責めるとすれば“運”。

おはこんばんちわ。飯塚です。

久々にドラマにハマりました。

1月からBBCで放映されてた「The Serpent 」というドラマを最近見始め、あまりに引き込まれて一気見してしまいました。

1970年代にタイのバンコクを始め香港、ネパール、インドで外国人観光客だけを狙った金品強奪の殺人事件の実話を元にした話です。

ヘビ、陰険な人、という意味のSerpent 。

その名の通りにサイコな殺人犯が獲物を狙うような眼差しで旅行者を人選し、言葉巧みに誘い、彼らのお金とパスポート狙いで飲み物にクスリを入れたり、時にはドライブに連れて行く。

ただそこにあるお酒を飲んだだけで、または彼の車に乗っただけで帰らぬ人となった罪のない旅人達。

その誘いをたまたま断った人はその不幸に見舞われないというだけの、あまりに細くしかし深すぎる境界線。

全8回のエピソードとにかく緊張感が途切れなくて、手に汗握りながら見入ってしまいました。

旅で結婚式に招待されても行くべからず。

と同時に、バックパッカーだった自分自身に同じ事が起きても不思議ではなかったことを思い、”運”について改めて考えさせられました。

海外で事件に巻き込まれたりすると日本でよく聞かれる、自己責任論。
状況は様々な事はもちろん承知していますが、私は国民やマスコミがこぞって自己責任と騒ぎ立てる事にある意味の怖さを感じています。

もちろん紛争地や貧困地は強奪、レイプや殺人の確率は高いし行かないに越したことはない。

しかし、危険な目に遭うか遭わないか、それはほとんど運だけなのではないかと。

インドのハンピ村の山の上の猿。

インドを旅していた時に出会ったベテラン旅行者からの忠告に私は震えました。

「インドで女性の一人旅大丈夫?かなりキツいよね〜。そうだ、地元男性に結婚式に誘われても絶対行っちゃダメだよ。」

詳細はこういうことらしい。

女性観光客が地元男性とたまたま仲良くなると、彼は

「明日、僕の親戚の結婚式があるんだよ。外国人が参加してくれたら家族も喜ぶからぜひ来ない?飛び込み参加も大丈夫だから招待するよ。」

と、観光客が惹かれる要素で誘うのだそう。

異文化の結婚式、興味がないわけがない。

女性は、なんて自分は運が良いんだ!と心躍らせて、その「結婚式」に行きます。おそらく旅の中でも、一番好きな服を着た事でしょう。

まさか行ってみたら、若い地元の男性達が彼女を待ち構え、酒を無理やり飲まされた上で強姦されるだなんて夢にも思わない。

地元男性は警戒するであろう女性観光客を、「結婚式」という言葉で釣り、集団強姦を企てたのです。

これは事実かどうかはわかりません。

ただ、個人的には例えこの話がガセだとしても流布されて然るべきではないかと思っています。
それくらい、他国に比べてインドでは女性旅行者が危険な目に遭う確率は高い。私自身、それまでも地元男性には辟易していて警戒心はそこそこありましたが、この話を聞いて更に自己防衛感が増したのはいうまでもありません。

旅は玉手箱。何が出てくるかわからない。

とはいえ、どこかで本当に異文化の本物の結婚式に飛び込み参加できるラッキーな旅人もいるのも旅の真実。

子供の頃から、知らない人についていってはいけません、とは教育され普段の生活でいきなり他人とドライブとか家には行かないはずなのに。

それが旅という現実世界と異なる中で警戒心が解れて、もっと素敵な何かに出会えるような期待までしてしまう。

私もトルコでは地元の家族に招待されて泊まった事もあり、それは世界の旅の中でもただ観光地を巡るのとはまた違う得難い思い出になった事は確か。

トルコでちょっとわからないことがあり、道ゆく人に尋ねたら、家に泊りにおいでよ、と言われて本当にそのまま泊まった。4歳のバルカン君はすぐ懐いてくれました。
トルコの景勝地といえばカッパドキア。大好きなトルコ、家族でまた行きたい。

警戒心を持って誘いの全てを断るのか、かたや好奇心が勝ち知らない世界のバーをジャンプするのか、結果が吉と出るか凶とでるかは運しかない。

これまで旅の中で一緒にホテルに泊まろう、とか俺の部屋に来ないか、という男性はいましたが、飲み物にクスリを入れられた事はありません。

行動を共にした旅仲間から金品強奪された事もない。

一人で夜間に乗ったタクシーもちゃんと目的地まで届けてくれた。

それは私がただ単に運が良かっただけの話。

旅で強姦や強奪に遭った人に周りがかける言葉は「自己責任」ではないと思う。彼らはもう充分すぎるほど傷付き、自責の念にかられているのです。
ただ、運が悪かったのだ。悪い出会いだったのだ。
命があるだけで良かった。

それしかかける言葉はない。

ちなみにこの「The Serpent 」はNetflixでも今後放映されるようなのでそのうちに日本でも観られると思います。
(日本だと邦題つくことが予想されますが。)
誰かと語り尽くしたいくらいよくできたドラマだったのですが、なにぶん友達がいないので、今はレビューサイトを読みながら納得したり、新たな発見があったり。

舞台は70年代の香港、バンコク、インド、カトマンドゥ、カラチ、そしてパリ。

どこにも行けないこのご時世、ドラマを見ながら海外を旅できる気分にもなれました。

カトマンズのカフェ。

西果て便り

(毎週木曜日更新)
世界放浪の後にヨーロッパの西端アイルランドに辿り着く。海辺の村アイリッシュの夫、と3人の子供達(息子二人、娘一人)と暮らしています。