親子日本語奮闘記 2

おはこんばんちわ。飯塚です。

今週は先週に引き続き、西の果てで孤独に日本語取得に励む親子の話です。

険しいバイリンガル道

ヨーロッパの方々と話すと、バイリンガルどころか、3カ国、4カ国語を操る人が普通にいます。

しかもそれが珍しいことではない。
なんとも羨ましい限りです。

アイルランドは日本同様、島国なのでたいていの人が話す言葉は英語のみ。

そのため息子達といると、アイリッシュの人達から

「子供は日本語が出来るの?」

「子供達には日本語を話すの?」

と聞かれる事が多く、私が息子に日本語で話している様子を見て

「生まれながら英語と日本語がわかるって良いわね〜」
みたいな事を言われたり。

一方で、ヨーロッパの他の国からの移民も多く、スーパーなどでは様々な言語を耳にします。

最近たまたま話したポーランド人の方は夫婦揃ってポーランド人で、家ではポーリッシュを話しているのに、学校に行き始めた子供達は英語で会話をするようになった。
親子の会話もポーリッシュでは返答してくれない。
どうすればポーリッシュを話してくれるんだろう、と嘆いていました。

そんな話を聞くにつけ、我が子達が日本語を話すのは容易いものではない、と改めて思い知らされる今日この頃。

海外に住む日本人の友人の話によると、子供をバイリンガルにするには親の努力、いかに親が諦めなかったのか、に尽きるとか。

とはいえ、人間なので性格もありますし、成長の過程で気持ちも変わるので一筋縄ではいかないのです。

別の友人の例ですが、子供との会話で日本語の返答を強要すると、

「じゃあ、面倒くさいからもうお母さんとは話さない!」

と、自室に去ってしまったと。

日本語教育の為に親子のコミュニケーションまで崩壊しては元も子もない、と思わされる話です。

特に思春期や反抗期など周りとの違いに悩む時期だと

“人と違う言語を話すことが恥ずかしい”

という気持ちも芽生えたりするらしく。

こういう気持ちや彼らの人生経験は親が経験してきていないことですし、無理強いすると余計に嫌悪感が増すでしょうし本当に難しい。

英語のTVばかりを観たがる我が子達

息子1号が2歳、3歳の頃はYouTubeなど一人で扱えなかったので番組選択権は私が握っており、日本語しか観せませんでした。

最近は息子1号も英語のTVの方を好んで見る為、兄弟揃って日本語のTVを観たくなくなってきています。

彼らには英語が第一言語なのでやはり日本語でのTV鑑賞は快適と感じないのでしょう。

息子1号はお気に入りのアメリカ人YouTuberがいて、そればかり観たがります。
弟も自動的に観る事になり、3歳児にとってはよくわからない日本語のアニメを観るのも割と苦痛。

子供にとって不便な生活は、実は日本語の上達には不可欠だったのです。

以前は率先して観ていた日本のアニメ、最近は英語のTVの後に無理強いしないと観ない上、観始めてもすぐに飽きTVを消すようになりました。

ああ、どうすればいいのか。

補修校に頼りたい!

日本人がそれなりに多い都会だと毎週土曜日に日本語学校に通えるシステム、補修校があります。

日本の学校の国語を土曜日に集中的に学ぶのだとか。

特に駐在の家族だと日本に帰国する前提で他国に滞在している為、読み書きを忘れてはならない。

アイルランドの首都、ダブリンには補修校がありますが、実際にお子さんを通わせていた方に補修校の話を聞くと、宿題は毎日やらないとついていけないし、学校運営には親もかなり関わらないといけないなど、生半可な気持ちでは通えないレベルだと言います。

特に駐在の家の目標レベルに在住の日本人ハーフの子供がついていくのはかなり厳しいので駐在組と在住組で補修校は分裂したりもするようです。

ただ、日本語を親子で勉強するのは確かに限界があるし、同じ境遇の友人も出来るので、子供にとっては良い刺激になりますよね。

うちの子も通わせたいなぁーと思うのですが。

我が家からはダブリンは遠すぎて通えない。
こういう時は都会暮らしを羨ましいと思います。

I’m a Japanese と常々言う息子1号

現状、我が家の6歳の息子1号は簡単な日本語会話はできます。

私の両親との月に数回のSkypeも日本語で会話をし、たまにこちらに住む私の日本人の友人と日本語で会話をするのも嬉しい様子。

アイデンティティの確立がバイリンガルには大切、というのは息子を見ても納得できます。

息子は日本が大好き、日本人である事が誇りなのです。

それは、日本に帰国した時にご飯が美味しかった、温泉宿に泊まった、新幹線に乗った、みたいなアイルランドでは出来ない事を経験した事。

2年前の帰国時の蔵王温泉。そり遊び大満喫。アイルランドでこんな遊びをする場所はない。
上野の科学博物館。恐竜好きな息子1号は大興奮!

また、友達の間でも大人気なポケモンやドラゴンボール、トトロが日本生まれだという事。
トヨタ、日産等の日本車がアイルランドで信頼度が高い事。
日本を旅した人は日本を褒めたり、日本に行った事がない人も日本に行きたがる事。
大好きなYouTuberが日本を旅して楽しんでいた事(この辺りは時代だなぁ)。

という単純な要素も彼にとっては、

自分の半分は日本人。

というアイデンティティを確立するのに一役買っているように見えます。

私も一人旅時代に、日本人で良かった、と思う事がいかに多かったか。

食べ物、車、SONY等の企業、映画、本(村上春樹)、アニメ、ゲーム、TV番組、新幹線、資生堂などの化粧品、盆栽や錦鯉、また禅や仏教の精神。キティちゃん。TOKYOでショッピング。

イタリアのローマの本屋?ラインナップの充実ぶりには驚き。

旅で出会った世界中の人達から日本の色んな事で声を掛けてもらえました。
その時にこれほどあらゆる分野が世界で有名な国、実は他にはあまりないのだ、と気付いたのです。

老若男女、どこかにささる物を世界で提供する国Japan。
そのおかげで日本はしっかりと世界で認知されています。

実は一般的なアメリカ人やヨーロッパの人達は韓国の存在を知らない、とか台湾の中にシンガポールがある、というとんでもない認識をしていたりします。

話が逸れましたが、アイリッシュにとって日本が正しく認知され前向きに捉えられている事は息子の日本人としての誇りを後押しし、日本語を維持するモチベーションになっている。

対してJapanとはなんぞや?な息子2号

コロナ憎し。
コロナのせいで昨年は日本に帰国できなかったどころか、未だにいつになれば日本に帰れるのかわからない。

息子2号(3歳)が日本に帰国したのはまだ生後7か月の時。
彼にはその記憶はないし、Japan ちゅうのは、何やら母ちゃんの話す言葉の事らしい、みたいな認識のようです。

私自身、赤児は本能的に自分に必要な事を選択している、という事を彼を通して学びました。

生まれた頃から私とずっと一緒にいて、日本語で話しかけているにも関わらず、日本語への興味はない。

母親の言葉の意味はわかっても、その言葉を発してみようとは思わない。

日本語を話してもこの環境では役に立たない事を彼は身体で感じとっているのです。

日本に滞在する経験をすれば、意識は変わってくれるかなぁと期待していますがそれはいつになる事やら。

日本語を話す海外在住ハーフの人は一年に一度くらいの頻度で帰国しているんですよね。

これも先に言った、親の努力、の一つ。
飛行機移動や日本滞在にはかなりの出費が嵩みます。
経済的な負担という意味も含めての努力、または投資とも言うのか。

子供にとってはこの経験を積む事は大きい。

子供達の日本語スキルはその時々で変わります。
私はその時々で人から聞いた話、読んだ話を試してみる暗中模索な日々。

この話題、来月に続きます。
(来週は違う話題にします)

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。