#30 ムトーの図書館(4冊目)
こんにちわー。ムトーです。
コロナ、落ち着きませんね。大分県でも最近また一気に感染者が増えてしまっています。
こんな時は、本を紹介します。(本当は、ムトーの図書館は「大分のこの景色の中で読みたい一冊」を紹介するコンセプトなんですが、、今回は自宅から。。)
今回ご紹介する本は、元「千円札おじさん」夏目漱石の短編小説『夢十夜』。
岩波文庫の『夢十夜 他二篇』だと、「夢十夜」の部分は35ページくらい。「他二篇」の分量の方が圧倒的に多い。「夢十夜」は10分くらいですぐに読めちゃう名作です。
夢十夜のタイトルのとおり、「こんな夢を見た」で始まる十の夢の物語。
(同じく「こんな夢を見た」で始まる、黒澤明監督の映画「夢」という作品がありますが、あれは黒澤監督が見た夢を映画にしたものらしいです。)
僕が好きなのは第六夜。
東大寺の金剛力士像を彫ったと言われる仏師、運慶のはなし。
主人公は、有名な仏師 運慶が護国寺の山門で仁王像を彫っているという噂を聞いて散歩がてら行ってみると、運慶の仕事をみるために多くの人が集まっている。野次馬たちの声を気にすることなく、一心に彫っている運慶を見た主人公は、「よくあんなに無造作に彫ってるのに思いのままに彫れるもんだ」というようなことを呟く。
それを聞いた若い男が「あれは眉や鼻を鑿(のみ)で造ってるんじゃない、木の中に埋まっている仁王像をそのまま鑿で掘り出しているだけだ」というようなことを言った。
という、内容。
もともと木に埋まっている仏像を掘り出す作業しているだけ、というのは「んな、アホな」なハナシなんだけど。でも、ときどき、商品のネーミングとか、広告のキャッチコピーとか、「もうそれしかないよな」ってくらいぴったりの言葉が当てられているのを見かけると、この第六夜を思い出すのです。文字の木の中に埋まっている言葉を掘り出したんだな、と。
僕も、なんか、掘り出そう。
妄想旅行社 ムトーツアーズ 代表 武藤