緊張感。
「我很担心,因为我的儿子病了。」(Wǒ hěn dānxīn, yīnwèi wǒ de érzi bìngle)
私はとても心配しています、私の息子が病気になったからです。
ポロロン!爽やかに流れる正解音。あぁ〜気分爽快。
おはようございます。「早上好。」今日も雨。「今天也下雨。」試験に向けて、中国語漬けの日々を過ごしておりますこいけです。
HSK3級レベルまで500以上の語彙と120以上の文法を教えてくれると評判の、私のもう一人の中国語の先生。iphoneアプリの「Hello Chinese」。一通りやり切ったら、音声を聞いての書き取りもだいぶできるようになってきました。もちろん、まだまだ勉強はせねばならぬのですが…。日本で、東京で。一番実践に近い場所に乗り込んでみたい気持ちがむくむくと湧いてきました。今はヨドバシカメラに行っても中国語が聞こえないし、銀座SIXもしかり。どこか、中国語に溢れている場所ないかな。
そんな折、大好きなフードエッセイスト平野紗季子さんの新刊「味な店」を手に入れました。おいしいがところどころページからはみ出しているのを、ワクワクとめくっていると。225ページの右上に、煌々と輝く黄色い麺の切り抜き写真がありました。こっ、これは、上海で食べた汁なし葱油拌麺じゃない?
見た目はほんとに地味なんです。青ネギを油で黒くなるまでじっくりじっくり根気よく炒め、醤油、砂糖と合わせたタレを平打ちの乾麺に和えたもの。
海老?ノーノー。豚肉?ノーノー。具材はネギのみ。焦げる寸前まで炒めた、ところどころ黒いネギだけ。
ビジュアルだけに注目すると、スルーしてしまいそうな究極シンプル麺なんですが。上海で食べたそれは、口に入れた瞬間に「!」がダララランと並ぶおいしさ。具材はこんなに少ないのに。(っていうか麺とネギ)食べ続けていくと、次々と味の変化があるわけでもないのに。おいしくて、麺をすすり続け、噛み続けてしまう一杯なのです。
あれが日本で食べられる。お店はどこだ?どこだ?
『昔いい感じの人と初めてドライブデートしたとき「どこ行きたい?」と聞かれて咄嗟に「友誼商店!」と答えて夜の池袋に同行してもらいましたが、「思っていたデートと違う」感をバリバリ出されました。はい。お互いの趣味を把握する前に「友誼商店」デートを敢行するのはやめましょう。』(『味な店』平野紗季子著 マハジンハウス刊より)
微妙なお二人の空気まで目の前に浮かんでくるエピソードと共に。中国食材がなんでも揃う池袋西口のディープスポット「友誼商店」に併設されたフードコート「友誼食府」の名前が、書かれていました。友誼ってどういう意味?ほうほう、友情って意味なのか。ここならきっと中国語が溢れている。しかも葱油拌麺が食べられる。一石二鳥。二兎追っちゃう。ということで、打ち合わせ終わりにいざ、池袋へ!
SAKRA.JPをご愛読くださっている方には既視感(私の中国語の老师ニホンコン先生が、以前朝ごはんを食べに行っていた場所でした)。最近読み始めてくださった大半の方には、きっとお初ですよねのお店。
1階の入り口から吸い込まれていく人、人がみんな日本人ではない様子。同じエレベーターになったのも中国か台湾の女性の方でした。エレベーターが4階に到着。チンとオープンするといきなりそこは、景色も聞こえてくる言葉も香りもチャイナ一色。
そうえいば、ディープスポットという単語、使ったのはいつぶりだろう。他にいい言葉が見つからないものかとも思うのですが。ここは、ディープという言葉がしっくりくる。入り口でエレベーターを上がる時からの、ちょっとした緊張感。何かに似ているぞと思っていたのです。あそこもディープ以外の言葉が見つからなかった。2度目の香港で訪れた重慶大厦。予測のつかないカオスに、カバンの紐をぎゅっと握って、ちょっと勇気を出して足を踏み入れるあの感じ。入ってみるとそこは面白いものがいっぱいで。おいしい南インドのカレーを食べ、インドの美女が微笑むトランプを買って帰ってきた。
日本の、池袋の一角にあるけれど。大和産業ビルの4階は、完全に異国でした。
ドリアンって原産地は中国じゃないよね。インド〜マレーシア地域が答えでした。マレー語でドリは「とげ」アンは「果実」を意味するんだ。トゲトゲした果実。ビジュアルそのまんまが君の名前だったのか。ドリドリ、ドリアンは中国語だと何ていうの?すぐ調べてみる。難しい漢字じゃないといいな。フルーツはHSK3級の試験にも出てくる範囲だぞ。「多里安。」当て字のパターンでした。
スイカ、マンゴーなど並んでいるフルーツや野菜の中国語も確認しながら、知らないものはメモして歩く。
料理用の酒は「料酒(liàojiǔ)」リャオジウなんだ。英語にするとwine sauceなのも面白い。日本だと料理酒は日本酒ですが、中国の「料酒」は紹興酒が一般的なんだそうです。日本人には覚えやすい単語だけれど、HSK4級までの単語帳には出てこない言葉。旅に出られようになったら、身近だけれど単語帳には出てこない言葉にも、たくさん出会えるんだよな。
油も種類が豊富です。落花生は中国語で「花生(huāshēng)」。落花生の殻をむくって言いたい時は何ていうんだろう。「剥花生(bōhuāshēng)」。なるほど。花椒油も種類がたくさん置いてある。
今までお目にかかったことにないケンヒーという魚の缶詰。中国語で「鯪魚(língyú)」。wikiさんによれば、「ケンヒーはコイ目コイ科ラベオ亜科に分類される魚。中国東南部、ベトナム及び台湾の川や池などに生息する淡水魚である。」とのこと。豆鼓のコクと砂糖と醤油で甘辛く煮つけた川魚。どんな味がするんだろう。
お酒のコーナーにはお馴染みの紹興酒がずらりと並びます。7年もの、8年ものと寝かせられた年数が入っている。その向かいには、爽やかな色の瓶。なになに?白酒。あ!これ、こないだアプリで出てきたばかり。「〇〇したことがある」の文法。「过」を使った文章に出てきたお酒だ。
「你喝过白酒吗?」あなたは白酒を飲んだことがありますか?
いいえ。飲んだことがありません。その時、白酒ってどんなお酒なのかを調べていたのでした。白酒はウィスキーやウォッカと同じ蒸留酒。トウモロコシやじゃがいも、サツマイモ、エンドウ、米やもち米などを蒸留して作られるそうです。中国の宴会では、乾杯は白酒が定番。「干杯!(=乾杯)」は読んで字の如く、飲み干すのが基本だと辞書にも書かれていました。現物を見たのは今日が初めて。báijiǔ、báijiǔと何度もアプリの音声に合わせて発音したお酒。いつか本場の中華料理を前に、白酒で「干杯!」ができますように。
気になるものがいっぱいで、やっとフードコートにたどり着きました。
羊肉の並ぶ北方料理のお店の横にある四川料理屋さん。坦々麺にも心惹かれます。辛いの食べたい。でも今日は、葱油拌麺を食べると決めている。四川料理のお店の向かいに、上海料理が並ぶコーナーが。ありましたありました。黒く炒められたネギの乗ったシンプル麺。
「要一个这个面」
声ちっちゃ!自信のなさが声のボリュームににじみ出ています。「1」という人差し指のアクションでお店のお母さんもわかってくれたようで「一个?(ひとつ?)」と繰り返してくれました。
一杯500円なり。一緒に勧めてもらった餅米の入った焼売も注文。お金はどこで払うの?
青いカードを渡してもらい、レジでチャージしてもらってきてとのこと。ドキドキしながら、レジでチャージの金額を告げます。
「700日元」
と言ったつもりで、はたと動きがとまりました。今、「チーバイ(700円)」って言ったつもりだったけど「ジウバイ(900円)」って間違ったな。お母さん、すみません。もう一度。
「700日元」
あ、OK!という感じで手をパタンパタンとおりながら、レジのお母さんがカードにチャージをしてくれました。ふーっ。数字、散々やってるのにな。
もち米の詰まった焼売は、見た目よりあっさりした味。パクッと1個平らげました。続いて楽しみにしていたネギの油の麺。沈んだネギの油をぐるぐるとよく絡めていただきます。
上海で食べた時は、麺が乾麺で麺自体に塩気もあって噛むとしこしこ。醤油と砂糖の味がしっかり濃いという舌の記憶だったのですが。ここの麺は茹で麺をもう一度湯どうしして、油を絡めているので、麺は柔らかくツルツルした食感でした。上海で食べた葱油拌麺が美味しすぎたので、比べてしまってはいけないよと脳からすぐに指令が降りてきました。上海の葱油拌麺とは食感がちょっと違いましたが、シュンッと上海に記憶を飛ばしてくれる味でした。
もう少し何か食べたいと、台湾の食べ物を販売するコーナーで蛋餅(ダンピン。台湾の朝ごはんの定番。大好きなんです)と葱油餅(これも台湾に行ったら必ず食べる。永康街の天津蔥抓餅、また行きたいな)のあいのこのようなメニューを頼みました。ネギ入りのサクサクの皮に包まれた半熟の卵たちに、あまじょっぱいタレ。お腹が一気にいっぱいになりましたが、とってもおいしかったです。
ようやく溶けてきた緊張感。池袋にある異国で、久しぶりに初めて訪れる場所に旅した気分を味わいました。試験まであと2週間ちょっと。過去問も繰り返しやらなければ。
次回ここに来る時には、倍くらい音量を上げて注文できるように。
雨続きですが、皆様よい週末をお過ごしください。