福を引く。
先週に引き続き、カメラマンの衛藤キヨ子の誕生日祝い散歩をしております、気になるもの。三河島と同じく、ずっと気になっていた三ノ輪橋の商店街「ジョイフル三ノ輪」まで足を伸ばしました。
三河島は荒川区。ジョイフル三ノ輪のある日比谷線三ノ輪駅、都電荒川線三ノ輪橋駅は台東区になります。初めて訪れる場所は、その名前の由来も気になるもの。三つの輪にちなむ物語が、昔々にあったのかなと予測していたのですが。江戸市中の最果て。海岸線に近い場所だった三ノ輪。元々「水の鼻」と呼ばれていたことから転じて、「三ノ輪」という地名になったのだそうです。銀座や月島の辺りは、元々海との境だったことを意識していましたが、この辺りも海辺だったのか。そういえば、三ノ輪橋駅から入る商店街の最初に佃煮屋さんがあった。
都電荒川線三ノ輪橋停留場から荒川一中前停留場の線路と並行する、全長約500メートルの商店街。開業は大正時代。100軒以上の店舗が軒を連ねています。
商店街のアーケードに入ってすぐ、高校生くらいの男の子二人組とすれ違いました。一人はおいしそうに焼き鳥を食べています。商店街で買い食い楽しいよね。
お惣菜が並んでいると、何度も足を留めシャッターを切るキヨちゃん。その姿を見ていると、一緒に韓国を旅していた時を思い出します。都心から少し離れた街まで地下鉄に乗って、在来の市場巡り。「ソンマッ」の回に写真を載せた、市場で見つけたキンパの山。韓国で出会ったキンパの中の、心のベスト10第一位は、あのキンパでした。アーケードの下に華やかな惣菜〜(ダンスフロアーに華やかな光〜のリズムでどうぞ)©️スチャダラパー。
赤、黄色、緑、青。書体もかわいい看板「パンのオオムラ」。小学校の給食で出てきたアルミのお盆においしそうなパンが並んでいます。焼きそばのぎゅっと詰まったコッペパン、大きな豚カツがはみ出しているコッペパンに吸い寄せられてお店の前に立つ。あぁ、りんぐドーナツもおいしそうだ。なんでわたしはこんなにドーナツが好きなんだろ。
「とっても素朴な味だけど、ふわふわしておいしいですよ」
店主のお母さんにすすめられたら、買わないわけにはいきません。クリームパンも大好物なんです。これもください。
酒種の天然酵母を使い、米ぬかの油であげられた優しい味のドーナツ。ぺろりとお腹のなかにおさまりました。クリームパンは明日のお楽しみに。
商店街のちょうど真ん中くらい。コロッケ、焼き鳥、唐揚げから鯵のフライまで。食卓を助けてくれるお惣菜が、これでもかと並んでいる「とりふじ」さんでも買い物をしていきます。ジョイフル三ノ輪を散策した後は、家に戻って誕生日祝いの続きをする予定。焼き鳥買っていこっか。つくね、もも、ネギマにぼんじりもお願いします。レバー食べるよね。後は、何がいい?
「あたしハツをお願いします。あ、一個だけ塩やな。ほか、全部タレのもの買うてるのに」
今日の主役はあなたです。好きなものをたんと選んでくださいまし。
「袋は?」
「お願いします。」
「この券も持っていって。今、あそこで福引やってるから。」
とりふじのお父さんが渡してくれた福引の補助券。ありがとうございます。
「これで、何回できるんやろ。」
補助券5枚で1回できるみたいだね。誕生日だし、キヨちゃんが2回ガラガラ回して。
そういえば福引って、いつからあるものなんでしょう。ジョイフル三ノ輪で福引をするまで、そんなことを考えたこともなかったのですがこの機会に調べてみると。なんと遡ること、奈良時代。時の聖武天皇が天平2年(730年)の行ったお正月の余興が、記録に残る最初なのだそうです。「仁・義・礼・智・信」の文字が書かれた短冊を引かせ、その文字によって物を渡したのが始まりなのだとか。奈良の時代に始まった粋な遊びが1291年の時を経て、三ノ輪の商店街で我らをワクワクさせてくれている。
福引の会場では、小学生の男の子がガラガラを回しているところでした。いい商品当たりますように。小学生の背中に念じながら、少し離れたところで自分たちの番を待つ。
「どうぞ〜」
わたしたちの番がやってきました。
「せっかくだから、1回ずつやろうや。」
そうなの?あたしも1回、回してもいいの?
ガラガラの取手をしっかり握って、180度回す。ガラガラの箱の中で、色とりどりの玉がザザザーっと移動しているのが分かります。久しぶりの重みを掌から感じながら、最後にえいっと力を込めて、あと90度。
ぽとんっ。
紫の玉がひとつ落ちてきました。金でもない、銀でもない。ましてや赤でも青でもない。こ、これは良いの?悪いの?ポケットティッシュのコースかな?
「おめでとうございます!」
渡されたのは、100円の文字が輝く緑のお買い物券。やったー!なんだか、ちょうどいい嬉しさ。
続いて、明日が誕生日。間違いなく福を持っているキヨちゃんが回します。ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ。ぽとんっ。
「おめでとうございます!」
続いて落ちてきた玉は…。
なんとまた紫!やったー!合わせて200円のお買い物券だ〜。
せっかくだから、とりふじさんのお父さんのところで買い物していこうか。
お店に戻る途中、景品の内容が書かれた立て看板を見つけました。我ら、4等。3等のマスクより、商店街のお買い物券。なんか嬉しいよね。すごくよかったんじゃない?
「当たりました〜!」100円のお買い物券をヒラヒラふりながら、揚げ物の並んだショーケースに小走りで向かう。「おお」と小さくうなづいて、お父さんがにっと笑ってくれます。
キヨちゃんが気になっていたピーマンの肉詰めを二つ買って、お店を後にしました。ピーマンの肉詰めには、福も詰まっているみたいだね。後もう少し、商店街をブラブラして帰ろう。
大正時代から続くお蕎麦屋さんの「砂場総本家」。昭和29年に建てられた現在の建物は荒川区の文化財の指定を受けているそう。お店はちょうど準備中でした。蕎麦屋についている「砂場・薮・更科」の名前。江戸時代から続く日本の三大老舗につけられる名前だということも、今回初めて知りました。その中でも砂場は大阪が発祥なのだそう。キヨちゃんの出身は大阪。ちょっと呼ばれてる感じがあるよね。次に来た時は、おいしいお蕎麦を食べて帰ろう。
味噌屋さんも気になるし、八百屋さんは値段がとっても安い。スーパーだと野菜は何個かセットになってるけど、ばら売りって嬉しいよね。
せっせと餃子を作っている姿になんとも惹かれて、絶対に買って帰ると決めていた「さかい食品」で最後のお買い物。生の餃子を2パック。お値段、8ケで330円也。野菜たっぷり、ニンニクのきいたおいしい餃子でした。
お腹がいっぱいで今日は食べられなかった「ジョニーの味噌」で極太麺のラーメンも食べないといけないし、「お惣菜の店きく」で紅生姜の天ぷらも食べないといけない。またゆっくりお散歩に来よう、キヨちゃん。
ちょっと名残惜しかったので、帰りは町屋まで都電に乗って。
今日は、ものすごく暑くなりそうですね。皆様、良い週末をお過ごしください。
<お知らせ>
7月22日(木)〜7月25日(日)代々木上原にありますハコギャラリーで小さなお店を開きます。旅で集めた道具とキッチン周りの商品を並べた「旅と台所のマーケット」。お時間ございましたら、ぜひ遊びにいらしてくださいませ。