浜田山。

6月27日からNHKBSプレミアムで放送予定のドラマ『ライオンのおやつ』。友人永田琴監督からのお声がけで、and recipeがフードの担当させていただくことになり、撮影現場に通う日々です。

2020年の本屋大賞で2位となった、小川糸さん原作小説のドラマ化。物語は、とある美しい島にあるホスピス「ライオンの家」が舞台です。33歳の主人公「雫」は若くして余命を告げられ、人生の残りの日々をライオンの家で過ごすことを決めて島にやってきます。「常に、誰かの大きな微笑みに見守られているような気持ちになる」(雫の言葉)。そんなライオンの家では、毎週日曜日の3時にお茶会が開かれます。滞在しているゲストがそれぞれの思い出のおやつをリクエストできる。ライオンの家の代表、マドンナによる厳正な抽選で選ばれる毎回1人のリクエスト。思い出に忠実に再現されたおやつは、当日まで明かされない。参加は自由。なんのおやつをリクエストしたらいいか、なかなか決めることのできない雫。

今週のスタートは午前中に立川まで、とあるおやつを届けることから始まりました。行きは新宿から中央線に乗り、立川まで移動。代々木上原までの帰りは、中央線を吉祥寺で降りて井の頭線に乗ることにしました。

自分が雫なら、どんなおやつをリクエストするかな。そんなことを考えていたら、ちょうど高井戸のあたりでグーっとお腹がなりました。次は浜田山。車で近くを通ることはありましたが、電車では高校3年生以来、下車していなかった駅。小学校から高校まで、通っていた学校のグラウンドが狭かったため、毎年運動会は浜田山にあった三井高井戸運動場で行われていました。12年間、年に1回はここに来ていましたが、駅からグラウンドの往復のみ。少し懐かしくなって、浜田山でお昼を食べようと思い立ちました。

今日は携帯を頼らずに、おいしそうだと思ったお店に入る。グーグル検索は禁止にして電車を降ります。ホームに降りた途端、ぷんと強いスパイスの匂いがする。ホームから見える建物に「インドネパールレストラン&バー まいた」の看板がありました。すぐにカレーに惹かれる心を一度クールダウンしつつ、改札を出て地上に上がります。駅前にあるサンブックス浜田山、なんだかいい本屋さんだ。必ず寄って帰ろう。

寄り道をせず12年間駅から直行していたグラウンドは駅を出て左でしたが、今日は右に曲がってみます。この通りは浜田山壱番街という名前の商店街のようです。いつもなら「浜田山 ランチ グルメ」と検索してしまいそうなところ。鞄から携帯は出しません。

少し歩くと、「たんたん亭」というラーメン屋さんの前に開店を待つ人が二人並んでいます。緑の暖簾にある「支那そば」の文字を見て、またお腹がなる。お店が開くまでには、もう少し時間があるようです。

そのまま駅の周りをぐるっと1周すると、香港料理、ベトナム料理のお店がありました。ベトナム料理シクロ。フォーもカレーもおいしそうだ。

井の頭通りに向かう道の方にも商店街が続いていて、成城石井やSEIYUが見える。ランチの営業をしているお店がないかこの通りも見てみるものの、今日はお休みが多いようです。成城石井の並びにあるパティスリーVOISON。おいしいものレーダーが働きますが、残念ながら本日お休み。

毎年運動会のために通っていた運動場。今日のSAKRAJPを書くために調べたら、現在は無くなっていました。昭和8年に浜田山の駅が開業して、昭和11年から70年ほど続いたグラウンド。運動会の開催日は毎年、なぜか台風が去った後の晴れの日が多かった。運動会のハイライト、50m走・100m走。全員が走り終わる順番を待つ間、体育座りで芝生のチクチクした葉先に手のひらを行ったり来たりさせていると、にょっきり顔を出すミミズ。冷静に小さく驚く自分。浜田山のグラウンドといえば雨上がりのミミズ。セットで必ず思い出します。

ぐるっと大きく駅の周りをまわって、やっぱりお昼はたんたん亭のラーメンに決めました。入り口に引っ掛けられたメニューに並ぶ、肉ワンタンメン、エビワンタンメン、ミックスワンタンメンの文字。つけそばも気になりながら、入り口に一番近い席に座っているお客さんがテンポよくすする、エビワンタンメンにだいぶ心が傾きます。

でもやっぱり肉ワンタンも捨て難く。エビと肉のワンタンが3つずつ入ったミックスワンタンメンを注文。しばし待ちます。厨房では二つの寸胴にたっぷり湯が沸かされていて、大きな網杓子の上でワンタンが行ったり来たりしている。右の寸胴に戻されたワンタンに続いて、麺が投入されました。湯の温度が下がらないように、寸胴の上にかぱっと蓋が乗る。湯切り用の平べったい網杓子の上では、茹で上がった麺がきれいに折り畳まれていく。

「お待ちどうさまです」

ミックスワンタンメンがやってきました。肉ワンタンはこしょうがきいていて、エビは粗めに刻んだ身がたっぷり。ワンタンはツルツルで、麺は細めのかたゆで。チャーシューは脂身多めのとろっとしたタイプではなく、肉の目がぎゅうっとつまったしっかりした味。麺にスープがよく絡んでとってもおいしい。

「はい、おまちどうさま。」「へい、お待ち」「お待たせしました」ラーメンが到着するときに添えられる言葉は、そのお店の味の表現に近いなとよく思うのですが。たんたん亭の「お待ちどうさまです」は、きれいでやさしいこのお店のラーメンの味にぴったりでした。

自分がライオンの家に滞在することになったら、リクエストする候補には確実にラーメンが入る。マドンナに「ラーメンはおやつ」とカウントしててもらえるか。ライオンの家ならどんな言葉が添えられて、ラーメンが出てくるかな。

最後は、駅前のサンブックスさんによって帰ります。売れてほしい本と新刊の棚。ドラマが始まる頃に『ライオンのおやつ』が並びますようにと願いながら、フェアをやっていた本の雑誌社の『ニッポンの本屋』と単行本を買いました。

どんな風に過ごすのか、考えさせられるゴールデンウィークではありますが、読みたかった本やおいしいおやつといい時間をお過ごしいただけますように。