コーヒーと読書と移動の速度。

天気の良い日曜日。ここ最近必ず鞄に入れている『取材・執筆・推敲』という本を持って外に出かけました。近所のパドラーズコーヒーが空いていたら、コーヒーを飲みながら読もう。混んでいたら、コーヒーを買ってどこか気持ちの良さそうな公園で読むか、他の喫茶店を探すか。お店に行ってみてから、また考えよう。

こんな陽気。パドラーズはやっぱり満席。コーヒーがおいしいことも大きな理由なのだけれど、お店の前にある大きな桜の木と、その下にあるたっぷり座面の広いベンチに座りたくてここに来る。

今日は潔く諦めて、新しい喫茶店を探してみようかな。おいしそうにコーヒーを飲む笑顔の人たちを眺めながら、幡ヶ谷駅にまず向かう。一旦、笹塚を目指して中央道が影を落とす甲州街道沿いを歩く。

大きな通りに出てみたものの。20号通り沿いには、読書にいい具合の喫茶店ってなかったよなぁ。中野通りで左折をして、いつもと違う道を歩いてみたら、それはそれで心地が良く。読書にぴったりでコーヒーが飲める場所を探すことから、知っているようで知らなかった道を歩くことに目的が変わり、15分後には環七を越え、代田橋駅にたどり着いていました。

このまま京王線に乗って、調布まで行って。最近できたばかりのYes mart(韓国食材をたくさん扱っているスーパー)を見に行ってしまうのもありだな。家を出た時とは、目的も行く場所もだいぶ変わってしまいましたが。気の赴くまま足の向くまま、電車に乗ることにしました。

代田橋から乗車できるのは、各駅停車の列車のみ。一駅一駅、ゆっくり進む。それがまたよかった。笹塚から乗車していたら、間違いなく調布までの到着が早い快速や特急に乗ってしまうから、目的の場所以外のお楽しみは少なくなる。大きなシートに2・3人ずつくらいの、お客さんが少ない風のぬける各駅停車。本を読みながらも、停車する駅が時折気になる。八幡山にはずっと行きたい「餃子館」がある。予約のできないお店だから開店少し前に並ぶのが良いらしい。仙川のパン屋さん「AOSAN」の食パンも食べてみたいんだよなぁ。

次は柴崎。ここは降りたことのない駅だ。そういえば、手紙社さんの運営しているカフェ「2nd STORY」がこの駅にあるはず。最初の目的、再来。ここでコーヒーを読みながら本が読めるかもしれない。時間もあるし、柴崎で途中下車してみようかな。

先週、東北沢駅の近くで満開だった黄色のモッコウバラ。柴崎の駅にも咲いていました。線路脇も、春の緑があふれていて気持ちがいい。

駅の北口に来て、2nd STORYを検索してみると、ちょうどオープンを少しすぎたくらいのよう。今度はコーヒーが飲めますように。

駅から2分ほど北西に歩くと、2階に2nd STORYの入っているビルが見えました。古いビルのワンフロアをどかんと気持ちよくリノベーションしたスペース。入り口付近では雑貨も販売している。オニギリと食卓塩のイラストのついたバッグがかわいい。

カフェは開店からすぐに満席になったようで。ウェイティングリストに名前と電話番号を書いて、一度外に出ました。

お店の前の通りを進んだら、すぐに大きな通りが見えてきました。
甲州街道、駅からこんなに近かったんだ。車で柴崎の駅付近を通り過ぎたことは何度もあったけれど、車の速度で移動していると全く気にも留めていなかったこと。

歩きと電車と車と。速度が変わると、目に入ってくる景色も変わる。

お店に戻って、雑貨のコーナーをゆっくり見てまわる。「請求書在中」のハンコのデザインがほのぼのかわいくて、購入。

手紙社さんがイラストレーターさんとつくっているオリジナルのペーパーも味わい深い。いろいろ欲しくなってしまうのだけれど、弊社の名前はand recipeと申します 。やっぱりキッチンの道具の柄が目に留まる。ブックカバーにしたら、本を持ち歩くのがより嬉しくなるかも。こちらも購入。

カフェの順番が回ってきました。近所でコーヒーと読書のつもりが、だいぶ遠くへ来たもんだ。ちょうど時間はお昼時。コーヒーだけじゃ、もったいない。エビとレモンのパスタランチ、お願いします。

「レモンを絞ってお召し上がりくださいね」

レモンとアンチョビのソースを吸った平打ちの麺。噛むたびにうまみが口の中に広がります。カリッとしたパン粉と大きめに切ってある春キャベツのザクザクした食感も美味しい。あっという間にお腹のなかにおさまりました。

少し読書と思ったけれど、人気のお店には新しいお客さんが一人また一人とやってきます。コーヒーを飲んだらすぐにお店を出よう。柴崎の駅からまた京王線に乗り、調布まで。お目当てだったYesmartは駅のすぐそば。きゅうり唐辛子ってなんだろう。あ、長めの青唐辛子のことか。粉唐辛子の甘口っていうのもある。唐辛子に甘口があるのは知らなかった。散歩にランチとお腹も心も満足してしまった状態だったせいか、買い物はせず。ぐるっと見るだけで終わりました。

調布駅に戻り、駅ビルの中のくまざわ書店を覗く。積読がたくさん家で待機をしていても、いつだって新しい本が欲しくなる。ヤマザキマリさんの旅の本も気になるなぁ。あ!『取材・執筆・推敲』の特設コーナーがありました。

ライターの古賀史健さんが、3年をかけて書かれた「書く人・つくる人の教科書」。手に入れた初日に7章まで一気に読み、その後1週間あけて残りの2章を読み切りました。読書の1周目では気になるところに付箋をつけて読み、2周目は本に書き込みをしながら読む。本当に美しく古賀さんの思いのこもった本。きれいに取っておくために、もう1冊本棚に同じ本が入ってはいるものの。なんだか汚したくなくて、書き込む時は少し思い切りが必要だった。面白かったのは、読書2周目の自分の変化。2回目は内容が頭に入っていることもあって、読む速度が上がる。1周目とは別の大事にしたいポイントが、どんどん目に入ってくる。

歩きと電車と車と。移動手段が違って、速度に変化があると、見える景色が変わるのと同じ感覚。早く読むだけではなくて、あえてゆっくり読むことで見える本の景色もまた面白そうだ。

帰りは調布から特急で笹塚まで。急いで家に戻り、『取材・執筆・推敲』にかわいいブックカバーをつけました。結局家でコーヒーを入れて。『取材・執筆・推敲』2周目の読書の続き。近所でコーヒーと読書のはずが、だいぶ長い旅になってしまったけれど。いい速度と、いい時間を過ごした日曜日でした。