命懸けの趣味。

おはこんばんちわ。飯塚です。

アイルランドのお隣りのイギリスにおいて、一番死亡率が高いとされる危険な趣味は何だと思いますか。

きのこ採り。

日本でもニュースで誤って山で採った毒キノコを食べて亡くなる、という話は聞きますが。

ところ変わっても、きのこは危険。

という認識は同じ。

3年前に夫が採ったキノコたち。食べました。無事でした。

ヨーロッパ大陸の田舎の人達にはキノコ採りは一般的でキノコ博士が判別方を伝授しながらキノコ採りをするのはよくある事らしいです。

数年前に夫もアイルランドに長く住むフランス人の友人にキノコ採りに連れて行ってもらったことがありました。

イギリスやアイルランドではキノコ採りがあまり浸透していないこともあり、自殺行為、的な捉え方をされていますね。
確かに間違いが洒落になりませんから。

スーパーではキノコの種類がわずかなアイルランド。

しかしながらそんなリスキーな趣味に最近私も片足を突っこんでいます。

雨が多いアイルランド。
雨天が続くと多様なきのこをあちこちで見かけます。

雨が降ると庭にニョキニョキ生える小さなキノコ。さすがにこれは食べません。
家の前の芝生エリアに生えるしいたけみたいなキノコ。美味しそうですが試食したことはありません。

食いしん坊な私でもさすがにそれらをランダムに採ることはしません。

狙うのはただ一種類。

キクラゲ。

あのコリコリの食感、大好きで。

通常キクラゲはアイルランドでは売られておりません。
しいたけ、舞茸、しめじ、えのき、エリンギ、なめこも手に入りません。

アイルランドのスーパーでは丸っこいマッシュルームが数種類あるくらい。
市内のアジアスーパーだと何かしらある事はありますが我が家から遠いし値段も割高。
きのこ好きな私には厳しい環境。

その貴重なキクラゲが我が家から車で5分の森に生えている、という事実を知った時の私の喜び、想像つきますか。

今やおばあちゃんの知恵並みに貴重なインスタ情報

インスタ村ではアイルランド在住日本人が情報交換しています。

今、このスーパーでオーガニックの豆腐が売り出し中。

とか、

たこ焼きに入れる天かす代わりにえびせんがいいよ。

とか、最近だと

日本からアイルランド行きの宅急便が再開されたよ。(コロナの影響で約一年、郵便局からの郵便物がストップされていました)

などなど。

ある時、植物に詳しいダブリン在住日本人の方が、インスタに自分で採ったキクラゲを載せていました。

あれ、この写真、数年前に道端で見かけたのとそっくりだな。
と、記憶が蘇りました。

確かにその時に
「これキクラゲにそっくりだなぁ。でもまさかあるわけないしね。」
と自己完結していたのです。

インスタのキクラゲを見て数ヶ月後、息子を連れて近所の森へ散歩に出かけました。

息子は長靴で水溜まりにバシャバシャ。

その傍らに目を留めると、朽ち果てた木に生える焦げ茶のビラビラキノコ。

ダブリンの彼女がインスタに上げてたキクラゲとそっくり。同じかな?
とりあえずいくつか採って持ち帰り、我が家にある本で調べてみる事に。

また、ダブリンの彼女に聞いてみると、彼女も私の送信した写真を彼女のキノコの師匠に転送して確認してくれました。

数分後、

「大丈夫。キクラゲだよ。」

のメッセージが。

やったー!
持つべきものは食に貪欲な日本人の友達。

面識はない彼女、インスタ越しにはたまにメッセージを送り合っています。
いつか会ってみたいなぁ、などと思ったりします。

後日、一人でキクラゲ採りに出向いてたくさん採りました。

ちなみに、インスタではイギリス人もキクラゲを採ったりしているのを見かけます。
キノコ採りは危険な趣味とはいえ、キクラゲは似ている毒性の種がない事も手伝って啓蒙活動をしても大丈夫なのでしょう。

だいたい、キクラゲの名前がjelly ear とユダヤ人の耳という意味の名前の為に誰も食べない、という説はあまりにナンセンスではないのか。
本当、この人達って人生損してるよね。

ま、キクラゲ如きでそんな偉そうな事言われたくないでしょうけど。

まさかの三度登場、エルダー様。

ちなみに、イギリスやアイルランドのキクラゲは枯れかけたエルダーの木に生えるそう。
エルダーといえば、5月から6月にジュースを毎年作るエルダーフラワー。

エルダーフラワー。香りがいいです。

秋にはたわわに実るエルダーベリー。

ベリーベリー楽しい秋。

エルダーベリー。美味しそうだけど生で食べてはいけません。


以前ここでも紹介させてもらいました。

凄いな、エルダー。

花と実だけで終わらず、朽ちた木すら恵みを与えてくれるなんて。
私にとってはエルダーは神の木。
これからはエルダー様と呼ぶ事にします。

しかもエルダー様の木は近所であちこちに生えているから探せばキクラゲ一生食べ放題が約束されたようなもの。

地元の人はキクラゲ採取などしないので、現状私にとっては独占採り放題。

ヒャッホー。

念願のキクラゲクッキング。

そういえば、日本でも生のキクラゲなんて調理したことはないかもしれない。

乾燥キクラゲが主流ですよね。

とりあえず、よく洗ってあとは材料と炒めるだけ。

卵とじの炒め物、大好きな中華丼。
たまに猛烈に禁断症状が現れる酸辣湯麺。

アイリッシュの夫も

「これ、食感がいいねー。」

と気に入った様子。

彼は日頃から

「俺は日本人が好きな独特の食感が結構苦手」

などと言っているのですがキクラゲに関しては例外なようです。
(アイリッシュの苦手な食べ物、食感の話はまた別で書いてみようと思っています)

キクラゲの卵とじ。もちろん卵は庭の鶏さんが産んだ新鮮卵。
見た目は赤くないけど辛くて酸っぱい酸辣湯麺。

キクラゲを巡るしょっぱい思い出。

中華丼といえば、大学時代に学内の餃子の王将にて、山口フォト君と友人と揃って中華丼を注文したんです。

すると、こともあろうに私の丼にはキクラゲの姿はなく、山口君の丼にはキクラゲがわっさり入っている。

大人気ない私は

「いいなぁー。そっちはキクラゲいっぱい入ってる!私のには全然ないよ!」

ブースカとイチャモンをつけ、山口君にキクラゲをたかりました。

食い気第一な私の、懐かしくも恥ずかしいかれこれ20年以上前の思い出です。
山口君、あの時はありがとう。

お礼に、アイルランドにお越しの際はオーガニック生キクラゲ尽くしのディナーでおもてなししますからね。

キクラゲたっぷり中華丼もどき。こちらのスーパーではうずらの卵は見かけたことがないので省略。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。