おいしいの教科書。
新しいことを学ぶ時、新しいことをやってみる時。いい教科書があったらまずはその通りにやってみることが、できるようになるまでの一番簡単で確実な手立て。まずは、基本を繰り返す。何度も繰り返すと、そのうちに「なぜこうなるんだろう」と疑問が生まれてくる。その答えにたどり着くと、次は自由にアレンジすることができる。
わかっているはずなのに。基本が自分の体に染み込む前に、つい自己流アレンジを加えてしまう。寄り道をしたくなってしまう。今まで何度も失敗をしていることなのに。この教科書は、ちょっと自分にあっていないんじゃないか。少し違う角度から学べる参考書を試してみる?新しい言語を学ぶ時、どんどん教科書が本棚に増えていくのはそのためだ。全ての教科書を学びきれるのなら、もちろん素晴らしい。のだけれど、大抵は買って満足してしまう。一部やってみて、終わり。やりきらないうちに新しい教科書に手を出してしまう。またやってしまった。途中で気がついて、また基本の教科書に戻る。結果、一番身についたのは、語学学校に通っていた時の教科書を、繰り返し、繰り返しやり直すことだった。どの教科書も5回ずつ。きっと、今やり直しても新しい発見がある。
料理も同じ。気になる本が次々と出てきて、本棚にはレシピ本が増えていく。遠回りをして、また基本に戻る。
2020年3月28日noteで、B.L.TならぬB.L.P『ベーコンレタスパスタ』のレシピから更新を始めた「冷蔵庫にあるもんで」が本になって、今週2月10日発売になりました。
noteで更新してきたレシピと書籍のみ収録のものを合わせて、91のレシピが掲載されています。本をお買い求めくださった皆様、ありがとうございます。noteを見て、作ったよ、おいしかったのメッセージも、いつもありがとうございます。
「まずはレシピ通りに作ってみてください」
我が家の本棚に並ぶ、たくさんのレシピ本に書かれている一言です。言葉の通りなんですけれど。この一言、ずっと気になっているんです。最近購入したウー・ウェンさん著の『料理の意味とその手立て』にも、こんな風に書かれていました。「それぞれの項目に、参考となるレシピを紹介しました。ひょっとしたら、味が薄いと感じるかもしれません。でも、まずはレシピ通りの味を、確かめてほしいのです。素材の水分量などコンディションもひとつひとつ違いますし、また季節によっても変わりますから、レシピは絶対ではありません。ただ、レシピはおいしいものを作るためのひとつの確実なルートですから、初回のみはレシピ通りに。調理のポイントや効果的な味の付け方が身についたら、それを活用して自分のレシピを生み出してください。ポイントさえわかればアレンジもできます。自分でいろいろ試してみるのも料理の醍醐味だと思います。」(タブレ刊『料理の意味とその手立て』より)
アレンジ大歓迎、楽しんでいただくこと大歓迎の「冷蔵庫にあるもんで」も、初回はぜひレシピ通りに作ってみていただくことをオススメします。
豚肉を3cm幅にカットする意味。調味料を入れるタイミングの重要性。私もこの会社で、料理主任の山田に料理を習うまでは、深くしっかりと考えたことのないトピックばかりでした。我流の主婦料理。レシピ本はたくさん本棚に並んでいるけれど、語学と同じ。1冊のレシピ本を作りきる、使い切るということはなく。気に入ったレシピを1冊のうち2、3個繰り返して作るのみ。小さい頃から料理は好きでよく作る方ではあったけれど、ひとつひとつの作業がどんなおいしさを引き出して、次につながるのか。そこまで、しっかり考えてはいなかった。基本を知っているからこそ、自分の味、言葉にできる。
肉に下味をつける時は、手をよく拭いて乾いた状態で塩を振ること。(ひとつまみの塩の分量が、手が濡れている状態ではかわってしまうから)「フライパンでごま油をあたため」と書かれていたら、中火で熱したフライパンの上の油の流れをよく見ること。人参を千切りにする時には繊維の向きを考える事。野菜の繊維は、生えている向きに伸びている。斜めに人参を切ってから千切りにすると繊維を断つことになり、柔らかな口あたりになるからサラダや和え物に向いている。縦切りにすると繊維が残るので、炒め物や揚げ物にする時に向いている。歯応えが残って、噛んだ時にしっかり人参の香りがする。パスタをゆでるときの塩分の目安。沸騰したお湯に塩を1%。塩が溶けた状態で飲んでみてスープの塩味を感じたら、パスタにしっかり塩分が入るベストな状態。パスタに塩味がしっかり入っているのと入っていないのとでは、具やオイルを合わせたあと、最終的に口腔内で調味される時の味が全くかわってくる。and recipeをはじめてから、学んだ小さな積み重ねの一部。なぜこの方向で切らないといけないのか、なぜフライパンの温度が上ってから素材を入れないといけないのか。「なぜ」の意味がわかると、より料理が面白くなってくる。
そんなこんなが計算し尽くされたレシピが、どのレシピ本にもつまっているんですよね。分量も、調理の順番も。一番の基本となるもの。レシピには、先人の知恵がたくさんつまっている。練りこまれたレシピは、おいしいものを作る確実で最短なルート。まずはそのルートを試してみる。基本の足場が固まったら、あとは足したり、引いたり。その時の体調や季節に合わせてアレンジしていくと、オンリーワンなレシピに近づいていく。たくさんのおいしいの教科書に書かれている、「まずはレシピ通りに作ってみてください」という一言。素直に聞いて作ってみることは、料理上手への一番の近道かもしれません。
「冷蔵庫にあるもんで」書籍でも、noteでも。作ってみていただいて、何か疑問が出てきたら、Twitterでも、メールでも。メッセージをお送りください。どんどんお答えしていきます。より料理が楽しくなって、皆様の食卓のおいしいのバリエーションが増えていく。そんなお手伝いができたら。我らand recipe、こんなに嬉しいことはございません。
それでは皆様、今週もおつかれさまでした。おいしく楽しい週末をお過ごしくださいませ。