2021年。
お正月の朝って不思議ですよね。
昨日からたった1日、日が変わっただけなのに、光も空気も新しくなったように感じる。
今年ほどその新しさが待ち遠しい年も、今まで無かったように思います。
2020年の12月31日は子どもが見たい紅白と、大人が見たい「絶対に笑ってはいけない大貧民 Go to ラスベガス24時」を行ったり来たりして過ごしました。そして、テレビにもチラチラ目をやりながら、手元のiphoneのDLボタンを何度も押す。毎週水・木の23時前後に配信される韓国ドラマ「Run On(邦題:それでも僕らは走り続ける)」の6話を見ながら年が明けました。(自分が子供の頃は家族が一台のテレビで紅白、行く年来る年に集中していた年跨ぎだったのに、一家に何個も画面が存在して、それぞれが好きなものを見ている状態。子どもの頃は想像もしていなかった。)
イム・シワン演じる短距離陸上選手キ・ソンギョム。自分のすぐ前にいる選手に勝つということをひとつひとつ重ねて、国家代表2位になるまで、前だけを見て走ってきた人物。父は国会議員、母はトップ女優、姉は世界ランク1位のゴルファー。そんな家庭の中で、自分の存在を押し殺して生きてきた。両親がなく育ち、孤独な人生を歩んできたヒロイン、シン・セギョン演じるオ・ミジュ。中学生の時に初めて見た映画の「私たちが転ぶのは、立ち上がり方を学ぶためだ」というセリフに慰められて、言葉と言葉を橋渡しをする字幕をつける仕事に興味をもつ。努力に努力を重ねて映画翻訳家になった人物。翻訳は、何度も映画を巻き戻し、後ろを振り返っては言葉を修正して前に進む仕事。
そんな、異なる世界で生きてきた二人が、どんな言葉を通じて心を通わせていくのか。今回、連続ドラマ単独で初のデビューとなる脚本家パク・シヒョンの書くセリフに、胸をつかまされっぱなしの、今推しに推したいドラマです。(パク・シヒョンは、韓国きってのヒットメーカーキム・ウンスクのサブ作家として「太陽の末裔」や「ミスター・サンシャイン」で脚本を担当しています)
このドラマを見ていると「위로(ウィロ)」という言葉の意味を考えさせられます。
辞書をひくと「慰め、慰労、労い、癒し」という意味が出てくるのですが、日本語の癒しや慰めという言葉よりももっとやわらかくあたたかい印象を受けます。傷を手当てする時の手の温もりや、干したてのふかふかの布団のようなあたたかさ。相手のことばから自分の中になかった新しい視点を贈られて傷が癒されていくような、自分を取り戻すために、もう一度歩き出すきっかけを与えてもらうような、そんな「위로」を受ける場面がたくさん登場します。世界が同じように不安を抱えたこの時期だからこそ生まれているであろう、たくさんのセリフ。登場人物たちと自らを重ねて慰められ、心を手当てしてもらっているように感じます。
2020年は、世界中どの場所も、みんなが同じようにくたくたになった1年でした。2021年は、人が人を労ってあたためて、それぞれに走り出すことのできる明るいニュースの多い1年になりますように。
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします!