手を替え品を替え。
中学に通う子供の夏休みが1週間延長になりました。8月30日から開始の予定が、9月6日から登校に。学校が始まるとすぐ、9月9日・10日に期末テスト。8月末までグータラ過ごしていた息子。さすがにやばいと、エンジンをかけて勉強をはじめました。朝5時ごろから6時半にかけて何度も携帯の目覚ましが鳴る。全く起きる気配がない日もあって、ピピピピ・ピピピピと鳴り続けるアラームを止めに行く日々。
アラームを止めてから、朝食の準備までの1時間ほど。夜に来ていたメールを返信してしまうと時間がだいぶ余る。前の晩に配信になったNETFLIXのドラマを見る日もあれば、本を開く日もあるのだけれど、朝の時間は勉強にはもってこい。HSKの試験が終わって、勉強の勢いが明かに衰えている中国語。新たにスイッチを入れる方法はないかと、Twitterを見ていると「100回音読」という文字と目が合いました。
韓国語の学習時。音声をiphoneに入れて、会社の行き帰りに教科書を見ながら、ブツブツとシャドーイングを繰り返して通勤していました。その姿を見た同僚から、「なんか話しかけられなくて、ちょっと早足で通り過ぎたよ」と言われたことがあります。集中しすぎて、ちょっと怪しい動きだったのかも。
当時通っていた新大久保語学院という学校の教科書『できる韓国語』のシリーズがシャドーイング、音読のお供。山ほどいろんな教科書を買い漁っても、結局繰り返し使って、声に出して勉強したのはこの教科書だけ。新しい課に進む度冒頭に出てくる会話のフレーズは、身体にしみついていて、今でもふと思い出すことがあります。
中国語の勉強を始めてから、この教科書の会話部分を音読、丸暗記ってやっていなかった。事務所と自宅の距離が近くなったこともあって、通勤時間を語学の勉強に当てるということができていない。(試験前の1ヶ月、必死でHello Chineseのアプリをやっていた時。10分弱の徒歩の時間がどれほど貴重で有効なものかと気づいたのですが)
100回音読。毎日は無理かもしれないけれど(やってみなくちゃわからないっちゃわからないけれど)、学習を新しく楽しくする方法の一つにはなるかもしれない。子供のアラームが鳴り続けている間、100回音読を実践している方々のツイートを見ていたら、やる気スイッチを入れてくれそうなアイテムの画像が。交通調査やイベントの入場者数を数える時に使用する数取器・手掌用。これをリビングの目に見えるところに置いていたら、「あ、音読やらなきゃ」と勉強スイッチを入れてくれるかもしれない。ハンズに備品を買いに行ったついでに、早速を購入しました。数取器と書いて、音読スイッチと読む。家を掃除して、大量に使わないものを処分したばっかりなのに。役に立ててくれよ、自分。
音読についての効果は、韓国語で体験済み。なのだけれど、もう一度音読をやることについて、自分の中で整理をしよう。勉強をする際の守り神『独学大全』にも「音読」という項目があった気がして、本を開きました。独学の技法39にありましたありました。音読 Reading Aloud〜身体に刻む読書の原初形態。「音読は、声に出して読むことを言う。」わかっちゃいる。ことだけれど、そもそもなんなんだっけを改めて確認をしてみると、同時にその効果を考える時間にもなる。「つかえずなめらかに音読することは意外に難しい。音読の躓きは理解の不確かなところを浮かび上がらせる。」(ダイヤモンド社刊:読書猿著『独学大全』より)新しい言語を学ぶ時にも、日本語の本を読むときでも。意味がわかっていないところは、読むたびにつかえる。止まる。
数取器も手に入れたことだし、善は急げでやってみるか。会話部分と音声資料のある、中国語会話301の教科書を開きました。独学大全の「演習」の項目に書かれていた「短い文章を音読して、読み終えるまでの時間を計り、読書速度を計算しよう」とあった方法を、100回音読と組み合わせてやってみよう。まず教科書付属の音声を聞き、4声を確認。会話音読1回目、数取器カウンター「0001」。ストップウォッチ開始。頭の「您好」から文末の「谢谢」まで、37秒。途中、4回つっかえる。音読2回目、数取器カウンター「0002」。ストップウォッチ32秒。おお、5秒縮まった。あいかわらず、4回つっかえる。3回目、31秒。4回目30秒。5回目31秒。早くなればいいっていうものでもない。意味が理解できて、4声が正しく、滑らかに言えているのがベストだ。こんな感じで11回音読をしたところで、朝食を作る時間になりました。
朝ごはんを作り、また勉強に戻る。このまま音読を100回続けるとすると、全部で何分かかるんだっけと計算してみる。今回の会話を一つ読み終えるのに、平均30秒。30秒×100回=3000秒。3000秒÷60=50分。思ったより少ない時間で100回音読が達成できてしまう。1日のうち、音読のために50分捻り出す。時間だけを考えると、不可能ではなさそうだ。時間だけ、を考えると…。
「この音読を軸とする素読や暗唱法は、古典の文やフレーズを学習者の身体に刻み込み、反射的・自動的に用いることができるようにするものである。こうして反射的・自動的に出力されるまでに植え付けられた大量のフレーズ・ストックが思考と言語運用のリソースとなるのであり、分野を問わず知的営為に加わる者の間でのコミュニケーションの基盤となった。教養とは、ゆるい乱読の成れの果てではなく、元々このような身体的トレーニングを基礎した者なのである。」(『独学大全』より)
たかが音読。されど音読。独学大全に書かれている「音読」についてのお話は、「本を読んで学ぶ」ことについての様々な方法の中の一つとして書かれたもので、外国語においての音読の効果について書かれたものではない。のだけれど、外国語の学習においてもおおいに当てはまる。留学など、学んでいる言語が常に聞こえている環境で勉強ができない場合は特に。一旦日本語に翻訳して思考するのではなく。学んでいる新しい言語で物事を思考できるようになるまでには、音読を続けることが、言葉とその言葉が意味するものを身体に染み込ませる最善の方法の一つだ。
教科書の会話部分の文字数は大体同じくらいなので、1日最低50分。音読の時間を作ろうと心に決めたところで、はたと気がつきました。ノートや教科書に回数と時間を記入していった時の、数取器の存在って…。
100回の音読。音読の後半は、時間をはかって記入しなくていいかもしれない。カウンターに「0100」が並んだ時の達成感は、次のやる気スイッチを押してくれるかもしれない。数ページしか開かず、積読になっている数々の語学書と同じ箪笥の肥やしにならないように。数取器には活躍してもらおう。
まずは、音読がどれだけ続くか。1日何回くらいできるものなのか。とにかく、やってみるべし。
肌寒かったり、蒸し蒸ししたり。気温の安定しない日々ですが、皆様どうぞよい週末をお過ごしくださいませ。