街の灯り。

真っ暗な街の中に、オレンジ色の光が灯っています。
2011年の3月11日。光が灯らなくなった場所に、少しずつあかりが戻って、
また街が息をし始めているように見えます。

感傷的な文章を書きたかったわけではないんです。
陸前高田に新しくオープンする発酵テーマパークCAMOCYの準備中。明日内覧会でたくさんのお客様がいらっしゃるのに、ないものを発見。トイレで手を拭いた後のペーパー用のゴミ箱がない、トイレ掃除の道具も用意してなかった。足りないもの(備品の発注からすっかり抜け落ちていたものは、トイレ周りのものばかり)を買いに、車で7分ほどの100円ショップに買い出しに行った帰り。can doのあるアバッセ高田からCAMOCYを眺めていて、暗かったはずの場所にポツンと灯りが見えている。そのことに、妙にホッとしたのです。

20歳の頃、初めて行った海外がニューヨークでした。
とても仲の良かった大学の友達のおじちゃんがアーティストで。ニューヨーク、ブルックリンにあるアトリエで段ボールアートを作ったり、ボクシンググローブに絵具をつけ、壁一面に貼られた白い紙にパンチで絵を描いていくパフォーマンスをしているかっこいいおじちゃん。奥様もアーティスト。(お二人の話は映画にもなっています。)そんなご夫婦のお家兼アトリエに遊びにいかせてもらうという旅。初めての海外。友人と二人。英語もままならない。ハンバーガーひとつ注文するのも、リュックをギュッと前に抱えながら地下鉄に乗るのも、いちいち緊張する。

おじちゃんの息子さん、アレキサンダー空海(おじちゃんが思いつく偉そうな名前を全部つけたと言っていました。私たちはアレクと呼んでいます)とラテン系のアレクの彼女と一緒に行ったバーベキューチキンのお店。慣れないお酒をたくさん飲んで、案の定ベロベロに。公園のベンチで全員が全員、ほけーっと伸びていたら、ここは映画の中ですか?と思うような出で立ちで、ビシッとした制服を着たリアルのポリスメンに「さぁ、もうパーティーは終わりだ」と声をかけられました。怖くなって全員が一斉に漫画のようにピッと立ち上がり、泊まっていたYMCAまで全速力で走って、さらに酔いが回って生垣に突っ込む。初めての海外旅行の旅の断片。ニューヨークというと、あの時の気持ち悪さと、走っている自分たちを客観的に上から見ている自分の図が、今でも鮮明に蘇ってきます。

もうひとつ。定期的に思い出すのは、ニューヨークの灯り。おじちゃんとおじちゃんの奥さんと一緒に、ブルックリンブリッジのたもとにあるアイスクリーム屋さんに行った帰り。友達と二人で対岸のマンハッタンを眺めていた時の灯りのオレンジ色。その時の光を私たちは「ひよこ電球」と呼んで、その光のあまりの美しさに、なぜか二人とも涙していました。あぁ、青春。20歳の我ら、単純。

白熱灯の白い光ではなく、黄色とオレンジの間くらいの、さわったらちょうどいいあったかさなんじゃないかと思わせる色。アツって思わず手を引っ込める熱さではなく、電球から少しだけ距離をとってすくうように球体を手で包み込み、両手でそのあったかさをずっと感じていたいようなやわらかい光。「死ぬ前に、またここでひよこ電球を見たいね。」そんなことを話していた川沿いの夜の散歩道。トイレ掃除グッズを助手席に乗せて、暗がりに浮かぶCAMOCYの灯りを車中から眺めていたら、ニューヨークのひよこ電球のオレンジ色とCAMOCYのやさしい灯りが重なって見えました。灯りって、静かに人を安心させるものなんだよなぁ。

CAMOCYは岩手県陸前高田に12月17日にオープンする発酵をテーマにした施設です。陸前高田で江戸時代から味噌と醤油の醸造を行っている八木澤商店の河野さんからお話をいただき、and recipeもこの施設の仲間に入れていただきました。

ロゴのデザイン・施設の中のサインは、SAKRA.JPのリーダーぐっさんが担当してくれています。紙の上にあったデザインが、実際に建物のあちこちに散りばめられていて、建物ができるって、そこに灯りが灯るってこんなに嬉しいことなんだなぁと思いながら、カメラのシャッターを押しました。

発酵おひつ膳のお店「発酵食堂やぎさわ」、発酵調理のお惣菜「ジャンティ」、チョコレート「CACAO BROMA」全てぐっさんデザインのロゴ。

東北、陸前高田の近くに来られることがあったら、ぜひおいでください。
and recipe も2坪の小さなスペースでお待ちしています。2月ごろまでは「and recipeの図書室」と題して、自分たちが好きな本を並べた本棚とテーブルとイスを用意してあります。CAMOCYの施設の中には、発酵を使ったお惣菜や定食、パン、クラフトビール、チョコレートのお店があります。おいしいものを食べていただきながら、気になる本を手に取って、ゆっくりした時間を過ごしていただけると幸いです。

and recipeの2坪(「につぼ」と読みます)

あっという間に12月も半ばですね。皆様、どうぞあたたかくお過ごしください。

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