言を毎度言われる。

だそうで。

彼女からすれば100%余計なお世話だし、母乳と夜泣き関係ないし、耳栓でもしたくなりますわな。

西の果ての母乳ハラスメント、日本のそれとは真逆。

とはいえ、ハラスメントの真意は同じ。

ただの余計なお世話。

たいていの人は悪意がない。

医学的・化学的な根拠がない。

どこにいても人にあれこれ言いたい人はいる。

セクハラもそうですけど、いう側には悪意がなくてただ無神経なだけ、言われても気にしない人もいるため、ハラスメントされた側が不愉快さを表明しても、

「そんな些細な事気にしなくていいのに」
としか思わない。

言われる側はネット上で愚痴るしかない。

とりあえずエアー耳栓をギュッと装着、耐えられなくなったら、たまには吠えるのもありかな、と思います。

因みに私の場合は、夫が理解していたのと、私自身の気の強さが元々バレている為、義理の両親からは授乳に関して小言を言われた事はありません。

ただ、私の影響を受けた義理の妹が授乳育児をしたもののやめるタイミングが掴めずお子さんが3歳過ぎてもあげていたので、「日本人の嫁の影響を受けたせいで授乳育児なんかするから」みたいな嫌味は度々言われました。

そんなん知らんがな!

と気づかないふりしてます。

3年半前。
西果て便り

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。